【Z・特別講義18】

[ これまでにいただいたご質問への回答 ]




2015年新年特別号 寄稿

ご家族様そろって良いお年をお迎えの事と存じます。 旧年中は沢山の声をお届け頂き、真に
ありがとうございました。 皆様の お役に立つか甚だ疑問ですが、今年も頑張ってAudioの
薀蓄を語って参りますので、宜しくお願い申し上げます。

新年度の執筆を始めるに当たり、Audio業界に希望の持てる話があります。
既にご存知の方が多数おられると存じますが、昨年末から種々動きがあった、半導体開発に関する話題です。 早く次世代半導体を開発し、Audio業界に新風を吹き込んで欲しい・・云々
と繰り返し記述させて頂いておりましたが、めでたく新製品が登場します。

その第1号は・・家庭用の電源システムです。
まずこの情報をご覧ください。 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/EVENT/20140730/368107/
三菱電機の家庭用のパワーコントローラーで、H27年1月発売です。 
4.4kWの電源供給能力があり、DCからACへの変換効率は98%とあります。 
価格は¥440000.-とあります。 構成はフルSiC-IPMで、太陽パネル経由で発電した電力を
交流に変換します。 このシステムをAudio専用に使えば、かなり期待出来るのでは?・・
と考えますが如何でしょうか。 
全ては電源性能によって差配されると、繰り返しお題目が如く述べて来ましたが、Audio専用
の発電機を家庭内に持つと同じ意味ですので、どなたか経済力の有る方はチャレンジしてみませ
んか?

そしてSiCタイプの半導体より、反応スピードが概ね9倍に及ぶと言われるGaNタイプの
住宅用屋内設置型パワーコンディショナーを安川電機が同じく、今月から発売するとアナウンス
しております。 情報は http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20141214/394420/
此方は、単相200Vの4.5kWで騒音も減らしたとの記述があります。

更に2月に販売が予定されておりますAudio-AMPがパナソニックの存在です。
高級Audio-AMP SE-R1で販売価格は¥158万とあります。
記事は http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20141219/395355/?ST=energytech&P=3
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140909/375160/
を参照して下さい。 半導体はGaNタイプを採用した商品の様です。

そして、これらの電源システムを陰で支える存在の、電解コンデンサの新製品です。
TDKが新シリーズの商品を新年1月から、EPCOSブランドで発売しました。

交流を直流に直す整流器回路に使う電解コンデンサは、システムの信頼性・音質性能を担保する根幹を担う部品です。 分けてもそのリップル電流の容量は重要であると解説して来ました。
特にB4375シリーズでは、定格電圧DC 350V~450Vで 1000μF~18000μFでは、リップル電流容量を+40%増量し、
B43704シリーズでは350V~550Vで、820μF~22000μFはリップル電流耐量を+25%Up
とあります。寿命は、+85℃で12000Hrの設計で直径51.5~90mm 高さ80.7~211mmと
なっております。
インバーター回路用ですが、高電圧・大容量が魅力であり真空管AMP用にも向くのでは?と
推定されます。 真空管AMPの自作マニアの方は、試してみては如何でしょうか。

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かつて経営の神様と言われた、土光敏夫経団連会長の言によれば・・
「滅びゆく王様より、先に希望が持てる乞食の方が良い」 この言葉に爺は思いを馳せます。
この言葉は、経営者のみならず商品を受ける消費者側も、まったく同じ心理ではないでしょうか。
エレクトロニクス業界を活性化させるのは、基幹となる進歩した半導体素子が必須です。
そのSiC GaN素子の登場で、電力系からまずAudio分野も改善すると期待しております。
更にその素子が小信号系に波及すれば、人間の可聴限界を超えるAudioシステムを構築する事
も夢では無い筈です。

特に、GaN系素子は、高電圧・ハイスピードが特徴であり、技術発展に希望が持てます。
この扉は、アメリカでも開く方向で動いております。 日本のエレクトロニクス業界に喝を入れ
る存在になると爺は観じております。 この先に大いなる希望を持ちましょう。

さて新年早々の話題は、皆様から頂戴しました疑問質問を中心に構成させて頂きます。
第1回~第5回寄稿までの分に関し、種々の質問・疑問・感想などを頂戴しております。
ご質問に答えていない事項を中心に、皆様の生の声をそのまま掲載させて頂き、皆様のご参考に
供したく存じます。 寄せられました声へのコメントを記述させて頂きます。

・・と言う訳で、小信号回路の解説は次回から再開と言う事で、宜しくお願い致します。

差し障りの無い範囲で、ご投稿された方の原文のままをご紹介させて頂きます。
予め掲載のご承諾を得る手段がありませんでしたので、事後承諾で真に申し訳ありませんが、
ご了解賜りたく宜しくお願い申し上げます。 読者様の生の声を、広く皆様に読んで頂きたく
爺の独断で掲載させて頂きました。 責任は全てこの爺にあります。

 

最近の記述が、専門的な話に偏り過ぎる!とご指摘を受けております。 どの次元の専門性で止
めるか?・・この点について、工夫が足らないとのご意見もあり、無い頭で試行錯誤しておりま
す。 理屈でご納得頂くには、どうしても数式の羅列となり、正直苦しく物理現象を言葉のみで
解説するには限界が存在します・・(大汗)
もう少し原理的な次元での記述を、増やす方向で考えてみたいと思いますので、ご了解賜れば
幸甚です。 では早速質問事項の解説を・・

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質問・疑問・感想―1)

真空管AMPと半導体式AMPを、セレクターを利用してAMPの切替時に特に注意する点を(特に真空管AMPを利用する時)ご指導ください。

スピーカーライン上の取り扱いにつきては、ケーブルの解説項で詳細を記述しましたが、特に
B級プッシュプルAMPでは、往復線路上の電気特性が完全に等しい必要があります。
セレクターを挿入した場合、行と帰りで電気的性能が完全に等しくなる様な処置が必須となります。(例えば切り替えSW-Boxの電気接点は両切りにするなど)

この次元で申せばA級―AMPと真空管AMPでは、往復線路での電気特性を完全に一致させないでも、B級AMP程には問題になりません。
しかしセレクターの挿入は、Hi-Fi用途では何れにせよAudio品質を損なうので爺は推奨出来ません。

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質問・疑問・感想―2)

出力トランスを通すと奇数次高調波が減衰するとの説明がありましたが、確かに高い周波数の時はトランスの伝送特性から減衰するかもしれませんが 中音域では3次高調波もまだ
10-20kHzで余程粗末なトランスでない限りフラットな領域と思いますが。
もう少し詳しい理由が説明されていれば良く理解できると思いました。


確かに舌足らずでした。 中音域(200~1kHz程度)では、高次高調波(通常5次以上)
では、Audio信号の通過帯域内に歪成分が存在すれば、出力トランス内を伝搬します。
爺が問題視していたのは、人間の耳が一番敏感な4kHz~6kHz帯に於ける、高次高調波
成分です。
例えば4kHzであれば5次高調波は20kHzです。(7次で28kHz・・ECT)
通常聞こえないとされる帯域では、トランス巻線構造から振幅が大きくなる程、漏れ磁束・コアー損失など影響を受け雑味成分減衰しやすくなります
この雑味成分とは、-70dB以下の電圧エネルギーを想定しておりました。
あくまで、針金である伝送線路との比較上の話であり、物理Dataで示せと言われると正直手持ちDataがありません。 これはイメージとして受け取って下さい。(汗)

私の理解で、本質的な半導体アンプと真空管アンプの音質の差異は用いる能動素子の数にあるのでは無いかと想像しています。真空管アンプなら入力から、トランス一次側までに3段の増幅回路が普通と思います。
半導体アンプはユニットとしては、4段くらいは最低必要で、用いられる半導体の数は
作動増幅で各段に2個ずつあるいは特性のぴったり合っていないコンプリメンタリー回路など
1ユニットに4個から6個の能動素子が使われています。
多量のネガティブフィードバックをかけて非直線性や不揃いの補正をして、物理特性は
極めて素晴らしくても、聴感上は今一つと感じると思います。

既に解説しました如く、例えばフォノ入力端子からスピーカー端子に至るまでのIC半導体
内部のトランジスター数を正確にカウントすれば、信号処理ブロック1個当たり最低でも12個(増幅作用に直接係るディスクリートトランジスタ換算)で必要です。
トータルすればこの5倍以上に相当致します。
故は、増幅素子1個当たりの増幅能力が小さい事に尽きます。
真空管1個でIC内部の半導体12個以上に相当しますので、お説の通りNFと言う化粧を施し
て、やっと真空管並みになる事は事実です。

巷の海外製品では、半導体を使ってNon-NF式AMPと称し、法外?な価格で販売されている例
が見受けられます。・・と言いながら、実は完全なNon-NF形式では業界水準のAudio信号
伝送規格(CP-1203A・第3回寄稿)を満足させる設計は不可能な話です。

小信号処理の解説項で詳細を解説しますが、当該メーカーはディスクリートトランジスタ3石で
パワーAMPの駆動段を設計したとのカタログ表記があります。
この時オーバーオールでの帰還ループは存在しませんが、終段のパワー段を除いた状態で局部
帰還がかかった状態で、Non-NF式AMPであると豪語しております。
価格タグ(\18000000.-)に見合う音質か? 読者様のご判断によります。

確かに半導体素子の個数が少ない方が、物理的な挙動は有利である事は事実です。
昔から、シンプルイズベスト・・との表現は正しいと考えます。
ともかく増幅素子としての、素の物理特性が良くなければ良質な音質は得られません。

その意味で、近年パワー半導体で脚光を浴びている、SiC(炭化ケイ素) GaN(ガリウムナイト
ライド)Ga2O3 (酸化ガリウム)系半導体の進化に期待出来ます。
これが出来れば、真空管並みの高電圧化した半導体が入手出来ます。

参考・・情報通信研究機構では酸化ガリウムによるデバイスを2020年には商用出荷したいとの
情報があります。(パワーFET素子・現在P型が未開発) 真空管の欠点である寿命が短い・   信頼性に乏しい・発熱を伴う・・を上記半導体で早く克服したいものです。


安物のアンプですが、トーコントロール回路をON-OFF出来る物を所有しています。
明らかにこの回路をOFFにして聴くと音はかなりすっきり聴こえます。
同じく、昔、FET-Trの差動2段構成のユニットアンプを用いたプリアンプを自作し、今もありますが、phonoではこのユニットアンプを3段使っていますエミッタ―フォロワーを加えると1ユニット当たり5個の石が使われています。
同じ回路を真空管なら3極管3段で充分です。カソードフォロワーを加え4段になりますが同じレコードを聴くと真空管の方が音はすっきりします。
これらのことから、能動素子は少ないほど音が良いと思っています。
勝手な素人の考えですが、もし、ご意見が頂けると、大変ありがたいです。

その昔・・トーンデフュートなるSWを備えたプリメインAMPが流行しました。
お説の通り、このトーンコントロール回路を通す事で伝達特性が劣化します。
周波数方向で振幅特性をいじる程、音質は劣化します。 この主たる原因は、信号伝達回路の中のインピーダンスの上昇を招く事により、回路S/N劣化・伝達損失増大が発生します。

その他、Audio信号の伝送には振幅の他に位相特性が大変重要となりますが、この回路を通す事で位相回転が激しくなり、結果として音質劣化に繋がります。
現代型AMPにもトーンコントロール回路は備えておりますが、拙宅ではこの回路はシステム内に存在しません。
上記エミッタフォロアー云々とありますが、これは伝送系のインピーダンスを低減する仕掛けです。(この回路は発振し易いので注意が必要です)
つまり、信号を次段の信号処理に伝達する場合、インピーダンスが低いとS/N・歪・周波数特性
などあらゆる物理性能が良くなります。詳しくは、別途信号処理回路で解説する予定です。

この項の結論は、半導体素子の個数を低減したいが、減らすと所望の電気特性が得られない。
(素子1個当たりの増幅性能が悪い事に帰着・更に動作電圧が低い事に起因)
増幅素子1個当たり増幅度が大きい真空管に、半導体は叶わない。
これが音質差を生む根本要因となります。 但し半導体には高周波帯まで動作する別の顔が存在
しますので、パルシブな反応の早い信号は、圧倒的に半導体が有利です。

復習ですが、半導体は同じ電力で考えると電圧が低い分大きい電流を流す必要があり、この電流
線路上のリニアリティーを確保すると言う意味では、圧倒的に真空管が有利です。
(電流が小さい故影響度が小さい)同じ回路なら、真空管でも素子数が少ない程有利であると申せます。
真空管AMPでも小信号用トランス結合ドライブのパワーAMPが存在します。
真空管の代りにトランスで電圧を昇圧する手法ですが、優れたトランスならこの手法が有効となります。(部品入手困難)

又能率の悪いスピーカーを駆動するには、低インピーダンス駆動が可能な半導体AMPが真空管
より優れております。
能率の高いスピーカーを、より小さい電流で駆動し、同等の音圧を得るシステムが有ったと仮定すれば、爺の直観では半導体式AMPが有利だと考えております。

理由は、大電力部品の伝送線路上にトランスを持ち込むのは、物理性能的に圧倒的に不利である
故に、シンプルに半導体と負荷の間をダイレクトに結合する手法に叶わない
つまり、物理的な影響度と言う視点から考えると、大電力周辺の回路素子数は減らするのが高音質化への第一歩であると結論付けております。

この視点から申しますと、スピーカーネットワーク回路は音質を阻害するに対する部品の
ナンバー1的な存在
です。 故にマルチチャンネル再生の必然性がここにあります。
信号をイジル!なら小電力分野で処理するのが、圧倒的に有利であり原理原則です。
一度スピーカーネットワーク部品を全て除き、回路側で信号処理したシステムと比較試聴されれば、ご納得が行く筈です。音質次元が何段も上昇する事を爺が保証します)

その意味で、フルレンジスピーカーが優れているとマニアの方なら自覚されている筈です。
上記増幅素子数云々も、音の出口条件で音波に変換するスピーカーの基本性能が優れていれば、いる程その真価が分かります。

拙宅は既にご紹介しました通り、KT-88のモノーラルAMP2台+300BのA級ステレオAMPによるマルチチャンネル再生です。 
低音と高音伝送がスピーカーライン上でも完全分離しており、これ以上の手法は存在しません。
是非この機会にチャンネルデバイダ―の技術を身に着けられて、高次元の音楽ライフを楽しんで
頂きたいと思います。

当然これらは、給電能力が一定水準以上を担保されている事、これが前提条件です。
以上が全てではありませんが、これらの相乗効果で、音質差として認知される・・と結論付けされます。(経済性の概念も必要でしょう)

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質問・疑問・感想―3)
人間の聴感特性についての解説を読み、30~40年前のアンプのラウドネススイッチを思い出
しました。(現在のアンプについてはよく知りません)
オーディオ機器で音楽を聴くときは音量を自由に決められますが、演奏会場で聴くときは音量調
整はできません。(聴く位置にもよりますが)
オーディオ装置で聴く場合には聴感特性を補正する必要があるように思いますが、先生のお考え
をご教示いただけないでしょうか。

まったくお説の通りです。何故現代AMPからラウドネス回路が除かれたか? 
爺も疑問に思っております。 
ヒアリング音圧が有る程度高いなら無用の長物ですが、夜小音量で楽しむ場合はラウドネスコントロールのON/Off―SWは有用だと感じます。
回路も簡単であり、制作する方にも少額の負担で済む筈ですが、これも流行でしょうか・・?
尚ピュア-再生を目指すなら、シンプル・イズ・ベストの考え方に立つべきでしょう。
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質問・疑問・感想―4)

先日、秋葉原の某所で真空管アンプで大型のスピーカーを鳴らしている音を聴いたのですが、
自分が持っていたイメージとまったく異なる現代的な音にびっくりしたことがございます。
今回の気付きで、少し納得がいきました。
一方で、最近の真空管ブームにはちょっと疑問を感じます。真空管アンプの良さがその素子とし
ての優秀さに起因するのであれば、パワー段での増幅に使ってこそ効果があるのではないかと
想像いたします。ところが、最近の真空管搭載商品は、負荷?の少ないプリ部に小さな真空管を
配し、パワー段はデジタルアンプというのが非常に多いです。このような場合、音の特徴は
パワー段のデジタルアンプが支配的になるのではないかと想像するのですが、、、、
もし、機会がございましたら、上の疑問に対しても扱っていただけると大変嬉しいです。

これは爺の個人的見解です。
パワー段に真空管素子を使わない理由は、製品の長期信頼性担保の問題が第一番ではないでしょうか。 
たぶん爺に設計せよ・・と言われてもこのような理由からチョイスは考えざるを得ません。 
更に安定して同じ品質の真空管を入手する事が困難・・と言う事情があります。
中国製の品質は劣悪、ほんと!信用出来ないのが実態です。(儲ければ何してもOKの国柄)
ロシア・ヨーロッパ球は入手が不安定。

それと、現代スピーカーは低能率でありこれを真空管でドライブするのは不利である事。
それと出力トランスのメーカーの体制が、昔のように十分でないと言う事情があります。
加えて、これを支える周辺部品の購入が困難になっております。
加えて高級な変圧器を製造する時に必要な希少金属の入手難による、価格の高騰があります。
それや・これやの事情が重なり、先祖帰りは日本では難しいのが現状です。

小信号段に真空管を使う事は、音質重視なら十分考えられます。
電力が少ないので、寿命の点でも有利でしょう。 
Audio専門の拘りメーカーなら、まだ新しい製品訴求は十分あると考えます。

電力増幅段にデジタルAMPを使えば、この音質に左右されるとの仰せですが、これはそうです!と言いきれないのでは・・と考えます。 
過去の経験では、小信号段が音質を大きく差配する事が十分あります。

実はD級AMPの音質は、かなり純アナログ式AMPの音質に近い設計が十分可能です。
従いまして、プリAMP部分に真空管+パワー段にD級AMPの組み合わせでも、今様の優れた音質を持つ製品は実現可能だと見ております。
その前にスピーカーの音響変換効率を上げる事が、この業界の最優先課題だと認識しております。

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質問・疑問・感想―5)

3回目の特別講義でサンプリング周波数の話題が出てきました。私が考えますに、サンプリング
周波数を高くする、あるいはオーバーサンプリングにより見かけ上のサンプリング周波数を高く
する効能は、アンチエリアスフィルタのカットオフ周波数を可聴周波数範囲よりも上に持って
いくことができることにあるのではないかと思っています。

測定器屋の経験では、位相平坦フィルタ以外では、フィルタで生じる位相平坦性の崩れ
(群遅延が一定でない)があると、元波形の高調波成分が和算されても元の波形を再現できなく
なります。
このアンチエリアスフィルタのカットオフ周波数をなるべく高くして、高調波加算による原音再
現がくずれる領域を可聴周波数帯域の外にもっていくことが、音質改善に結びついているのでは
ないかと考えています。

本件はまったく仰せの通りです。
その昔・・サンプリング周波数を上げる事が困難でした。 最近はC-MOS化したアナログ
高速SW素子が出来ましたので、44.1kHzの128倍の5.6448MHzでのサンプリングが可能
になりました。 近年ADコンバータ―の変換方式で1-Bit方式が市場で主流になりました。
理由は振幅方向で、中間から下の電圧領域に於けるリニアリティー(変換精度)が理屈上で優れ
ているからです。 同時にこの手法は群遅延を周波数軸上で一定に設計する事が簡単で、位相歪
が少ないと言う特徴を備えます。 

ノイズに関しては、唯一不利な特性を示します。 理由は入力信号が無い時、デジタル的には
信号が不定状態となり、サンプリング回路の論理設計が真に面倒なのです。
シミュレーションしても現実となかなか一致しない悩みを抱えますが、近年は理論も確立されて
半導体化への導入が従前よりは易しくなりました。

又ノイズ処理は、デジタル変換(量子化)後に、ノイズシェーピング処理しノイズの帯域を可聴
帯域以外の高い処に持ち上げ、その分Audio帯域内部のS/Nを稼ぐ処理が一般的となりました。
(当然位相回転を伴います)
近年は、その昔採用していた逐次比較方式のADコンバータ―であっても、サンプリング周波数
を上げる事が可能な状況となり、この方式でないと実現出来ない機能を持っている故に、市場で
人気があります。

特に業務用Audio分野ではプロのミュージシャンに、音質的には根強い人気があるようです。
1Bit変換方式は、透明感が良い事が特徴です。
その一方で、逐次比較変換の手法はある種のパワー感と申しましょうか、生の楽器が持つ独特の
エネルギー感で言う、押し出し感の良さは1Bit変換に比べ圧倒的に優れており、好まれる理由
になっている様です。

但し逐次比較方式のオーバーサンプリング周波数は、96kfs程度に留まります。
その意味からは、位相回転による歪成分は理論的には多いと言えます。
俗に言われる、ハイレゾの定義で業務分野での生ソースの記録は、まだ96kfsに代表される周波
数を限度として扱う例が主流です。 更に高S/Nを狙う業務用には向いております。

その一方で、業務用として使われるDSD-256方式の44.1k×256=11.2896MHzで動作する
フォーマットは、既に旧来のアナログ時代の音質の領域を超えていると言われます。
ミュージシャンの著作権の関係で、この業務分野のフォーマットは、市場に流布される事は困難
と考えます。 この1/2の通信レートにダウン・コンバートした(DSD-128による)有料音楽
配信が、始まっております。

ところが・・驚く事に!
去年nano iDSDなるヘッドフォーンが発売されております。
ウエブは・・http://ifi-audio.jp/nanoidsd.html  を参照して下さい。
このホームページの情報によれば、DSD-256に対応していると言うではありませんか!!
何と11.2MHzと12.4MHzに正式に対応している・・とのスペックが乗っております。
PC経由のDSD-Dataは、このインターフェースを経由してヘッドフォーンで聴ける様で
す。(但しMac系のPCはDSD-128までの対応)

まだ市場に登場してない通信フォーマットのDSD-256を標榜したのは、この商品が最初では
なかろうか・・と思います。
PC経由のUSB-3に適合したインターフェースを備えております。 SONYのハイレゾ対応
ウォークマンとも接続可能の様です。 US-Pin-Jackのアナログ出力端子も備わっている様です。
音元出版社主催 VGP2015 ヘッドフォンアンプ部門で金賞を受賞した・・とあります。
ご興味のある方は覗いてみて下さい。(季刊雑誌 Net-Audioも参照下さい)
ハイレゾ再生の世界も、今年は賑やかになりそうです。 アップル社の小型ヘッドフォーン対応製品群は、ハイレゾは、まったく相手にしておりませんが・・。

CDが出始めのころに、アナログ録音をただAD変換して安価に販売されていたCDを、通常の
CDプレーヤーで聞くと酷い音がします。このCDを、たとえば88kHzへの周波数変換を行って
再生すると、瑞々しいLPの音に近づきます。その後同じアナログ音源を用いて、再CD化され
たCDでは、同じく88kHzの周波数変換を行っても、前記のCDほどにはLPの音に近づかな
いことを経験しました。これはCD化にあたり元信号に何かしら手を加えたのではないか想像し
ています。
これらのことからアンチエリアスフィルタの群遅延特性が、音質に利いているのではないかと考えるに至った次第です。 オーディオの専門家からの御意見はいかがでしょうか?

近年アップ・サンプリング等サンプリング周波数を自由に変換する技術が主流となりました。
ご存じの如く、ダウン・サンプリングよりもアップ・サンプリング対応が、技術的にはその精度を考えると困難と申せます。 
アップ・サンプル時のData挿入(インターポレーション)の制御が困難(Data演算用フィルタ精度と挿入量との関係、及び非同期でData挿入する場合は、時間軸精度の問題)であります。

Digital-Data通信時の、ジッターに起因するS/N劣化問題を解決する為に、非同期式アップ
サンプリング・コンバーターが主流となりました。 ご存じの如くこれは万能薬ではありません
・・と言う事は、例えば44.1kfsを88.2kfsにアップ・コンバートした時に音質劣化を伴うと言う事を意味します。 

確かにジッターによる性能劣化と言う深刻な問題は軽減されましたが、業務用の機器とは言え、Data伝送&処理を繰り返すと、必ずDigital-DataのAudio品質は劣化します。
Hi-Fi Audioと言う次元から眺めて見れば、Digital-Dataの器機間伝送の音声品質劣化問題は
まだ解決すべき課題が山積しております。
この様な次元で、仰せの課題を俯瞰すれば、生次元の品質から申しますと、処理を繰り返せば
繰り返す程、劣化は物理的に避けて通れない・・これが現実の姿であります。

もっと具体的に申せば、アナログ記録したマスターテープを**kfsでオーバーサンプリング
でADし、これを44.1kfsにダウン・コンバートし、CDに焼き込む。
更にこれをCDプレーヤー側で**kfsでアップ・コンバート・この様に繰り返す度に生信号は
劣化して行きます。(Data通信とfs変換の回数だけ劣化)と言うロジックを辿ります。
当然この中には、変換操作時に於ける周波数軸方向での群遅延時間の乱れも含まれております。

そこで、これを解決する手段として、前記の如くアナログの生信号を11.2896MHzでDSD信号に変換し、これをいきなり伝送し、DSD信号のままDA変換する事が、業務分野では始まっております。 特にネット経由の通信機能を利用した、DSDによる有料Data配信が、最も現在は優れた音質を持つ筈です。(通信レートは1/2又は1/4に処理)

処がPC内部はAudio的な知見に基づく設計がまったく成されておらず、雑音・歪の巣窟・・
DSD信号がデジタル次元で汚されて、Audioと言うには程遠い・・さような現状を打破しようと、近年PCの存在を一切排除し、インターネット経由でHDDにダイレクトに記録し、任意の時間にこれを再生するAudio器機が開発されております。

この場合、DSD信号を受信する時にデジタル波形をクリーン化するDDコンバータの性能
Audio品質を左右する存在として、超重要となります。
拙宅では、デジタルデータと伝送クロックをバランス伝送する形式のDDコンバータを投入し
試験してみました。 結果はPC経由の為にNG判定でした。

PCを一切排除する形式の、上記改良型Audio装置は未だ試しておりませんが、DSD信号
(5.6448MHz)で送られて来た音楽ソースなら、現時点で望み得る最高性能であるかも知れません。 DSD信号を192kfs 24Bitにリミックスして有料音楽配信しておりますが、爺は邪道だと感じます。 
あくまでソース源であるDSD信号のまま最後アナログ変換に持ち込むべきでしょう。
一方で、信号の各種圧縮が行われており、これは個人的には一切NG判定です。
圧縮して情報が元に完全に復帰すると言われる、PCで採用されているFLAC方式もNGでした。 せめて非圧縮のWAVファイル方式を採用でしょうか・・
ついでに、地上波デジタルは全てAAC方式で圧縮された音声信号を採用しております。

爺は確認しておりませんが、下記のデジタル機器(DAコンバータ)が発売されている様です。
http://teac.jp/product/ud-501/
このような説明でご納得が行かれましたでしょうか?

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質問・疑問・感想―6)

特別講義3を拝読いたしました、ありがとうございます。 素子の許容電圧が下がって音響を再現しにくくなったとは、目から鱗が落ちた思いです。
自分は学生時代にギターを練習したので、倍音・共振など、数式は理解できませんが体感・聴感
として共感できます。同じことがオーディオ機器でも問題になるとは驚きです。

しかし職業はコンピューターを選んでしまったので、音響の録再生とは逆の方法論に進んでしまったようです。 デジタル回路は電圧を下げて高速・大容量を目指します。
5V-TTLから3Vへの変化は当然だと思っていました。 しかし電圧を下げればピーク音量も
制限されるのですね。

デジタルの初期は確かに5V-TTLが常識でした。 しかし半導体の製造プロセスの微細化が進み、結局電圧は1V駆動で動作するアナログ回路まで要求される始末です。
この心は、基準電圧は0.5Vで動作するアナログ回路を設計する事を要求します。
ご存じの通り、シリコン上でのダイオード1個の電圧は0.6Vです。・・ですから如何に矛盾した要求であるか理解出来ます。
もし仮に設計出来たとしても、ダイナミックレンジは約10.5dBは確実に劣化します。
(アナログ信号に於ける飽和電圧を上下で0.4Vと想定)
それでなくても、偽の24Bit性能が横行している業界実態です。(業務用の性能で20Bit。最近
民生器機の最高級品質でやっと20Bitが出現)

実際の演奏では打楽器のココ一発を再生できなければ、歯切れの悪い音になってしまいます。
鼓膜が破れても譲れない一発は忠実に再生して欲しく、それが難しいとは残念です。

聴感と回路技術に多くのノウハウをお持ちと推察します。次回を楽しみにしております。
余談ながら、自分はモーツァルトと現代音楽が好きで、多分、倍音の少ない再生を好みます。
楽器の倍音を把握・抑制するような回路はあり得るのでしょうか?
もちろん倍音特性が楽器の音色ですから、消し過ぎたら寂しい音になるでしょう。
でも、倍音抜きの正弦波で聴いたらどんな音なのだろうと思うこともあります。

ご存じの通り、倍音を正しく再生出来ないAudio装置はすでに商品とは申せません。
従って倍音を制御する回路も存在しません。
ご質問の趣旨を理解するに、おそらく再生装置としては、スピーカーからのリスニング距離を
1.5m以内に制限する形での、ニアフィールド再生装置が目的に叶うのではと推定します。

例えば、PC用のデスクトップで使うスピーカーは、ニアフィールドで使う事を想定した音質
設計になっております。 又カーオーディオ装置も、基本的には閉空間でのニアフィールド再生を基本とした、音質設計になっております。
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質問・疑問・感想―7)

リタイヤ爺先生第4回のレポート有難うございます。先生の解説に関して伺いたい事があります。
低域周波数はSP設置場所によって音量が変化します。 一般的に壁面が3面のコーナ設置では18dbUpと記憶しております。 オープンの床設置で6dbUpかと考えます。 Amp側で考慮する点はありますでしょうか? DFをコントロール(NF量)する、TCで補正?

スピーカー設置場所と音圧の関係
低音と称しましても、どの程度の周波数? まず用語の定義を正確に規定しないと、正しい結論が導き出せません。 更に定在波を考えた場合、部屋の聴く位置を定義する必要があります。
通常議論する範囲内で爺の考え方を記述してみます。

低音再生は、実に難しい問題を含んでおります。 それは周波数が低い場合は、音波の波長が極端に長いからです。(20Hz=17m 40Hz=8.5m 60Hz=5.6m 80Hz=4.2m)
部屋の長さが、長さ方向に3間(4.8m)取れる住宅は、都心では大層恵まれた環境でしょう。
スピーカーから聴取位置までの距離を考えると、80Hzを再生する場合これでも理屈上からは不足します。 

一般家庭では定在波込の低音を聞いて、良し悪しを判断している筈です。
従いまして、前方の壁面からスピーカーをどの程度離して配置するか? ここが重要ポイントとなります。 特に背面にバスレフポートがあるスピーカーは尚更でしょう。
フルレンジ再生でバスレフポートが無い場合は、フロントバッフル面から発射した音波が背面に
廻り込む波長を考えれば良いでしょう。

背面にバスレフポートが有る場合は、下記のボーカル帯域の下側に注意しながら、且つ重低音の
感じがベストになる位置を探り出す事になります。
例えばバッフル面から壁までの寸法が1.5mなら、226Hzにエネルギー反射の波面が乗ります。 この帯域はボーカルの最低音帯域ですから、中音がかぶる!かぶらない!の判断をする時の目安となります。 これを嫌うならスピーカー背面に乱反射を起こす反射板を置けば、壁面反射の影響は低減出来ます。

まったく同様な考え方で、左右壁面からバッフル上のスピーカセンター迄の寸法を検討する事に
なります。 何故1.5mの寸法を提示したか? ボーカル再生帯域の下の周波数が、部屋に配置
する上で破綻が来やすい帯域であり、この再生帯域で破綻を来さない寸法を選択する事を推奨したい為です。(部屋の形状その他で条件が違い、1.5mを中心に前後左右の最適点を探す)

次に床面からWoofer-Unitまでの高さを考えてみましょう。 
床はフローリング材としましょう。 では高さ方向の寸法は如何にあるべきか?
これも高いに越した事は無いですが、聴取位置の耳高さにTweeter-Unitのセンターを持ってく
る・・これが一般的です。 

我が家のALTEC-SPは同軸2-Way方式なので、Woofer(38cm)とTweeter(マルチセルラホーン)のセンター位置の高さが同じであり、76cmに設定してあります。
(バッフル板の高さは1.2m) 従って理屈では、上下方向は4.47kHzに波面が乗る筈です。
(ホーン形式ですから単純には、計算通りにはなりません)

例えば3-WayタイプのSPが有ったとしましょう。通常Wooferは一番下の位置に付いております。 床との間の寸法は如何にあるべきか? これは悩ましい問題です。
つまりフロアー型スピーカーと呼ばれるタイプは、この床との高さを考慮して音質設計が成されております。 

一般的には床からの低音反射を計算に入れて音質をチューニングします。
ブックシェルフ型スピーカーの高さは、聴取位置で耳の高さにTweeter-Unitが来る様に、SP
を乗せるスタンド高さを工夫されると良いでしょう。

woofer-Unitの場合は、一般的にSP外形寸法で、床から最低でも30cm以上離すと良いとされます。 床にWooferが接近しすぎると床面反射で音がかぶります。
実際は中音再生帯域が床面と干渉しない寸法を探る必要がありましょう。
通常波長が長い為、Wooferから離れた床面で反射が起こります。 

80Hzで4.2m先の床面で反射しますが、部屋の複雑な定在波との相互干渉で、**が正解と言える単純な話ではありません。
スピーカーのバッフル面から聴取位置までの寸法が4.2m取れる一般家庭は少ない筈です。
そこで判断基準は、自宅の聴取位置で前後に移動した時、中低音の逆相感が無くなるまで前進し
た位置が、正しい聴取位置
となります。

この逆相感が無くなる、前後方向の位置が正解で、更に前進すると今度は空間上のアンビエント成分が失われ、スピーカーからの直接放射音を大きく聴く事になります。
この状態で気がつくと思いますが、一般的には理屈上、部屋の長手方向寸法の略1/3の位置が一番多く定在波の影響を受ける位置となります。

これを避けてもっと後退すれば、楽器などの直接音が失われ、生生しい感じを失う。
しかしサラウンド感などは得られ易いし、低音感も得られ易い・・と言う事になります。
ダイレクトな低音感を得るのは、俗に言われるニアフィールド型スピーカーでありましょう。
サラウンド感など部屋の助けを一切排除する・・と言う考え方です。
その意味でパソコン用小型SPが、意外に音質が良い・・カーオーディオはこのニアフィールド
再生の典型
です。 空間上の時間軸制御の塊のような存在。

車載用Audio-Unitで予め、スピーカー搭載条件と車体空間に合わせ、専用に音場チューニングがされます。 このチューニングを専用に行う仕事分野が存在します。
・・大変に神経を使う仕事ジャンルです。(顧客の好みに完璧に合わせる必要があります)
但し聴取位置にマイクロフォンを置いて、AMP側で伝達特性を変化させるAudio器機を除きます。 映画鑑賞用のAV-AMPは、積極的にこの伝達時間を操作しており、爺としてはHi-Fi再生とは行き方が、少し違うのでは・・と考えております。

ついでに申せば、概ね3kHz以上の帯域ではフラッターエコーと呼ばれる反射音が大問題となります。 この音を確認する手法は、スピーカー配置位置で手を強く叩きます。
次に聴取位置で同様なチェックを行います。 この時、ある特定の高い周波数で間欠的な反射音が聞こえるなら、対策が必要です。
例えば、良く発生する場所の例として、前方天井の三角状の範囲です。 ここに布を斜めに貼る等の対策が有効的です。 このフラッターエコーは、音質には大きく悪影響を及ぼします。

音楽再生時、前方左右方向の音像定位の課題に対しては、爺の実験では、例えば音工房Z様で
制作された音響パネルを、スピーカーバッフル面に合わせて、スピーカー間に並べれば、前方の音場が左右面に対して正確に定位します。 

俗に言われるステージ感と呼ばれる、演奏ステージの左右方向と奥行方向の改善と、例えばボーカルで言えば、歌手の口が大きいとか小さいとか・・の評価項目となります。
従いまして、左右のスピーカー間に液晶TV等を配置すれば、画面で音響反射が起き、真に具合が悪いのです。 (AVシステムでは苦労するアイテムで、センターSPが必須)

・・と言う訳でして、お訪ねのAMP側でスピーカー配置に関して音場制御云々は、単純に音圧が(+**dB-UP)と言う単純な話でもありません。
既に第10回寄稿で解説しました如く、AMPのダンピングファクターで低音感は変化します。
この記述内容を精読下さい。

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質問・疑問・感想―8)

小職はMortion FeedbackのPC SystemでDigital音源に直接Feedbackをかけるなど有効と
考える事があります。 BOSE社など研究してそうな感じです。
 

このアイデアは、爺の知識レベルでは困難・・と考えます。
Motion Feedbackはスピーカーの前後振動を電圧として検出し、これを信号増幅前段に戻し
(NF)振動誤差分を低減するシステムです。

この時、NFをかける時高い周波数帯域までNFをかけると発振しますので、例えば数100Hz
以下の帯域のみ、振動板の移動スピードに比例して発電した電圧を、入力信号段に戻し加算します。これが、Motion Feedbackの基本原理です。

ここで、デジタル次元の加算による制御を考えてみましょう。
まず発電したDC電圧は、ADコンバータ―でデジタル信号に直す必要があります。
デジタル信号次元で元Dataに加算し、次にDAコンバータ―でアナログ信号に戻します。
これを電力増幅してスピーカーに加えます。

さてここから先が問題となります。つまりADしてDAし元のアナログ信号に戻す迄の時間を
考えます。通常AD又はDA動作をするには、変換方式にもよりますが、変換時間が必要です。
概ねこの時間はADとDAの合計で概ね数百μSec程度を必要とします
この変換時間をデジタル信号処理では、群遅延時間と申します。

さて、全てアナログ信号でMotion Feedbackをかけた場合、この遅延時間は存在しません。
例えば100Hzは10mSecですが、現在の瞬間エネルギーを変換して加算する迄にアナログ式は瞬時にNF制御が完了します。 しかしデジタル制御では例えば100μSec程度遅れ加算されます。
すると入力信号側では既に次の信号がDAコンバータ―で処理されており、入力の事象としては既に終わっており、これにNFをかけると、誤った信号に化けて出力されます。
従ってシステムの制御系としては、NFとして機能しない事になります。

つまり現在起きている事象をそのままFeedbackを掛ける事がアナログとデジタル混在の制御
システムでは成立しない事になります。
但し例えばオフセット制御のような、数秒単位でゆっくり制御する場合はデジタル系にアナログ系からFeedback制御をかける事は可能です。(既に実績もあります)

PC系で高速演算は可能ですが、AD・DAコンバータ―の変換スピードとアナログ信号の挙動
を完全にマッチさせる(時間軸を周波数方向で完全に合わす)事が可能なら、システムは成立しましょう。 爺の知る限り、さような制御は聴いた事がありません。 
もし実現出来るなら、MFB制御条件を自由に変えられる事が可能でしょうが、残念ながら現在の処では、実現しておりません。 

最近思うのですがDigital Ampが出現して、出力不足の問題は解決したのではと考えます。
伝送系が洗練されていないため多少問題は在りますがひずみ率、ノイズ、周波数特性どれをとっても優れています。 小職もKT88pp、Altek333、SansuiなどのAmpを所有していますが、先入観なしで聴くとTripath2020/2050/4100など結構な音を出します。
PhilipsのAD12100+TWとゆう古いSPがあるのですが4100でドライブすると最新のStagio Monitor顔負けで鳴ります。 レジェンドSPと高出力Digital Amp相性が良いですよ!
100Wx2が2万円で作成出来ます。 
Ampの音質は議論の余地がありますが出力に関してはDigital Ampで解決と考えるしだいです。

確かに仰せの通り、600W程度のAMPでもDigital-AMPなら小さい体積でコンパクト設計が可能です。(爺もこのAMPを設計しました)
ドライブ能力はアナログ式AMPの比では無く、大口径スピーカー&低能率でも強力にドライブ出来る事を確認しております。
しかしレジェンドSPがマッチするか?これは確かめておりませんが、Digital-AMPの小パワー
例えば20Wもあれば十分でしょうね・・音質も一昔から言えば大幅に改善されております。
既に解説致しました通り、これはPWM-AMPですから厳密にはアナログ式AMPの一種だと
申せます。

最近Rolling Stoneのドームコンサートに妻と行ったのですが音の良さにビックリPAの進歩に
驚きました、以前U2のコンサート時(10年以上前)音の悪さに辟易しましたが今回は大満足
です。

最近のPAシステムは長足の進歩を遂げております。 特にアリーナの如くの巨大閉空間に
PAするのは難しいのですが、信号のデジタル化が進み、どの聴取位置で聴いても会場全域に渡
り、音波伝搬上の遅延時間を制御して、均一なPAが出来る様になりました。
ステージ前方から後の末端まで、広い場合150m程度はありましょう。

この場合は、DSPで処理し一番遠い席に対して最初に音を出し、遅れた信号で前方席にPAを
します。 つまり音波の伝搬時間を勘案して、一番伝搬時間がかかる席を先にPAし、ステージ
側に近いスピーカーからは若干遅く再生する事で、最後列から届く音波と合成してトータルで
会場全般を均一な音場となるように制御します。
アリーナの如き広さになりますと、最長100mSec単位で制御します。
(ステージ上のミュージシャン用トークバックスピーカーは、遅延はかけません。遅延をかけると演奏不可能となる故・最近はヘッドフォーン使用が多くなりました。)

この場合はデジタル処理の群遅延時間を上手く利用している訳です。
つまり遅くする制御は簡単に出来る訳です。 
純アナログ式のPAではエコーがかかり、広い会場でのコンサートは困難な事が一般的でした。

更にパワーAMPをPA用SP内部に組み込む形式が大半を占め、信頼性・音質共に大きく
進歩しております。
ここでもD級AMPが小型化・高効率化して信頼性が大きく向上し貢献しております。

思うのですが洗練されたアナログ技術でDigital AmpをRe Optimizeすると超ハイC/PのAmp
ができるのではと考えます。 入力系部品、出力LPF、電源、PCB等ETC、既に作成メーカが
ありそうです。 Amp諸問題をAll Mightyにとは行きませんが80%近く解決しそうな感じを抱いております。

既に解説しました通り、現在の日本は爺世代のアナログ技術屋の如く、システム全般に渡って
設計しハンドリング出来る者が、ほんとうに少なくなっております。
一部音響専門メーカーに若干残っている筈ですが、高齢化で何処もリストラの対象となっている
筈です。 先だって関東のP社音響部門が身売りしましたね。
理屈の上では仰せの通りですが、肝心要のAudio用半導体を供給するメーカーが、日本から
絶滅したと聞きます。 爺の関係した半導体会社でも、この分野から事業撤退したと聞きます。
これからは、海外半導体メーカーに頼る以外に、製品化はおぼつかないと見えます。

海外半導体メーカーには、優れたアナログ技術者が現役で活躍しており、海外からの素子提供に
期待するしか方法が無いのが現状です。 さような次第で、洗練されたD級AMPの登場には
若干時間が必要だと感じております。 ある読者様からお問い合わせがありましたが、5.6448
MHzのDSD信号をいきなりPWM変換して電力変換出来ないか?がありましたが、解説しま
した通り、酸化ガリウムによるデバイスであれば実現出来ると考えます。

シリコン系では概ね800kHzが大電力SWの限界ですが、ガリウム系は8MHz程度でも動作す
る筈ですので、期待してお待ちください。 今回ご紹介しましたパナソニック社のD級AMPが、
注目点でしょう。(詳細??)

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質問・疑問・感想―9)

大変興味深いけれどもなかなか聞く機会のないお話でした。有り難うございます。
只、一つだけ異論があります。
音質を考えれば入力ボリュームは最大にしておくベキだとのご意見は、全く正しい。
正しいけれど、ある程度のSN比を持ったアンプで90db以下の能率の悪いスピーカーをならす前提での場合に限られると思います。
SN比が一桁悪いアンプや100dbの能率を超えるスピーカーを古い時代の遺物として相手にしないのは正しい判断ではあります。
そうした健全な判断の枠外にも良い音の可能性がある所もaudioの楽しさだと思います。

ご意見ありがとうございます。
パワーAMPの入力段で音量を調整する事は、決して悪い事では無いとのご意見であります。
S/Nが一桁悪いAMP・・これは真空管を想定されているのでしょうか?
パワーAMP段で音量を調節する典型的な例を考えてみましょう。

これは、マルチチャンネル再生方式を考えると分かり易いでしょう。
例えば、中低音領域の最大出力電力に見合う増幅度があったとします。
これに対し、高音用スピーカーの特に高感度型と呼ばれる、ホーン形式の場合は、音響変換効率
が最大で15dBも高い事があります。

チャンネルデバイダ―で中低音と高音を分ける処理をした後に、高音部は能率が高い分、パワー
AMPに入力する電圧を低減する必要があります。 通常その機能は、製品ベースで考えると
チャンネルデバイダ―内部に、機能として仕込まれております。 
これは何れもパワーAMPに同じ製品を使ったと仮定した場合です。又違うパワー値の製品を使った場合でも、上記低音用AMPと高音専用AMPでは、伝達線路上の増幅度を変更する必要があります。
以上の意味からは、製品ベースではパワーAMP側に装備されたボリュームを事実上操作している事になります。・・上記の意味に於いて、パワーAMP側のボリューム操作は必須となります。

ここで寄稿しました一文を、再度紹介させて頂きます。 記述しますと・・
拙宅でもマルチチャンネル再生をしております。 38cmのWooferに対してマルチセルラ
ホーン型Tweeterの音響変換効率は概ね+10dB高く設計されております。
この感度の落差を埋める手段として、Tweeter側の駆動電力は8Wとし、Woofer側AMPの
電力は30Wと落差を持たせてあります。

つまりAMPの増幅度はWoofer側が大きく、Tweeter側では小さくて済みます。
しかし、各SP-Unit分に於ける能率落差を何処かで完全に合致させる必要があります。
通常は、上記の如くパワーAMP側で調整しますが、拙宅ではTweeter側AMPの増幅度を減らし、両パワーAMPの入力ボリュームが最大ポジションで、完全にフラットになる様に、感度を
工夫をしております。

既に寄稿した文章は、Tweeter側の増幅度を減らして再生感度を合わせる事を推奨しますと
記述させて頂きました。 AMPを自作する事が可能であれば、マスターボリュームの操作だけで、システムが運用可能となります。 もしチャンネルデバイダ―を含み市販製品でシステムを組む場合は、仰せの如くの対応となりましょう。

ついでに、上記Tweeter側の感度合わせには、SP-Unitの入力端子に電力抵抗による減衰器
(アッテネータ)を挿入する手段があります。
しかしせっかくマルチチャンネル再生する場合は、この手法は音質改善に対して逆の作用を及ぼします。 爺はお薦め出来ません。

プリアンプのボリュウムだけに操作を限る事が理想ではありますが、雑音を押さえる為には、何段かの増幅の内それぞれでどう利得を稼ぐか、稼がないかのやりくりもaudioの楽しさの内だと思います。ノスタルジーと良い音の区別が付かない人間の妄言と切り捨てていただいても勿論結構です。

既に解説致しました通り、システム設計時に於けるゲイン配分を決める、レベルダイヤグラムの解説項でご理解頂けたと思います。
上記のご意見はこのレベルダイヤグラムをご自分で差配すると言う次元のお話です。
最近開発されましたAudio器機は、国際的には信号の器機間伝送に関してかなり厳密に規格で
縛りがあります。 つまり一般的な顧客側でのハンドルは自由にはならない理屈です。
当然この縛りから逃れるには、それなりの知識と自分でシステムを自由に構築できる技術力が
必要となります。
このゲインを稼ぐとか稼がない・・と言うのはAudioマニアの楽しみの一つでありましょう。
決してノスタルジーでも妄言でもない・・と爺は考えます。
これこそが、自分の理想とする音を求めて試行錯誤する醍醐味であると想う次第です。

プリAMP段で複数段に渡りボリュームを投入する考え方は、確かに古い考え方であるかも知れ
ません。
別途S/Nの演算手法と、改善手法を解説致しますが、プリAMP段では1ヶ所にマスター
ボリュームを配置する事で十分なS/Nが確保できる時代になっております。 更に加えますと、回路設計の理屈上はボリュームMax位置が実は一番S/Nが稼げる状態なのです。
そしてそのボリュームMax位置に見合う、後段の増幅度を落とす事で、S/N性能を最適化する
と言う考え方が、現代AMPの設計では主流となっております。

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質問・疑問・感想―10)

一読しますと 1980年頃の技術解説に止まっている様にお見受けするのですが、如何でしょう
か? 小生の拙い知識と経験から何点か疑問を述べさせてください。
素子の裸特性につきましては、2000年代以降の半導体素子は飛躍的に進歩し、優れた高周波特性を持つ素子が実用化されております。
残念ながら、その頃には日本のマス・コンシューマー市場でのオーディオ機器開発は廃れて来ており、それらを利用したこれといった新回路・新製品が出ずに終息して行きましたが。

爺は退職前の約8年間は、半導体開発分野に身を置いておりました。
その経験で話させて頂きますと、真空管1個とディスクリートトランジスタ1個次元で一対比較した場合、半導体が優れると言う情報を持っておりません。(Audio増幅帯域)

確かにプロセス技術が進展しましたが、真空管と同じ次元で比較すれば半導体は6個程度(NF有り)でやっと真空管1個(NFなし)と同等の物理的性能が得られると理解しております。
この理解が間違っておりますなら、具体的Dataでご教授頂ければ真に幸甚です。
勉強させて頂きますので宜しくお願い致します。
(増幅帯域20Hz~100kHzで増幅度60dBを実現する素子、但しICは除外します。)

その素子の裸特性の評価につきましても、スルーレイトの概念が説明されておらず、その差が音質に多大な影響を与える事は加えた方が宜しい思うのですが、如何でしょうか? 特に、真空管でのスルーレイト改善には限界が有り、ハイスピードAMPという様なものは出来なかった様に覚えております。
特に、方形波を組み合わせた入力波形に対する歪率での評価方法が提案されてからは、それが明確になったかと。 その様な時代の過渡期の産物として、半導体と真空管のハイブリットAMP等が有った様に記憶しております。

真空管ANPをAudio用途の次元で見れば、ハイスルーレートを求めるのは、は確かに無理な
相談ですね。 
確かにハイ スルーレイト競争をした時代が有ったと記憶します。
爺の体験では、スルーレイトを極度に追及しても決定的な評価Upに繋がらなかった実績があります。 つまり同じ半導体式AMP同志で比べてみると、元々スルーレイトは良い事が普通であり、この物理特性のみを改善しても、一般市場では音質向上が高評価に繋がる事例が少なく、
ハイ スルーレイト特性に見合う電源装置が音質を決定的に左右する・・つまり合わせ技
世界であったと記憶します。(給電源インピーダンス低減策)

加えて、SP負荷に至る配線リード長との絡みで、このスルーレイトを云々したと記憶します。
つまり方形波云々は、AMP動作安定度に深く関与し、その評価にノウハウがありました。
(ダイナミック歪など詳細記述は、ここでは遠慮させて頂きます)
確かに真空管式と半導体式との差を云々すれば、方式差から来るスピード差は存在し、それが
音質上で特徴を決定付ける要素になっております。

誤解があるといけませんので追記させて頂きます。 言わずものが・・ですが、真空管AMP
全盛時代は、効率の良いスピーカーと組み合わせて全体音質を設計するのが、ごく普通であり、この組み合わせで全システムが成立しております。
一方半導体AMPの時代は、低能率スピーカーをハイパワーで強引にドライブ可能な事が、システム上の設計コンセプトです。

故に時代考証の見地から、低能率のスピーカーを低スルーレイト特性の真空管AMPで駆動し、ハイ スルーレイトの半導体式AMPとの比較で、その優劣を云々するのは、そもそも無理があると考えます。
高能率スピーカーを真空管で駆動した場合、その反応スピードはその大半をスピーカーが担っております。 能率100dBを超えるスピーカーを真空管でドライブした音質は、半導体式AMP
で駆動する音質と違って、得難い優れた音色を持っており、大勢のファンが存在します。

一方で、高能率スピーカーを半導体式のハイ スルーレイトAMPで駆動すれば、昔の音色とは異なるのは、しごく当然な成り行きでありましょう。(多大な影響・・云々は別にして)
但しこの場合、重低音の音色に対して高音域との音色上のバランスが整わず、苦しんでいるのが現実の姿です。

それやこれやで・・爺としては高能率スピーカーと申しても程度問題があり、能率90~94dB程度のスピーカーを、ハイ スルーレイト・小パワーの半導体式AMPで再生する事が、次世代では
主流になって欲しいと願う者です。
当然このスピーカーに対して、元々相性が良い真空管で鳴らすのも趣味の世界を広げると言う
意味で、大変好ましいのではなかろうか・・と考えます。

音色の決定的云々に拘るなら、Non-NF又は少ないNF量でハイゲインを持つ増幅素子との差
基本音質差を生む・・
これが物理特性上で音色に決定的なアドバンテージを持っている!
これが、爺が体験した世界であります。 ですから、ハイ スルーレイト云々と申しても、増幅回路と電源回路等周辺を含む総合設計(実装含む)が音質を大きく左右する事が多く、回路設計だけで云々出来ない事項であった。 ダイナミック歪の検討も、その中の一検討項目であった。
・・これが体験です。

また、真空管のAMPについても、5極管(ビーム管も)のプッシュプルとUV211のシングルでは、かなりの音質の違いが有る事も触れなければ、真空管と半導体の差を技術的に論じ切れないのではと思うのですが、如何なものでしょうか?

 ご意見ありがとうございます。 拙宅にも211のA級シングルAMPがあります。(現在休止)以下は爺の体験談です。 ご参考までに・・
真空管式のプッシュプルAMPとシングルA級AMPの音色差は、歴然と感じる事が出来ます。
211に代表されるハイパワー3極管の、地を這うような朗朗と歌う重低音は、同じ真空管方式でも大変魅力的な存在でありましょう。(5極管では決して出せない世界だと認識しております)

これは巨大なコアー容量を持つ出力トランスが、大きく基本音質に影響を与えております。
シングルA級AMPで16W程度は軽く出せます。 このAMPはプレート電圧が概ね1000V
必要であり、ハイクラスのマニアでないと、危険すぎてハンドル困難な世界です。

これと現代のD級AMPとの音色差は以下の通りです。
600WクラスのパワーFETであっても、駆動電圧はピーク電圧で100Vクラスを使います。
当然そこに流れる電流は、圧倒的に半導体の方が上回ります。
既に述べました通り、高周波&巨大電流のリニアリティーを正確に制御する事は、至難の技となります。 その意味では、D級AMPは従来のアナログ式AMPとは違ったアプローチが必要であり、中高音部の音質改善にも独特の手法を必要としております。

D級AMPは、低能率のSPを完全駆動する能力に関しては、真空管の比ではありません。
つまり、重低音の切れ・反応スピードに於いて得難い魅力を備えております。
ある意味では現代風の音色と表現出来ます。技術的には高効率SPとの組み合わせが課題です。
即ち、軽い振動板=高効率・・ですが、重低音感を表現する事が苦手な傾向となります。
更にSiC GaN系素子は、高効率化に伴い、もう一段上の次元で音質改善の余地があります。

片や重厚長大の物量投入路線から繰り出される音質と、肩や軽薄短小の極致であるD級AMPとの比較となります。(但しD級AMPでも電源は重厚長大がHi-Fi再生の世界は必要ですが)
爺は、この重低音感云々は全て電源の物量に帰結する(低Rs値)と判断しております。

6CA7に代表される真空管とKT-88に代表されるビーム管AMPを使ったプッシュプルAMPとの間にも、同じく音質差はあります。 市場ではビーム管は3極真空管に近い音色を持ち、5極真空管でも3結仕様では同じく3極真空管に近い音色を持つと評価されております。

昔から音質の3極管・パワーの5極管と言われておりますが、結局これは真空管式AMPでも、出力抵抗の絶対値に直結する形で、音質が変化しております。
2A3の三極管を使ったプッシュプルAMPのファンが相当多く市場に存在しますが、音色は
シングルA級に軍配が上がる様です。 

やはり出力抵抗が小さい3極管が音質上は有利ですが、パワーが取れない欠点があります。ここは高効率SPと組み合わせる以外にシステムとして成立しないでしょう。 その意味で300Bの3極管シングルAMPは広くファンが存在します。

同じ型番の真空管でも、メーカー間による音質差は、かなりはっきりと出て参ります。 
KT-88でもメーカーが変わると音質は激変しますが、これは使っている電極構造とその材質の差であると申せましょう。 詳細は、深く知る立場になく、突っ込まれましても講釈は出来ませんので、ご了承下さい。

拙宅のKT-88を使ったプッシュプルAMPのメーカー間格差は、Golden-Dragon製は全体的な
音色は、低音から高音までバランスが取れて聞き易く、片やJJ製はエネルギーバランスが高音
側に片寄る傾向となりました。 拙宅のALTECには、Dragon製がベストバランスでしたが、
選択するスピーカーの音色によっては、ドライブ球を変更するのも良い選択と考えます。

技術的な要素としては、プッシュプル方式はハム雑音を打ち消す事が出来ますので、制作は楽だ
と感じます。 一方で300Bの如くの直熱管の場合、ハム雑音を含むS/Nを稼ぐ事が難しいと感じます。 拙宅の例では、A級シングルAMPでは終段のみDC点火しておりますが、
ハムバランサーを付けても、僅かですが残留ノイズにハム成分が残ります。 
(Tweeterドライブ用AMPですから、まったく無視出来ますが・・)

A級シングルAMPでは、信号増幅段に交流点火を用いる場合、特に入力信号増幅段のカソードとヒーター間の絶縁が、特に重要となります。
もし、ハム雑音が取り切れない場合は、初段の増幅球を交換して試験する事をお薦めします。
真空管販売店に頼めば、選別した品物を入手する事も可能です。 是非お試し下さい。

最後に電力段の交流点火方式と直流点火方式で音色が変わる・・と申すマニアの方が沢山居りますが、爺は安直にDC点火でハム雑音低減に勤しんでおります。(笑)
プッシュプル増幅の場合は、交流点火でもまったく問題無く高S/N化が可能です。

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質問・疑問・感想―11)
レポートの8ページのAC電源の共通インピーダンスの影響ですが、影響を受けないようなAMP、
CDプレーヤーの設計は出来ないですか?

これは電機理論上不可能なご相談です。
但し、軽減する為の努力はしており、システム設計とは全編この共通インピーダンスとの壮絶な
戦い
なのです。 初心技術者とベテラン技術屋との差が如実に出る世界です。

次の質問ですが、トロイダルコアのトランスはAC電源の磁気抵抗が少ない分その影響を受け易
いと思いますが、何故音が良くなるのか?です。共通インピーダンスの話と齟齬があるのでは。

磁気抵抗が少ない分、その影響を受け易い云々と表現されておりますが、その影響とは何
意味するのか?  共通インピーダンスと齟齬があると理解された、その根本が分からないので
回答に窮しております。 

ここで言う磁気抵抗が少ない分・・の意味は、電気的な振る舞いで考えますと、共通インピーダ

ンスが小さいと同じ意味となります。
即ち、インピーダンスが小さいので大電流が流れた場合、その電圧変化が小さくなり、増幅器へ
の給電を考えた場合、音質改善効果としては大変優れた特性を持つと理解すべきですが・・
その影響の意味が、一次側の100V系電源電圧の変動と捕えておられるなら、これはトロイダル
でも一般のEI型コアーでもまったく同じ事です。

トロイダル式コアーで考えた場合、一次側に巻かれる巻線仕様は、磁気回路が優れている分だけ
EI型コアーに比べて、電気的には有利な巻線仕様となります。
(太い電線が使え、共通インピーダンスを小さく出来る)
結論は、トロイダル形式の変圧器のRs分が低下するので、高音質化設計が可能となります。
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質問・疑問・感想―12)

スピーカー・タンノイスターリングHE、アンプ・デノンPMA1500で、シングルワイヤリング
で聴いていました。
スピーカーもアンプもバイワイヤリング端子が付いていますので、思い立ってスピーカーケーブ
ルZONOTONE2200を高域用にバイワイヤリング接続をしてみました(低域用は従来使用して
いたヴァンデンハル。こちらの方が線は太いので。)。

その結果、これまで女性ボーカルがソプラノでもアルトっぽく聞こえていたのが改善され、
ピアノの高域やシンバルの音がきらめくようになりました。
タンノイの個性と勘違いしていた中音域の重さ、音の濁りがとれ、全体に透明感が増し、
これまでより音量を上げても抵抗なく聴けるようになりました。こんなに廉価なアンプでも、
バイワイヤリング接続は大きな効果があることを初めて知りました。これは、どういうことなの
でしょうか?

スピーカーコードの解説の寄稿で詳しく述べました通り、これも共通インピーダンス低減対策
の一環です。 即ち、1本の電線上に低音と高音が同時に流れていたのを止めて、低音と高音の電流ルートを分けたのですから、各々専用の音楽信号を流す対策を施した訳です。
つまり、低音の大電流が流れている上に、小さいエネルギー成分が沢山乗っている高音成分を
1本のケーブルで伝送すると、一般的に高音側のエネルギーが影響を受けます。

つまり低音信号は大電流が流れます。すると伝送線路上で負荷電流量の変化に応じて、電圧降下
の変動が起こり、高音側の電流は少ない訳ですから、高音側が低音側のエネルギーで変化
(混変調)を起こし、音質劣化を招く理屈です。 ご質問にはケーブル長に対して情報がありま
せんが、当然長くなれば、なる程影響が大きくなります。
(線径も関係しますが第8回寄稿の図11-1を参照して下さい)爺は、AMPとスピーカー間の
ケーブル長は1.5m程度を推奨しております。

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爺の喫茶室 運営についての お知らせ!
リタイヤ爺のつぶやきは、爺が個人的に運営する空間に、装いを改め変更させて頂きました。
もっと自由に意見表明が可能な空間としたく、爺の喫茶室として分離独立し、再スタート
をさせて頂きました。 もっと自由に意見を交換したい、との思いで、このような形にさせて頂
きました。 読者の方が自由にこの喫茶室に出入り出来る形をご用意しました。
ご活用頂ければ幸甚です。 但し下記ルールは守って頂きたく宜しくお願い致します。
当該ファイルを開いた時点で、下記ルールにご賛同頂いたとして扱わせて頂きます。
(記述内容は予告なく変更させて頂きます)

勝手ながらネットを共有する全員での、相互対話形式とはぜず、爺との対話と言う形に、限定
させて頂きます。 
皆様のお声を拝聴させて頂き、爺と共に考える場に成長出来れば幸甚です。
読者様が書き込まれたご意見の、公開可否を予め問う形で運営させて頂きます。
頂戴致しましたご意見は、公開可であれば、爺の責任範囲で公開させて頂きます。
爺に対する書き込みは、メイルアドレスとご本人の氏名を記入して下さい。

書き込まれた個人情報と、書き込み情報の運用は、法的に保護されます。
このネット上で語り合う情報・写真類は、許可無く転載不可とします。
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記述された内容の著作権と著作責任は、爺を含む書き込んだ著作者ご本人に全て帰属します
これによる社会的利害は、爺は責を負わず、全て自己責任と致します。
個人的な利害関係の内容は扱わず、且つ他者(個人)への誹謗中傷厳禁と致します
意見の相違は自由に書き込んでも問題ありませんが、表現は節度(社会常識)を要求します。

運用範囲は、技術的な質問・政治・経済・企業経営・公的機関の各問題・社会世相万般・思想哲
学とします。(過去分の執筆内容もご覧いただけます)
互いに顔の見える形での、心の交流の場が出来れば・・と願っております。
記述内容は今までと大差ありません。 コーヒー等 飲み物片手に 気楽におち寄り下さい。

今年も先哲の教えに学び、この難しい現代を如何に有意義に過ごすか??・・を思索する参考

資料として頂ければ、真に幸甚です。

 

爺の喫茶室へのアクセス
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http://ziinokissa.jugem.jp/


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