【Z・特別講義19】
[ 小信号の解説 ]
第十九回寄稿
新年早々インフルエンザに罹患し寝込んでおりました。
加えて公的なボランティア活動に謀殺され、此方の執筆活動がここ約2か月近く停止状態にあり、ご迷惑をおかけしております。 今年も頑張って執筆を再開しようと、PCに向かっております。
2月の声を聞くと、夕方暗くなる時間が徐々に遅くなっており、時の移ろいを感じさせられます。
H27年の1回目からは、お約束の通り小信号分野の薀蓄を記述させて頂きます。
その前に、慣例に従って皆様からのご質問内容の紹介と、解説からスタートさせましょう。
耳を傾けるべき大切な情報が満載です。
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まず私は、半導体技術の一端を担う材料開発の技術者として働いていました。
機械屋は10年の進歩を開発できる、しかし材料屋は一世紀進歩させ時代を変える。
しかし、その研究は、大変な時間と努力と奇跡を伴う。
その夢を持ちつつ研究しておりました。ICにおける最大の発明は、超高純度のシリコンウエハーでした。以降そのまま材料は変わっておりません如何に細線化するかより小型でより大容量を処理するか、チップは積層され、コア数も増えた。 これはもう飽和なのです。
私は、既に退職し、どうにもなりませんが、ここぞ材料屋の出番なのです。 青色LEDのごとく、新材料をしばし待つしかならんのですが、これがマーケットに本当に必要かどうかは疑問を抱いてしまいます。
それはさておき、大事なのは技術大国の衰退です。確かに、日本は資源もなく技術にて成長した中継ぎ貿易の小さな国。企業が技術屋を捨て海外はそれに飛びついた。 そして根幹を支えている。 町工場の技術屋をとことんつぶしまくった。 日本は生きていけない。 リタイア様はそのようにお考えでしょう。
しかし問題は企業だけでなく技術屋にもあるのです。 団塊の世代より前の技術屋はその腕を師匠から学びそして次の団塊の世代に受け継がせた。 しかし団塊の世代は、学んだ技術を弟子に教えなかった。 そしてその世代は、今年現役を去る。腕の無い弟子は何もできないのです。
しかしそれに気づいた弟子もいた。 己で学び先駆者の力を借り、わずかだが可能性はあります。
そして企業もそれに気づいてはいた。しかし数が少なすぎる。
あと5-10年待ちましょう。 きっと、日本は、復活する。 中国も韓国も目先にとらわれ、日本の技術屋を絞って、捨てた。 その価値を知らぬまま。
そして材料屋にも機械屋にも希望はある。 某日本企業が、レアアースを使わず、焼結などの研究の末最強の磁石を作り出せた。
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貴重なご意見を頂戴し感謝申し上げます。
ご意見の中に、団塊の世代は後輩を育てなかった・・とあります。
これには深刻な問題が内在しております。 即ち、育てたくても受ける側のスキルが、余りにも低くて
伝承したくても出来ない現実に、爺の職場を含めて、何度もさような事態に遭遇しました。
爺は団塊の世代の1年上の年寄りですが、この現象はあらゆるジャンルの現場で発生していると聞き及びます。
根本的には、日本の教育システムが崩壊しており、行き過ぎたユトリ教育にその因を見ます。
大学卒業しても、それに相応しい専門分野の基礎スキルが身に付いておらず・・この現実を我が目で何度も繰り返し見ました。 世間ではこの揺り戻し現象として教育システムの大幅見直しが始まっております。
その意味で、回復に後10年は必要だと観じます。
中国・韓国に最新技術が流れましたが、先行投資の意味を、身を持って分かっておらず、お説の通り与えた技術には、全て深い失敗と成功が詰まっており、貴重なノウハウの積み上げの上に技術は存在します。
基幹部品を自力で作るには、最低でも十年単位の歳月をかけないと、彼らは今の日本に追いつく事は出来ないと考えております。
故にコピーは出来ても、決してその応用は出来ない・・中国の新幹線事故にその例を見ます。
(約250名死亡) しかも基幹部品は全て輸入に頼っております。 例えば新幹線用のモーター設計技術があります。 今の高効率モーター設計技術は一見ローテクに見えますが、長年に渡る細かいノウハウの積み上げの上に成立しております。 設計図をネット経由で泥棒しても、細かいノウハウまでパクる事は不可能です。 ここに先行投資の真髄があると思います。(ネット泥棒の遮断が重要ですが・・)
先行投資ゼロでコピーしても、次のステップには進めず、彼らも我々と同じ苦しみを味わう事無くして、
上の次元には到達できない筈です。 元来技術進歩とは、そのような背景の上に成立していると考えております。 お説の記述には、このような事を言下に申したかったのでは・・と拝察させて頂きました。
中国の新幹線は独力開発した!と喧伝し、安値で他国に売り込んでおります。
しかも特許を持っているのは中国だと・・。さようなビジネスに敏い中国人相手に世界で戦わないといけない・・これが現実世界です。 トルコで中国製高速鉄道が採用され、開業初日に大統領が乗った一番列列車がトラブルで動かない・・この報道に接し技術力とは何か?の本質を見る思いです。
何処かの宣伝文句ではありませんが、当たり前の事が、日々当たり前のように動く・動かせる事が出来る。
これが技術力だと観じます。
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小生も57歳でメーカーを早期退社した、Audioが生きがいの一人です。
小生が最近感じるのはDigitalAmpの音が良いと結うことです。
遊びでLepai2020+を購入ALTEC604eに接続、聴いてみてビックリ、歪の無い、かつ分解能
の高いサウンドです。 即分解使用ICの確認を行い、電源の強化を試み音質改善、今だ現役です。
それまでは武末数馬氏に影響をうけ各種真空管Ampを作成していました。 直近は上條氏の超3結、野呂氏D-NFB Ampなどを作成使用しておりました。 両氏とも斬新な真空管回路で真空管の音では無い、高級TrAmpの音に近いです。 ”目隠しTEST ”すればまず判断できないと小生も考えます。
SPunitで発見があります。
RibonTWとDigitalAmpの組み合わせが抜群の音質改善をする事です、CrossOver18kHz以上でのSuperTW的利用です。 SP単体でも20k以上の周波数特性を持つものであれば同様にDigitalの性能を引き出せます。
音源はⅰ-Tune、SE-200を使用、部屋は地下室18畳です。Audio業界にも新しい風がきた様に感じるこのごろです。
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AMP設計の先哲である御三方の仕事振りには、爺も関心を寄せております。
D級AMPとリボン型Tweeterの組み合わせは、爺も未体験ゾーンです。
このようなゾーンの開拓は、アマチュアでないと取り組めないエリアだと感じました。
昨今ハイレゾのブルーレイで、Audioに特化した画像なしのソース源の発売が企画され、商品化されていると聞きました。 是非このブルーレイを使った、Audioに特化したソースの音質を聴いてみたいと感じます。 既に試された方がいらっしゃいましたら、是非情報をお寄せ下さい。
のハイレゾを再生するには、少なくても50kHz帯を再生せねば、正しい評価が出来ません。
ここはスーパーツイーターの出番となりましょう。LPレコードに負けない針音がしない世界で純粋に音楽を楽しみたい・・が爺の願いです。
その前に寄る年波には勝てず、ハイ落ちが気になります。(自然の摂理・・順調に劣化が進行・笑)
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Newsで東芝社員が情報漏洩で検挙と流れていました、メディアは企業側の立場を強調して報道しています。 技術者が犯罪にはしる理由については何もふれていません。 技術者を大事にしていればおきなかったなど一言もありません。 確かに十羽一絡げで全ての技術者が大事とゆうのは無理かと考えます。しかしながら経営者もどきが自己保全のため技術者をリストラしたのは事実です、小職がいた企業も世界的に名の通ったメーカーですが技術者に対する退職勧奨、リストラが何回となく実施されました。
情報漏洩をくちにするくせ、売上げのためにはマザーマシンの販売コア技術のライセンス化など平気で進め、R&Dプロフィット化と称し開発投資をなおざりにしました。
いま企業に残っている経営スタッフ、アドミは実績もなく、足し算/引き算レベルの判断がやっとです。
実行可能の戦術を戦略と呼び英語もまともに喋れない2流の経営者もどきばかりです。 小職も今年59歳似たような境遇なので!? ご意見ごもっともと感じ、愚痴るしだいです。
最近私もニアフィールドSP(FF85WK)を自作、机の上で視聴しております、以外に奥行き空間が感じられビックリです。自作の切っ掛けは車のAudioが美しく聞こえ机上でも同じ?と疑問をもち取り組みました。 次は古いDSPアンプで実験してみる予定です。
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同じ技術屋でも犯罪に走り、日本を売った裏切り者は多数存在します。
しかしリストラされ、生きて行く職場が日本に無い・・と言うよりも、貴重な人材を有効活用出来ない経営陣が最大の問題であるとの認識は、今でも変わりません。 報道によれば、韓国に渡った高級技術者は70名を越え、給料は日本の3倍を超えた・・そして日本の成功例を、徹して絞り取ったと聞きます。
爺の近傍でも、海外に生きる場を選んだ人材が数多く存在します。 まったく以て、国力低下を目の当たりにする光景でした。 しかし海外に渡った技術者も、その後の経緯を辿れば決してハッピーでは無く、時代に翻弄された例が大半を占めると聞きます。
ある報道番組で、日本の大企業の経営者の選出は民主的でない・・これは中国共産党の幹部選出手法とまったく同じである。 (腐った長老が決める取締役会方式)故に一度腐ったたら、組織改善には途方もないエネルギーが必要だと・・。 組織全体として責任を取ると言う次元で、修正が利きにくい国民性を持つと観じます。 これに負けず否は否として声を出さないと、何時まで経っても改善不可と考える者です。 自由主義経済社会なら、改善なければ最後は潰れ、塗炭の苦は最終的に従業員が受ける。
職業柄、他メーカーの技術屋さんと直接話す機会が沢山あり、その体験から若い世代の技術力低下を、
直接肌身で感じておりました。 中堅以上の技術者を大切にし、もっと有効活用すべきだと、強く考える次第です。 技術者の使い捨ては、人材としての先行投資を含め、日本として巨大損失です。
ニアフィールドSPは車載の極致ですが、爺もこのタイプのSP-Unitを開発した経験を持ちます。
音場制御がフィットすれば、広い空間で再生する音場と違って、これは別の意味で新発見があります。
例えば、ドラムスのキックドラムの音は、ドラム内部にマイクロフォンを突っ込んで集音しますが、皮に当たるノック音が誠にリアルに身に迫ります。
楽器の音を直接聞く迫力があります。 どうかこのジャンルも追及して下さい。
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オーディオ機器のEMC対策や他製品への影響についての取り組みについて伺いたく存じます。近年はデジタルアンプやD/Aコンバーターなどが多く出ておりますが、EMCなど対策をされているのでしょうか。
国内の電化製品はPSE規格を適合しておりますが、現在の製品に対する規格自体の内容が追いついていない部分もあるようで、私自身PSEに高周波やスイッチングノイズに関して問い合わせて確認したところ担当者の方曰く、現代のオーディオ機器に対応し得るための規格を制定する必要性があるとの答えが返ってきました。
高調波ノイズのガイドラインは制定されましたが高周波ノイズに関してはありません。
ヨーロッパなどでは進んでおりオーディオ製品も日本より高品位なEMCを講じられていることでしょう。それと昔は突入電流の影響が出たりしましたが、現在のオーディオ製品でも依然としてあるようです。実例として、某老舗オーディオメーカーのデジタルアンプが別のアンプに影響を及ぼしました。(VL Digital 技術として売っているメーカーです。)
何れにしてもまず他製品に影響を及ぼさないまた影響を受けない、第一に安全で安心して使用できるのが大前提と考えます。その辺りのEMCを含む対策をどのようにされているのでしょうか。あと、安価で出来る対策の一つとして、フェライトコアの使用はどうなのでしょうか。アナログ信号には使用しない方がいいのでしょうか。電源ラインでの使用などはどうなのでしょうか。
有効な使用方法や、逆に音質への悪影響がでるような厳禁な使い方も教えて頂けないでしょうか。
それとリタイヤ爺様の推奨するD/Aコンバーターとアンプはどのような機器でしょうか。国内外問わず具体的な製品等もあれば教えて頂ければ参考にいたします。
現時点でのオーディオ製品はヨーロッパのほうが優れているのでしょうか。人材も技術もリードしているのでしょうか長くなりましたがよろしくお願いいたします。
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このご質問の方は業界プロの技術屋さんだと思いますが、釈迦に説法で以下お答えします。
Audio製品は、PCを含む情報機器のジャンルでEMCに対する法的な規制がかかっております。
既にご紹介致しました通り、国内ではVCCIで法的に規制の網がかかっております。
(Voluntary Control Council for Interference by Information Technology Equipment)
国際的には既に解説致しました如くIECで統一した法的な規制がかかっております。
CISPR: Comité International Spécial des Perturbations Radioélectriques (フランス語・シスプルと読む) 国際無線障害特別委員会
最も厳しい規制は、車載用情報処理機器です。(CISPR-25 Class-5)
器機側から空間に漏れる電界の分量詳細は、CISPR-22。Class-Bで決まっております。(爺の現役時代)
この法的規制値も変化しておりますので、最新の情報でお確かめ下さい。
尚国内生産の製品も海外生産の製品も、同じ法的規制の次元で運用されており、製品の国別差は、有るとは考えておりません。(偽物大国中国は??)
ちなみに、第10回寄稿でご紹介しましたバイコニカルアンテナを使って、この不要輻射の電界強度を測定する場合、3m法と10m法が存在し、これが測定の主流を成しAudio製品は、3m法で測定した規制値を用いる事が主流です。
(測定アンテナの水平モード・垂直モードの両方に適用されます。全て電波暗室で計測 )
詳細は、国際無線障害特別委員会から発行された、情報技術機器の無線妨害特性の限度値及び測定法を参照下さい。
(Limits and methods of measurement of radio disturbance characteristics Of information technology equipment)
最近規制値が厳しくなったと聞きます。 そしてPub-22から32に仕様が変更になり、規制帯域も最高周波数が1GHzから6GHzまで広げられたと聞いております。 最新情報は必要に応じ、ご自分で取得をお願いします。
不要輻射の電解強度等の技術情報は、持っておりますが著作権等に鑑み、これをご提供する事は遠慮させて頂きます。 更に電源ケーブルを通じて製品の外に漏れる雑音成分と、逆に外部から輻射エネルギーを受けた場合、誤動作しない耐強電界強度性能も、規格として制定されております。
爺の持つ不要輻射エネルギー抑圧の詳細な技術的手段は、退職契約に抵触しますので、ここでの公開は不可能ですのでご了解下さい。 ともかく、D級AMPの不要輻射対策は最高に困難な技術領域である事は事実です。 爺もその対策技術の開発に1年以上没頭した体験を持ちます。
これらのノウハウは、技術開発費も巨額に上りますので、完全に企業機密領域で保護されております。
ともかく周波数が高いスイッチングエリアで、数十アンペア単位の巨大電力をハンドルする場合、その不要輻射エネルギーの発生は想像以上に大きく、他の情報機器に対して甚大な影響を与えます。
対応策は、信号処理分野に始まって、各種シミュレーション技術・電磁波測定技術・あらゆる実装工学を駆使し、やっと実用領域に到達できる程、困難なものです。 ですから、最新のテクノロジーを全て結集しないと、製品化出来ない故に、各社共その開発した技術は、貴重な存在だとご理解下さい。
大電力器機を起動させる時、突入電流の影響に関するご質問がありますが、これは事実です。 特に給電性能が優れたAMP程、この突入電流の影響を避けて通る事が出来ません。
故に必ず対策を必要とします。 理屈上は、トロイダルトランスの場合は磁気抵抗が非常に小さいので、一次入力電圧の位相が0Vのタイミングで装置の電源をOnすれば、変圧器の一次側巻線抵抗が小さく、変圧器のコアが、磁気飽和点を通過する可能性が大となり、大きい突入電流が流れ込みます。
一般的には、この位相タイミングを外し、電圧位相が90度ずれたタイミングで機器をONに制御する例が見られます。 その他の手法もありますが、製品化に対する重要な技術検討課題の一要素である事は事実です。 加えてAudio信号ライン上への輻射妨害対策は、当然存在します。
何か対策を施した場合、音質劣化は何がしか必ず存在します。 その限度を製品として許容出来るか否か?この見極めは、各製品メーカーの仕事の範疇となりましょう。 この分野のノウハウも沢山存在しますが、今後小信号ライン上の解説で、公開しても問題ないと考えられる範疇で、解説を試みる予定です。
一般的に上記法規制による規格をクリアーした製品であるなら、市場でクレームを受けるレベル以下に制御されている筈です。 従いまして、Audioに特化した規制値が必要だとは、経験上から感じておりません。 特に問題があるとご判断なされるなら、CISPR-25 Class-5の規制値をご採用下さい。
このジャンルの規制値は、電波暗室が持つシールド効果以上の、輻射阻止性能を要求します。 業界泣かせの超有名な悪法?で、人命を左右する場合に適用される、真に厳しい規制基準が採用されております。
当該輻射妨害対策技術分野は、日本は世界でもトップクラスの技術力を有しております。
決してヨーロッパに対して遅れていると言う認識は持っておりません。 特に妨害対策部品は、日本しか供給出来ないジャンルの製品が沢山存在します。 特にフェライト材の採用は、輻射対策には欠かせない存在です。 この素材分野でも、高周波帯での基礎性能向上が図られており、日本の独壇場です。
具体的には、NECトーキンでは初透磁率が16200のフェライト材(S18H)を開発済で、これを用いたコモンモード・チョークコイル(SRC-HB)の出荷も成されております。 これによる高周波インピーダンス特性は、大きく改善可能となりました。 メーカーのホームページをご参照下さい。
特に基礎部品分野で、日本はまだまだ優れた要素技術を保有する国です。 この技術資源を経営的に活かし切れない経営屋もどきの集団が、日本をダメにしている事は事実だと想います。
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Stereoの付録のデジタルアンプを使ってみました。iPhoneから接続して使っています。 出力が12Wと小さいことを除けば、電力は食わないので熱くならないし、音質も悪くはないと思いました。
MacからSINカーブを出力して、このデジタルアンプを使い、自分がどこまで聞けるのかを調べました。 iPhoneの無料アプリのFFTを利用して、スピーカーからの音のピーク値を見ながら周波数を変化させました。sinカーブなので、FFTのカーブは鋭く線のように立ち上がっています。 20HZは聞こえません。
でも室内の至る所が振動しだします。
10000HZは聞こえました。12000HZ以上は聞こえません。ボリュウームを変えると、FFTの値はしっかり上下します。でも耳には変化はありません。FFTの限界の20000HZまでしっかりiPhoneのマイクは拾っていました。落ち込みもたいしたことなく。
人の感覚は周波数の対数的に感じることを考えると、10000HZと20000HZは感覚的には大きな差ではないと思いました。また、10000HZの音色はそれほど重要な音にも感じませんでした。
質問
高級アンプがデジタルアンプに切り替わらないのは、音質に問題があるためと思います。どのようなところに問題があるのでしょうか?B級アンプよりは原理的に優れているのでは?
質問
CDのピアノの音と本物のピアノの音とがかなり違います。その決定的な原因は自分のスピーカーにあると思うのですが。 先生のシステムではどうですか?
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人間の聴覚特性を、身を持って確かめられる・・これは素晴らしい追及姿勢だと感心しました。
但し再生するスピーカー側の基本性能を正しく把握しておく必要があり、特にSPシステムは、高域になる程、その音圧分布に指向特性を有しますので、注意が必要となります。
この超高域成分の有無は、既に解説しました如く、人間にとって安らぎを与える要素を持っている事が分かっております。 例えば、森林浴をした場合超高域成分を沢山有しておりますが、これは聴覚上では聞こえない筈が、この成分を除くと自然さの感覚を失う事が分かっております。
高級AMPが何故デジタルAMP化しないのか? 種々原因がありますが、一つは開発現場の技術者の習熟度不足にも、その因が有ると考えます。
一つは上記の如く大電力の不要輻射対策が困難。(実装工学・回路工学的なアプローチ・部品の使い方のノウハウ等)
一つは信号処理段階での工夫に進歩の余地がある事。
一つは高周波帯でスイッチングする優れた電力半導体素子の改良余地がある事。
一つはアナログ信号に復元する素子の、特性改善に課題が有る事。
D級AMPは、ナノSec単位での大電流制御が回路的に必要です。 これをディスクリートレベルで行う事は、実装を含めとても困難な事です。 加えて負荷電流が異常状態に陥った時の、回路破壊への対応がとても困難な設計となります。 これを自由にハンドルするには、かなり高度な技術力が必要です。
よってアナログAMPを設計する技術者が、当該エリアをハンドル出来るまでには、時間が必要と考えております。 これらの課題は、一歩一歩改善されつつあります。電力スイッチ素子は、海外メーカーから提供される目途が立ちつつありますし、信号処理手法は、DSD256伝送が新素子で実現すれば、この業界のエポックとなりましょう。 更にアナログ信号に戻す大電力用の回路素子改善分野も進む事と考えます。
全て一気に改善されるとは思えず、技術進歩には時間を要するものです。
日本の技術屋ならば、必ず突破してくれる筈です。 暖かく見守って下さい。
最大の課題は、不要輻射抑圧技術と音質制御の両立だと 爺は考えております。
基本的には、D級AMPと申しましてもアナログ信号の一種(PWM波)であり、B級AMPの親類筋に
当たります。 片や純粋なアナログ信号をそのまま増幅するのに対し、D級は単純にスイッチングで表現します。 物理的にはスイッチングする方が、回路的には楽に処理出来ますが、不要輻射対策の如く、
全てが良い事ばかりではありません。 ですから比較の上では長短両方あると考えるのが正解ではなかろうか・・と考えます。
少しだけ明らかにしますと・・
例えばB級AMPではアイドリング電流制御がありますが、実はD級AMPにも存在します。
既にご紹介しました貫通電流制御です。 この電流量と音質は深い関係があります。 加えて不要輻射とも密接な関係を有しております。 信頼性設計を含みこれら相互に絡むノウハウの積み上げが必須です。
ピアノの音質云々・・は、古くて新しいAudio業界の課題です。
そもそも生の音を電気的処理で置き換えるのは、不可能なる議論があります。
何処まで行っても、似せる事は出来ても、電気的手段で置き換える事は、物理的に一刀両断出来る程単純なお話ではありません。・・と爺は想います。
あらゆる物理性能が改善されても、究極的には生の音にはなれない・・が答えではなかろうかと考えます。
この生に如何にして接近させるか?・・・ここに大いなるロマンがある様に思えます。
放送局用のモニターSPで、生信号を直接再生した場合は、其処に人が居て喋っていると錯覚を覚える程再生音声は生に肉薄しております。(少なくてもこの次元までは進歩しております。)
音楽は人間精神を癒し、行動を穏やかにする効能があります。 この手段としてこの道を究める趣味は、本当に素晴らしい・・と感じる次第です。 答えにならず(汗)申し訳ありませんが、差は差として一端認めた上で、何をすれば良くなるか?? ここを追及する価値は、プロ・アマ問わず大いにあると観じます。 しかもリーズナブルな経済性を伴って・・
音響業界では、このピアノの音と、人の肉声を如何に正しく電気的手段で再現出来るか?・・古来より課題の一つとされ、放送局のモニターSPはその目的に従って開発されて来た歴史があります。
評論家氏曰く・・モニターSPには音楽性が無い・・などと批判されますが、SPシステム云々以前に、
それを再生する全システムに思いが至らない幼稚な思考である。・・と爺は、これこそ一刀両断に切り捨てております。
一度ヨーロッパの放送局で使われているモニターSPの音を聴かれる事をお薦めします。
特にヨーロッパ系のスタジオ用モニターSPに、優秀な作品が多い・・と爺は観じます。
音質とは、全システムの構築結果でしかありません。
その中で、音質の大半を握るのがSPシステムであり、経済的には最優先でこのジャンルに投資すべきだと・・、これが過去体験からの実績です。
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皆様から頂戴しましたご質問が甚だ多く、多大な時間を伴わないとご回答まで辿りつけず、真に申し訳ありませんが、辛抱強くお待ち下さい。
頂戴した内容を公開させて頂き乍ら、皆様と共々に考える場をご提供したいと思いますので、宜しくお願い致します。 (今回で頂戴した概ね1/2の分量)
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17-3-2)小信号の解説
(1)抵抗器と熱雑音
Audio・その他ジャンルの如何を問わず、信号と雑音の電圧比(正確には電力比)をS/N(Signal to Noise
Ratio)と称し、とても重要な物理量の評価項目になります。
例えば、Audioではマイクロフォンが発電機となり、これを受け止めるインターフェースである、初段
増幅回路のS/Nでほぼシステムの勝負が付きます。
デジカメの世界でも画像を電気信号に変換するCCD素子等のS/Nが画像表現性能の大半を左右します。
音響業界では、S/Nの値は人間の聴覚限界で決まり、概ね130dB程度必要であるとされます。
デジタル化の進展でこの値も改善されましたが、現段階では業務用で120dBに到達しております。
市販品のデジタル玩具レベルでは、80dBが実態世界です。
ではS/Nは物理的に一体何で決まる?? 全ては発電機の性能と、これを受け増幅する初段増幅回路が決定します。 つまりアナログ領域の性能限界が、この値を決定付けており、デジタル処理は信号処理&伝送限界を改善したものと表現して間違いありません。
結論は、何度も申します通りアナログ回路が、全システムの性能限界を握っていると言う事です。
故に、このマイクロフォン信号を増幅するジャンルの性能が、全ての音楽信号表現の限界を左右します。
このジャンルで有名なメーカーは既にご紹介しました通り、1例としてAKG社(アーカーゲ―)
があります。 爺が過去使っていたC12型マイクロフォンは、主にオーケストラ全体の空間音場を捕捉
するのに有効で、今でもスタジオで使われております。
(真空管Version・・C12VR ハーマンインターナショナルで\77.7万)
第11回寄稿でご紹介しました通り、現在でも真空管仕様に人気があります。
その実は・・、このシステムではS/N限界は人間の聴感限界を超える性能を有しているからです。
当然真空管ですから、高電圧で運用しますので高い信号レベルが確保出来ます。
この信号レベルの最大値から、ノイズ電圧(rms)方向を見た時その電圧落差は、半導体比で圧倒的に
優れております。(S-Levelが圧倒的に高い故) その意味ではデジタル処理に、まだ課題が山積して
いると考えて間違いありません。
この発電機であるマイクロフォンの発電電圧は、大音圧を受けた時、最大で1V程度は簡単に得られます。
何故真空管なのか??・・これは発電電圧1Vを半導体AMPに入力すると、増幅度が初段で大きい故に、簡単に信号が飽和して使い物にならないからです。
半導体AMPでは、飽和を防ぐ目的で発電した電圧を1/10等に、わざわざ減衰させる手法を取ります。
分かり易く申せば、意図してS/Nを劣化させないと増幅出来ない事に繋がります。
増幅回路を駆動する電圧が低い・・これが故に大振幅エネルギーに半導体AMPは、追随困難・・
これを克服するには、増幅回路の電圧を上げる又は初段の増幅度を下げるしか手段が無い訳です。
レコーディングスタジオでは、真空管が今でも欠かせない!・・これが現実です。
勿論、半導体化が主流の時代で優秀なマイクロフォンAMPも存在しますが、真空管の持つ基礎物理性能に勝てない・・この現実を抑えておきましょう。
この音響信号の発電性能を、S/Nよく増幅する事が全てのスタートとなります。
ここでは雑音に関する物理的な特徴を理解する事と致します。
やはり物理現象を説明しようと試みると、数式の登場しか手段が無く、文系の方はそれなりに理解の及ぶ範囲でご覧下さい。
マイクロフォンは振動ボビンに銅線を巻き付けた構造です。 銅線ですから、既にご紹介した如く抵抗値を持っております。 ありとあらゆる物体は、固有の抵抗値を持っております。 その抵抗の両端には
必ずノイズ電圧が発生します。 この固有抵抗の両端ノイズは、電気を通さなくても、電流の有無には関係なく抵抗体があれば熱だけで発生するノイズです。
即ち、単純にそこに存在するだけでノイズが発生致します。
この物体の抵抗とノイズ発生の関係は、そこに置かれた環境温度に比例する事が分かっております。
分かり易く申せば、物体の抵抗両端に発生するノイズの分量は、抵抗値が大きい程大きく、且つ温度が高い程大きい!更にその評価する周波数帯域が広い程、ノイズ電圧エネルギーも大きくなる。
これが物理上の原理原則となり、この原則は誰しも超える事が出来ない普遍的原理です。
つまりこれが物理的に自動的定まるアナログの限界として、立ちはだかります。
これは熱擾乱雑音(ジョンソンノイズ)と定義します。
ノイズをEnとすると、下式で表す事が出来ます。
マイクロフォン自体から発生するノイズの分量を求めてみましょう。
仮にマイクロフォンの巻線抵抗を100mΩと仮定し、発電する電圧の通過帯域を
100kHzまで評価すると仮定しましょう。
マイクロフォン本体から発生するノイズは、常温では・・
=1.195×10-10 ・・・0.195nV
・・・これをBit数で表現すればー194dB以下となります。(0dB=1V基準)
以上より、Audio信号の物理限界を大きく差配するのは、マイクロフォン自体では無く信号を増幅する
側に依存すると理解出来ます。
閑話休題
ノイズを低減する手法は??
17-3-1式から理解出来ます様に、簡単に申せば冷やせば良い・・と言う事になります。
例えば、遠く宇宙から到来する電波を受信して、これを意味のある画像Data等に変換する場合、
巨大パラボラアンテナで受信した、RF(Radio Frequency)信号を増幅する場合、ノイズを徹底的に
減らさないと、意味あるDataが得られません。
この通信信号を増幅する回路は、窒化ガリウムHEMTを使います。 下記を参照
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2008/10/21-1.html
http://www.mitsubishielectric.co.jp/news-data/2010/pdf/0225.pdf
http://www2s.biglobe.ne.jp/~gshirako/titech_space_com2.pdf
宇宙通信の、地上受信局を扱う分野では、ともかく冷やす事が最重要となります。
宇宙空間のデジタル通信では、ノイズに埋もれた信号でも信号処理によってDataが抽出可能です。
(2)真空管AMPの入力抵抗による S/Nシミュレーション
この演算式から、抵抗器で発生するノイズ電圧を見積もる事が出来ます。
例えば真空管AMPの入力端子とGND間に100kΩが挿入されていると仮定しましょう。
この場合AMPに注入されるノイズ電圧を計算で求める事が出来ます。
例えば、信号の通過帯域巾を100kHzであると仮定し、常温では
= 1.196×10-5 V/rms
電圧的には-98.445dBのノイズをAMPに注入する事になります。
故に真空管AMPはインピーダンスが高い分、ノイズには弱いと結論付けられます。
では・・入力側のインピーダンスが10Ωまで低下した場合を考えてみましょう。
つまり電気的にAMPの入力端を10Ωでショートすると考えます。
まったく同様に・・
=
0.03782μV・・・約-148.4dBに相当
即ち、信号源インピーダンスが小さい程ノイズが低下する根本原理がこれ!です。
上記の例で、例えば、真空管パワーAMPの入力端を100kΩでシャントしたAMPが有ったと仮定した
場合、原理的に10ΩのPre-AMPからの信号伝送を考えれば、プリAMP側にまったくノイズが無いと
仮定すれば、パワー段入口でノイズが激減する理屈になります。
通常プリAMP側の信号源インピーダンスは、一般品で1kΩ程度です。
高級品で数Ω程度です。 高級品のバランス伝送では数Ω程度です。
従ってパワーAMPの入力段にボリュームを挿入する意味は、信号伝送ライン上に
シリーズに抵抗を挿入する事と等価です。
伝送ライン上に抵抗器が挿入される。
単純にそれだけでノイズ増大の原因になる。
原理的にはボリュームが1/2の位置で、S/Nが一番悪い事となり、絶対値はボリューム全体の値で差配される。
上記は、ボリュームを挿入するとS/Nが劣化する原理を示しましたが、実際は増幅器側から注入されるノイズを同時に考える必要があります。 これは別項で解説します。
Pre-AMPとPower-AMPを持っている方は、Power-AMPだけ電源入れて、Noiseの程度を確かめた後に、
Pre-AMPの電源を入れるとノイズが激減する事を確かめれば、納得が行きます。
Pre-AMPが動作すれば、Pre側の出力インピーダンスが激減(Power-AMP側から見れば信号源インピー
ダンスの低下)する事が理由です。 上記の例では10Ωと100kΩではS/Nで50dBの差が発生します。
Pre-AMPを使わず、パッシブ型の入力ソースセレクターSWと、機械式のボリュームだけ使った構成では、
音質劣化が少ないのでは・・と言う質問が寄せられております。
この構成は、使用するボリュームの抵抗値によって、Power-AMP側のS/Nが左右される事を承知の上であれば、システムとしては成立しましょう。
しかしセレクターと機械式ボリュームを含み、信号源インピーダンスが高くなる事は免れず、
Power-AMPまでの信号伝送距離が長い場合は、非常に不利な構成となります。
爺の立場では、やはりボリュームコントロールを含むPre-AMP側は、きちんと信号源インピーダンスを
下げる目的で、能動素子である半導体等を使った信号送出システムが物理的に優れており、この構成を推奨します。当然業務用分野は全てこの考え方を採用しております。
信号源インピーダンスが高い機器から、パワーAMPまで長い距離を伝送すれば、当然ケーブル上で伝送損失が発生します。 既にSPケーブルの項で考察しました様に、特に高い周波数領域で伝送損失が大きくなり、音質上は大変不利になります。
信号源インピーダンスを低減した上で、長距離伝送でも劣化が少ないバランス伝送方式が業務分野では
ごく一般的となります。(バランス伝送の詳細は別稿で解説)
以上述べました事は、真空管式AMPとか半導体式AMPの如何を問わず、アナログ信号の一般的な普遍の法則ですから、信号伝送の品質の優劣は、この伝送系のインピーダンスの値が握っている事に着目して下さい。
故に、レコーディングスタジオでは、マイクロフォンの至近距離にファントム電源から駆動する、初段
増幅回路が設置され、増幅と出力段を600Ωの値にインピーダンス変換した後、スタジオミキサーに信号が送られ、各種ソース系のAudio信号がミキシングされる構成となります。
このマイクロフォンからの信号伝送距離は、スタジオ内では10mから30m程度はごく普通に存在しま
す。 しかもそのすぐ傍に、スタジオの照明用ケーブルが複雑に平行又はクロスして走っている・・
その様な劣悪な環境下でも、雑音から逃れ、純粋な高純度のAudio信号が得られるシステムが構築されております。 当然スタジオの照明用電源の明るさコントロールは省エネ化でPWM制御が一般的となり、故に照明専用電源が準備され、Audio系電源とは別に独立して構成される事が一般的となりました。
(地方の小規模劇場では??)
(3)初段増幅回路の信号源抵抗とS/N・コレクター電流とS/Nの関係
この内容を解説するか?種々悩みましたが、現在は基本的なアナログ技術が失われた状態にあり、下記理由で紹介する事にしました。
各種トランスジューサで発電し、これを高S/Nで電気信号に変換する場合の、基本設計となる手法の
ご紹介です。 アマチュアで文系の方は飛ばして下さい。 Audio分野では、特にマイクロフォンからの
信号を如何にして高S/Nに増幅するか?と言うジャンルの話となります。
更に加えて、各種増幅システムのS/Nを確保する基本的な設計手法を述べます。
この技術アイテムは、例えば医療分野での生体信号の増幅に関して、各種センサーからの信号を増幅するフロントエンド回路を構成する場合、センサーを含むフロントエンドの設計に有用な情報となります。
このジャンルは全て半導体化し、回路をディスクリートで組む機会が失われた結果顧みられる事が無く
なった・・と言う背景があります。故に、このジャンルは半導体回路開発のジャンルにシミュレーション
として導入されております。
又汎用OP-AMPとして、特にローノイズ分野で且つ高周波分野への適用が成されております。
繰り返しますが爺の現役時代では、最高性能を目指す場合、半導体素子そのものを目的のシステムに合わせて開発しておりました。(昔のAudio機器設計では常識)
今でもその必要がある筈です。 しかし単なる汎用半導体の寄せ集めでAudio商品が開発される時代となりました。 故に、限界性能を突き詰める設計が成されず、その為に必要な技術的アプローチも廃れたと総括しております。
古来より何れのジャンルでも、技術開発の世界は、限界への挑戦無くしては新しい概念が誕生しません。
Audioジャンルでもまったく同じ事が申せます。
ハイレゾ信号処理+高S/Nの分野は、専用半導体の開発が必須事項の筈ですが、日本では経営サイドがそれに対してまったく理解を示さない・・これが海外半導体メーカーに頼らざるを得ない・・悲しい現実の姿なのです。
(Audio用半導体の国産は、一部(パワー用)を除き全滅。新規開発の目途は??)
以下に解説します初段増幅回路専用の半導体が出現すれば、性能限界も向上する筈ですが・・
果たして望みは有るか?? ともかく・・A/D コンバーターに信号を送り込む為の、初段アナログ
増幅器のS/N良否が、全システム性能を左右するとお考えください。
繰り返しますが、電源性能は母乳と同じで雑味成分があれば何をしても無駄です。
ここでの性能レベルは、S/N限界を扱いますので、物理的な一般原則の話となります。
その電源のクリーン度は、電源S/Nとして-130dB以上が担保されている事が前提となります。
具体的な処理は、シャントレギュレータ-の導入等が、有効な手法となりましょう。
このスペックを実現する電源用半導体からして、入手が困難だと推定します・・。
能書きはこの程度で、早速高S/N実現の基本アイテムを解説します。
概ね下記に総括可能です。
1)高電圧で且つローノイズの、ディスクリート半導体が必要
フリッカー雑音・1/f雑音・ショットノイズ・ホワイトノイズなどに着目。
半導体の耐電圧は、少なくても80Vは欲しい。
マイクロフォンのファントム駆動電圧は48Vが基準。
2)初段増幅用半導体は、ハイGain化が必須項目。=高hfe素子で且つAudi的視点では、6MHz程 度の帯域まで性能が安定して担保される必要がある。
これでAudio信号のハイエンド100kHzをカバーする。 (高CMRR化設計)
3)初段増幅専用半導体のノイズフィギアー特性の形(初段コレクター電流とNFカーブ)に着目
4)信号源インピーダンスとノイズフィギアー特性との親和性
発電機であるトランスジューサのインピーダンス特性にマッチした、半導体側のノイズフィギアー
特性の改善が求められる。
5)初段コレクター電流の運用範囲とノイズとの関係性
微小電流領域での増幅度担保とローノイズの範囲拡大。その為に必要な素子構造など。
6) 位相余裕に鑑みた、必要通過帯域内の裸Gainの見極め。
(回路的工夫を伴う)
7)高周波帯へ配慮した実装設計手法の導入(多層プリント基板等)
(音質的検討を伴う・外部ノイズへの対応手法)
このジャンルは、高感度で且つ微小信号を扱いますので、特に実装技術の良否で基本性能が大きく左右されます。 特に外部のノイズ混入対策を入念に設計する事が大切となり、昨今の携帯電話の強電界強度対策が必須となりました。
特にトランスジューサ-と初段増幅素子との結合(インターフェース)の工夫が難しい課題となっており
ます。(結論は短く・シールドは厳重に)
その意味でトランスジューサの、ボディー内部への搭載が一般的となります。
一般的には給電手法が困難になります。 以上の内容が、料理人で申せば素材選びとなりましょう。
素材が無ければ、素材自体を開発するしか手段がありません。
繰り返し申しますが、裸の化粧を施さない優れた素材が無ければ、正しい料理を施しても所望する期待値に到達する事は不可能です。
1.ステップ1
料理で言えば、何を如何に料理するか?になります。 設計的には到達目標の設定となりましょう。
ここでは仕様書作成です。 設計方針とも申せましょう。
業務用を想定しますので、以下の如くの対応等となります。
・マイクロフォンの筐体内部への搭載
・バランス伝送出力:600Ω(キャノン型インターフェース)で有線伝送
・ファントム電源対応の設計
・対入力限界の設定・・最大入力音圧と、音源からダイヤフラムまでの距離の決定。
AMPへの最大入力電圧と標準入力電圧の設定。
・ハンドリング重量の設定・・使用目的は固定マイクロフォンを想定。
・通過帯域:100kHz±1dB以内 使用ダイヤフラムの形式にリンクするので方式を決定。
・目標S/N:Aカーブ補正で130dB以上 但し信号ピーク値を基準。
ダイナミックレンジと表現してもOK。
・飽和防止用ATT搭載:-20dB搭載
・ダイヤフラム方式とインピーダンス値及びインピーダンス特性の設定。
・音圧指向特性の設定。
・外部対雑音性の設定:強電界の程度・風圧防止限界・機械的衝撃性など。
・回路の増幅特性の設定:Non-NF時の裸周波数特性の設計目標設定。
NF量設定
初段増幅度の設定・・これに伴うS/N最適化に伴う素子仕様の吟味。
同時に増幅帯域巾:周波数限界 S/N限界 歪の目安
CMRR限界と周波数特性 位相特性などの吟味
・・と、このような設計目標を網羅的に記述して行き、設計限界を何処に置くか?
これらの各項目を決めて行きます。
当然限界性能を上げるには、増幅素子自体を開発する事となります。
2.ステップ2
設計方針が決まったら、実装手段を含めたテクニックの吟味になります。
ここでは、最大の目標が高S/N化ですから、具体的な物理量に設計として落とし込む必要があります。
前提条件としてファントム電源を基本とした場合、48Vが基本となりますので、物理的には信号の最大
振幅がこの値で自動的に決まります。
回路の動作効率を考えると、実際はこの値からシリコン増幅素子の動作限界0.6Vを2個分差し引いた
目標S/Nが-130dBであれば、1V=0dBなら+方向には33.25dBとなりマイナス方向には、-96.75dB
以下のノイズに設計する必要があると理解出来ます。
(A-ネットワークフィルターで評価)厳しく設定するならノイズのピーク値を設定。
ATT無しで初段AMPに入力される電圧限界を設定すれば、供給電圧から増幅度が自動的に求まります。
耐入力電圧をここでは2Vに想定しましょう。 すると、2Vを入力して46Vに到達すれば良いので、
増幅系としてはトータルNFをかけた後に、 32.8dBの増幅度を有すれば設計目標に叶う事となります。
半導体式AMPでは、これを1段増幅では実現不可能となりますので、既に述べた差動2段+バッファー
形式の増幅器で処理する事となります。
次に裸の増幅度を如何に確保するか?の吟味となります。
当然NF量が増大する程、ノイズ・出力インピーダンスが低下しますので大きい値が望ましいのですが、
全ての設計的な要諦は、初段増幅素子の増幅度の良否にかかっております。
つまり初段増幅素子の電流増幅度が、高ければ高い程、且つその周波数特性が優れていればいる程、トータルとしてのS/N・周波数特性・CMRR特性・歪など基本物理特性が優れたAMPが構成出来ます。
ですから・・これは素子自体がシステムの良否を直接決める訳です。
これらの設計物理量は、回路方式・設計テクニックに依存して大きく変動します。
ここから先はノウハウの世界となります。 例えば、増幅系の高周波特性を改善する為の回路方式としては、カスコード接続の採用が必須となりますし、温度依存性など信頼性確保には初段の差動増幅用素子のペアリングがキーとなります。 その他半導体を駆動するバイアス回路にカレントミラー回路を採用する等の工夫が必須項目となります。
高S/Nを目指した設計には、何が重要か? アナログ増幅回路の基本的な技術要件は、次回解説する事に致します。乞うご期待!! 既にご紹介したパワーAMPの駆動段も、同じ基本設計思想で対応しております。 ご紹介するのは、あくまで設計の基礎・基本部分に限定します。
この基礎的な情報が、半導体回路開発に組み込まれ、シミュレーター内部に演算ベースで組み込まれており、回路をディスクリートで組む場合以外に、必要とされず忘れさられてしまった・・ と言う背景が
あります。
故に、性能限界を求める場合半導体の基礎開発を必要としますが、単なるICの組み合わせで機器を設計するのが一般的となった、現在では限界を超える手段として具体的に何を成すべきか??が、正しく理解されていない・・と申せます。
当然アナログICを開発する部隊は、その重要性を正しく把握されており、優れたOP-AMP開発では必須項目です。 特にUS系企業に優れた商品例が見られます。
(故は軍需品の先端性に重要であると聞きます)
上記の目的に合致する、超高性能の高耐圧・低雑音のOP-AMPが既に販売されております。
勿論海外製半導体メーカーから提供されております。
ともかく・・増幅器初段の半導体素子の振る舞いが決定的に重要となりますが、その詳細は次回としま
しょう。
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今回は古典に学ぶの4回目です。 今回は四苦八苦を扱いました。(これも仏法用語)