【Z・特別講義14】
[ 給電エネルギーの電流リニアリティー改善策 ]
第14回 寄稿
前々回の寄稿からエネルギーの供給と言う視点から解説を試みておりますが、前回は整流回路を
取り上げて解説をしてみました。 今回もその続きを解説してみようと考えます。
この平滑回路の特性を更に深堀して考えてみましょう。 そして、前回の宿題である実装手法と
音質の関連を解説します。 恒例によりまずご質問内容への解説から・・
●スピーカーの能率と、駆動パワーに関する ご質問 ●
スピーカーの能率の高低による、制動力と音の違いです。 常恒、高能率のUnitに、低出力の
アンプをつないだ方が、音が良いと信じてきましたが、立ち上がり立下りのコントロールは、
低能率SP+高出力アンプより高能率SP+低出力アンプの組み合わせが優ると思えるのです
が、科学的に説明がうまく判りません。
爺の独断と偏見で・・
1) 高能率を前提で設計された、往年の制動特性を持つSP程、良く制動がかかるので、制動が苦手 な真空管AMP+低出力ドライブでも、音質は良くマッチする。
振動板が軽く、磁石が強力故に重低音は苦手。解決策はSPの大口径化、でも限界がある。
2) 増幅器の物理特性が優れた真空管でドライブ
特に高効率フルレンジ用スピーカーを8W程度で鳴らす場合、得難い魅力がある。
その代表例が往年の銘機であるP-610Aと思う。 低音は決して欲張ってはいけない・・。
ALTECの高効率SPをマルチチャンネル化し、高域は8W・中低音は30Wの真空管AMP
で鳴らす手法もある。(パッシブ型ネットワークの排除)・・中低音は口径=38cm。
ここで重低音を欲張るなら、38cm-Wooferを追加し、中高音はネットワークで調整。
3) 現代の低能率SPは、半導体AMPで強力にドライブする事を前提として設計されており、
これを小出力の真空管AMPでドライブすれば、締まりのあるハイスピードの低音感は得ら
れない。 しかし真空管の素質である、中高音の音質と併せて、良い!と判断をしている
事が一般的。・・この音質を良としないAudioマニアの方が、数多く存在。
4)低能率SP+ハイパワーAMPの組み合わせは、Woofer領域に味があると思う。
故は、現代型低能率SPの、(重い振動板+非力な磁石)を、ハイパワー駆動すると芯の
ある重低音が得られる。 非力な磁石は、ハイパワーAMPのDF値で補うので、重低音
再生に良くマッチする。 重い振動板=インピーダンス低下に直結。
(重低音=低インピーダンス=ハイパワーが得られる・・との方程式(音質)は完璧に繋がる)
5)同じ高効率SPでも、往年の設計品と現代品では、振動板材料に長足の進歩があり、故に
現代流高効率SP+中パワーAMPの組み合わせでは、真空管時代では想像も出来なかった
高次元の音質領域に到達できる筈。・・が爺の見立て。
上記を検討する為に、物理的な前提条件の整理をしておきましょう。
高能率スピーカーの定義
(1)高能率と言っても、スタジオモニターの106dB次元から往年の映画館で使われた100dB
次元から家庭用途の90dB次元まで巾広く、何処に的を絞るかで内容が変わります。
(2)高能率SPの再生帯域について
フルレンジ再生型Unitで考えるのか、2-Way以上のシステムで考えるのか?を予め
決める必要があります。 これは変換能率を決める、基本周波数をどの帯域で云々するか
に係ります。
AMP出力の定義
(1) 8W程度までの真空管ドライブAMPまでを低出力とするのか?
(2) ハイパワーとは・・100W-AMPを指して言うのか? それでは中出力とは?
筆者の独断と偏見で・・
低能率SPとは、80dB~88dB程度のジャンルのSPであるとします。
高効率の定義は、ここでは再生条件に応じて変化する・・としましょう。
低出力AMPとは、3極真空管のA級シングル動作と仮定します。 (8Wクラスまで)
真空管でもプッシュプル動作する30Wクラスは、ハイパワーだと定義します。
半導体式の低出力AMPは、ここでは対象とせず、ハイパワーは100W以上だとしましょう。
ご質問内容の検討
質問者の方が抱く質問内容は、ここでは一端保留にし、以下解説してみます。
フルレンジ再生Unitで、変換能率は90dB以上を想定しましょう。 概ね業界水準は、400Hz
付近のインピーダンス値に於ける性能評価でしょう。 この再生Unitなら、低音再生限界は
せいぜい良くて、80Hz程度が限界でしょう。(昔の6.5インチタイプ) かつて可搬型小型
スタジオモニターとしても使われたスピーカーを想定します。
その一方で、口径30cm以上で 2-Way以上の、再生帯域が分かれるSPシステムを想定します。
Unitの能率表現が厄介ですが、仮に98dB以上の能力を有する場合、低音再生限界は、良くて
も(箱で工夫しても)40Hz程度でしょう。
ご質問に有る、上記高能率SPの、立ち上り・立下り性能云々は、物理的に何に依存するのか?
基本的には、SPの磁力の強さとAMPのDFに全て帰着します。
真空管AMPは、まったく非力であり、既に解説しました如く低音感を決めるダンピングファクターは、3~6程度です。 つまり、制御能力が大きく劣ります。
故に、SP側の設計スペックで決まる、制動特性の音を聞いている筈です。
音質的には真空管の物理特性で、NF量が少ない時の音質で評価されております。
次に、上記高効率のSPを半導体AMPで駆動すれば・・如何なる現象となる?
この場合の立ち上がり下がり特性は、SP側の素の特性に加え、更にAMP側の駆動能力の相乗
効果となります。 つまり、ダンピングファクターが100程度の能力で、元々制動能力の
高い、往年の高効率SPを駆動する訳ですから、ますます締まった質感となるは必定です。
DFの値が6以下の値を想定して設計された、往年の高効率SPを、現代の半導体式AMPで駆動
した場合、往年のSP設計者が意図する音質とは違っている筈です。
故は、SPの音質評価時を、真空管式AMPの駆動を前提とし、設計&評価をしていたからです。
半導体AMPの場合、中高音の音質はNFがたっぷりかかった音質を聞いている事になります。
現代型SPで、高能率型と言われるシステムは、開発に半導体式AMPを使って評価をしている
筈です。 故に同じ高効率SPと申しましても、真空管時代に開発されたSP-Unitとは分けて
考えるべきでしょう。(SP設計の前提条件が、時代により異なる)
AMPのパワー出力と、SP-Unitの能率を同時に考える場合、重低音域と中高音域では、同一
次元で捕える事が出来ない・・と言う設計上の問題があります。 音響エネルギー変換の理屈
からは、重低音は元々ハイパワーを必要とし、高音域ではハイパワーは必要としないと言う
基本をまず押さえた上で考える必要があります。 (自然界の音場空間上のエネルギーバランス
の例、第3回の図2-1を参照下さい。)
ご質問内容の、立ち上がり・立下りのコントロール云々は、正に中低音域の音質制御問題だと
解釈出来ます。 (真空管AMPと、半導体AMPの音質差は、まず横に置いておき・・)
第10回寄稿の、SPの臨界制動と、駆動AMPのDFとの関係性を解説しましたが、これに加え
て、SPの変換能率とAMPの出力パワーとの関係が加わる事となります。
ここでは、分かり易い例として、重低音を再生するWooferを例に取りご説明します。
再生帯域は20Hz~80Hzの領域です。 この帯域に於けるドライブは、必然的にハイパワーが
必要となります。 真空管AMPと申しても、30W以上を使い必要音圧を発生させる事が必要
となります。 では、SPーUnitを設計する上からの要件を考えてみましょう。
(1) 振動板は激しい前後運動に耐える必要があり、機械的には高剛性である事が必須です。
(2) 高剛性で且つ高能率変換を目指すので、軽い振動板が同時に必要です。
(3) 激しい前後運動を、瞬時に起動停止させる設計として、強い磁石が必要になります。
(4) 変換効率の評価周波数は、最低共振周波数が30Hzなら、定格インピーダンスの表現
は60Hz~80Hz付近の値となり、この帯域での変換効率の表現となりましょう。
(5) Unit設計は上記のバランスの上に成立します。
実は・・上記(1)と(2)は、まったく矛盾する関係です。 口径38cm Wooferを考えると、
高剛性を求めると必然的に振動板の重量は増加します。 重量増加は効率低下を招き、これを
カバーするには、強烈な磁力が必要です。 強い磁石と申しましても、限界が存在します。
通常フェライト磁石を使いますが、往年の設計ではアルニコ磁石が使えました。
近年は地球資源の関係(コバルトの入手難)でコストアップとなり、採用困難となりました。
ネオジウム磁石もありますが、民生用Wooferに使うには、あまりにも高価で躊躇する価格と
なりましょう。 それや・これやで、全てバランスの問題(〇〇の程度)となります。
第10回寄稿で解説しました如く、SP駆動のDF値と音質の関係です。
http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/9722dynamicspeaker.pdf から引用し
ました通り、DF=3とDF=100では、80Hz以下の周波数帯域で、SPの制動特性に起因する
音質差が発生します。
特に、重低音再生用Woofer-Unitは、過制動を前提として設計しないと、製品として成立しま
せん。 ( fo付近の振動を抑え、寿命を延ばす設計。)
ALTECの38cm-Woofer高効率SPを例に取り、1950年代と1980年代を比較しましょう。
最低共振周波数 許容入力 再生帯域限界 音圧
34Hz 80W 50Hz 97dB ・・業務用 半導体初期時代
25Hz 35W 20Hz 101dB ・・民生用 真空管駆動時代
このDataから何が読める?
foと許容入力と音圧の関係で比較すれば、許容入力を上げる設計では、foを上げ、音圧を下げ
る。 逆に許容入力を下げれば、foを下げ・音圧を上げる設計が出来る。
これがSP設計の基本的な要諦です。
物理的には、foを下げる事と、許容入力を上げ事は、互いに矛盾します。(設計困難な領域)
これを解決するには?振動板重量を更に増し(高剛性化)、音圧(能率)を下げれば可能と読め
ます。 その音圧犠牲分は、許容入力を上げる事で回収し、これを音質向上分に振り向ける。
即ち、真空管式30W-AMPで重低音感を得る為には、効率を上げた101dB次元の効率を有する
SPを投入する必要があり、その代り許容入力の増大は取れない。
低音感としては、fo=25Hzでも、振動板が軽い故に、満足行く重低音感が得難い。
半導体AMPの初期時代は、能率をほどほどに下げて、foを上げ許容入力を上げた。
更にAMP側がハイパワー化する時代になったので、更に能率を下げ、振動板重量を上げ剛性を
高め(foを下げ)、許容入力を上げて、重低音感の改善につなげた・・。
【振動板重量】+【剛性】+【能率(磁力)】+【AMPのDF】+【出力パワー】の、絶妙な
全体バランスを勘案し、音質を作り込む必要があり、これこそが現代流の、最高音質を表現する
設計の要だと考えます。・・AMPの出力を下げ省エネ化する時代です。
何処まで行っても、AMPとSPの組み合わせ上の、相性問題は残りましょう。
SP設計はAMPと一体で音質設計するしか、改善手段が無い以上、爺としてはパワードSPが
唯一問題を解決できる最終手段では なかろうか・・と考えております。
トータルデザインなら、SPの至近距離にAMPを配置する形態の製品が成立します。
(スタジオモニターSPはこの構成。信号はバランス伝送)
以上総括すれば・・
(1)~(5)は〇〇の程度問題であり、理想はパワードSP化し、特定の製造業者により
トータル設計した製品を提供する事が、大多数の顧客を満足させる要諦となりましょう。
現実には、SPとAMPを本格的なHi-Fi次元で、総合設計可能なメーカーは少なく、一部業務用
機器分野に限られているのが現状です。
業務用機器のメーカー例・・(Meyer社)は下記を参照下さい。
http://www.atl.co.jp/products/meyer/pages/upq1p_p.html
振動の塊であるSPと、振動を嫌うAMPを合体させる事は、想像を絶する困難さを伴い、
ノウハウのテンコ盛りでしょう。 (完璧なアナログ処理の世界です。)
中高域に関しては、真空管の持つ柔らかい音質と、パルシブな信号に耐えるAMPが欲しい・・。
音質に直結する、foとDFと許容入力と能率の関係は奥が深く重低音の領域はノウハウの塊です。
爺の想定する高効率とは、90~94dB次元で、これに相当するAMPのパワー出力を想定。
このバランスの中で、最適解が見つかるものと確信しております。
故に、ご質問の如く一刀両断に論じる事が出来ない・・これが結論です。
SPとAMPの相性問題も合わせて、異論もありましょうが、独断と偏見で回答させて頂きました。
Audioも極めれば奥が深いですね・・
余談ですが・・ALTEC-604シリーズSPは、ALTECの技術を引き継ぐGPA(Great Plains Audio)
社から604-8H-Ⅲへと進化しました。
フェライト磁石を使い、アルニコ磁石の性能を目指した品物で+ラジアルホーンに変更。
(マンタレーホーン形式の音質は個人的に好きになれない・・笑)
爺の一押し最強SP-Unitです。Unit¥356000/ペアー・ネットワーク付) 箱は要自作です。
(604-8H-Ⅲの音圧能率特性は、最新版が勝り40Hz~20kHz・・100dB±6dBです。)
仕様は、http://www.greatplainsaudio.com/downloads/604_8H_III.pdf を参照下さい。
604C型Unitの、マルチch駆動は別途寄稿の予定です。
GPA社から、当時の生産設備を引き継ぎ、アルニコ磁石を採用した604-Eの復刻版が出るようです。・・604E-Ⅱ Unit予価¥440000.- コバルトの高騰で価格は高い!
興味のある方は・・http://www.elex.ne.jp/importindex25.html を参照下さい。
只今予約受け付中とか・・(8月時点)
● 電源に関するご質問など ●
音質改善対策上で、電源の品質に関連する、お悩みの質問が沢山寄せられております。
近年エアコン・洗濯機等、大電力機器がPWM制御化に伴い、商用電源ラインを汚す事が一般化
しております。 (法的規制はありますが、Audio的見地からは、正に焼石に水滴)
家庭内で対策出来る事は限られておりますが、筆者お薦めの手法は第12回寄稿でご紹介しまし
た通り、200V入力として、これを絶縁変圧器で100Vに変換し、Audio機器に給電する専用
ラインを敷設する方法が、お薦めです。
ノイズ混入には有用な手法ですが、電源波形が歪んでいると、手の打ちようが無い次第です。
波形歪の対策は、高価な電源エネルギー生成装置に頼るしか手段がありません。
この場合、出力電力が大きいPower-AMPで、特に低音の質感に関する満足度を上げる場合は、
既に解説しました如く電源容量は、3kW必要のようです。
電源波形以外での対策は、この200V系給電が最も有用な対策だと考えます。
中高音の領域の質感は、この給電手法でかなり大幅に改善されます。 特に中高音をマルチ
チャンネル再生される場合は有効な手法です。 (拙宅の体験から・・)
低音だけモノーラル化し、100V系商用電源からドライブするのも、良いのではと考えます。
但し、電源波形が汚いなら、ここでも手の施しようもありませんが。
●音質が悪く、深夜しか聴く気になれない・・ 仰せごもっともです。
(音量上げられず困ったものです) もう~こうなったら・・Battery駆動しか、最終的な手段
が無い訳ですが・・。柱上トランスの近くに、自宅をお持ちの方は恵まれておりますよ!!
柱上トランス直下なら、ほぼダイレクトに給電出来、Hi-Fi再生には最適な条件でありましょう。
これから我が家を建設される方は、本件を真剣にご検討下さい。
●良い音を聴くと、眠くなる・・との投稿もございます。
この方は実に恵まれた方だと観じます。 素晴らしい音質で良質の音楽ソースを聞けば、α波が
脳内に満たされ、リラックス(癒し)モードになります。(森林浴効果に似る)
至福のひと時ではないでしょうか・・それを実現する為の機器側の設計は、電圧で申せば概ね
0.00001Vから、50V程度までのAudio信号の品質を云々する訳です。
これを表現する為のエネルギー源が腐っていては・・手も足も出ません。
拙宅では、200Vから100Vに変圧する絶縁用トランスが、波形歪で突然唸り音を発生した時は、
Audio再生は諦めます・・ 隣家のエアコン等、一定水準以上の電力消費が発生すればNGの様
です。(笑)
変圧器の唸り音で給電品質が分かる・・(笑)概ね10軒で1個の柱上トランスを共有しており
ます。 家庭用途として大容量Battery装置をベースとした、太陽光発電・又はガス発電装置が
普及した暁には、電源の汚れは大きく軽源される可能性があります?
詳細不詳ですが、これに期待を寄せております。 (拙宅では経済的に無縁ですが・・笑)
●家庭の屋内配線は共通インピーダンスと成るのか?
このようなご質問が来ております。 当然共通インピーダンスとなります。
例えば、同じACコンセントからインバーター制御の照明器と、Audio機器を使えば、当然影響
を受けます。 視聴室の裏事情で解説しました通り、この中で使う照明機器は、蛍光灯は厳禁で、
これはタングステン電球に限り、且つ試聴時にはこれを消す操作まで行う次第です。
対策は、家庭の受電ブレーカーBoxの根本から、Audio機器専用に分ける事を推奨しますが、
例え分けても、家庭内にあるインバーター系機器からの悪影響は避けられず、影響が軽減される
程度と考えて間違いありません。
拙宅の100V系は、洗濯機が動作する時と、インバーター調光器が動作した途端に、影響を受け
ます。 つまり、積算電力計から受電ブレーカーBoxまでの配線系統が、共通インピーダンスに
なっている訳です。
拙宅では200V系受電は、積算電力計の根本から、Audio系を分離独立させましたが、給電源の
柱上トランスの根から腐って(波形歪)いると、対策手段は100V電源の再生成か、Battery
駆動しか手段が無い訳です。
この給電系ライン上には、法律で汚いエネルギーを流せる分量に規制があります。
残念ながら、この規制値はAudio機器に取っては甘い内容であり、見直しが必須だと観じます。
更に申せば、家庭内給電容量限界との関連性があります。 一般家庭では1ブレーカー系統当たり20Aが限界であり、つまり2kVAの製品が限界なのです。 これをアナログAMPで考えると、600W 2Ω負荷& 1,2kW 1Ω負荷は、短時間のみ保証のモノーラルAMP・・これが限界となります。
故にブレーカー2系統が必要だと理解出来ます。 アナログAMPでは音響変換効率が悪く、
この設計スペックが限界でしょう。 D級AMPは、更に出力を上げる可能性はありますが、
変圧器を含む電源回路の損失を考える必要があります。
(SW電源による高効率化・・しかし周囲の機器への悪影響を極限まで低減させる事が必要)
300W-2ch 4ΩステレオAMPと、600W 2Ω モノーラルAMPでは、その音質に大差があります。 既に解説致しました通り、給電源等価抵抗RsはステレオAMPの場合、お互いに
混変調の種になります。 ですから、モノーラルAMP 2台構成では、中高音の透明感・沈んだ重低音の表現と言う世界ではモノーラル構成に、圧倒的に軍配が上がります。
筆者は、ハイパワー駆動を望むなら、モノーラル化が必須アイテムだと思う次第です。
大雑把に申してステレオAMP構成なら、せいぜい150W程度が限界で、それ以上はモノーラル化が望ましいと考えます。
当然電源ケーブルも、これに相応しい電流容量を確保する必要があります。
既にスピーカーケーブルで演算例を解説しましたが、上記AMPの例では10Aクラスでは理論上貧弱だと考えます。 この場合も余裕を持って、20A程度迄の範囲で選択されては如何でしょう。 ここでもAudioは○○の程度を選択する、趣味の世界です。
この例の給電装置は、既にご紹介しました3kWの200V-100V変換用絶縁トランスを2組装備し、給電源のモノーラル化を図り、スピーカーまで完全モノーラル構成を実現すれば完璧です。
勿論200Vの給電は、受電用積算電力計の根本から分離し、Audio専用に給電する事をお薦めします。 これを駆動するAudio信号の電力素子は、大電流容量のFETが望ましいでしょう。
D級AMPでも既に解説しました如く、大電力領域ではD-MOS素子が現在の主流です。
以上の説明でご納得頂けましたでしょうか? 能率の悪いスピーカーを極限まで駆動するなら、上記手法をお薦めします。
今までに頂戴した電源関連のご質問内容を、一括して解説させて頂きました。
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12)給電回路の実装
前回解説の途中で、平滑用電解コンデンサの実装への課題を取り上げました。
実装検討用回路の図15-12を再録します。
主に業務用機器のAudio信号増幅回路に、エネルギーを供給する場合、この実装手法が多用されます。 民生機器では、コストの都合で使われる頻度は低いようです。
今回は、約850VAの電力を扱いますので、この電流線路上の抵抗成分を如何に小さく抑え、
同時に大電流領域に於ける電流リニアリティーを確保する必要があります。
その電解コンデンサの入出力端子には、結合手法に銅螺子が使われております。 即ち螺子頭での接触力でエネルギーを授受する訳です。 (他の手法もありますが、特殊工法となります)
この場合はプラス側とマイナス側を橋渡しするのが、バスバーである銅版となります。
銅板の厚さも、施工強度との関連で慎重に選択されます。 この様子を図15-13に示します。
この電解コンデンサと、スピーカーからのリターン線と、変圧器のセンタータップへのリターン線を如何に結合するか? これが前回の課題としての問いかけでした。
プラス側とマイナス側が完璧にシンメトリーな実装が必要だと既に解説しました。
これを実現するには・・?
●理想的な実装手段を求めて ●
図15-3の赤矢印の位置で結合しますが、その例を図15-14に示します。
その他注意点は、電解コンデンサ間の実装寸法があり、各メーカーのノウハウになっております。
ともかく、以下ご説明します如く電解コンデンサの電流供給能力は、内部電解液の温度に依存
しますので、実装上もその点を勘案して設計する事が重要となります。
ニチコン株式会社の技術資料の、図1-10と図1-11を改めて参照して下さい。
真空管時代は、電解コンデンサは筐体外部に露出しておりました。
これは、電気的にも信頼性上も、優れた合理性を持っている事を、正しくご理解下さい。
当然外界との電界・磁界的結合を避ける実装設計が必須となります。
ともかく図15-11に示しました、巨大な充放電電流が流れる意味を、深く思索する事がAudio
機器を成功へと導く要諦となります。
改めて・・大電流領域でのリニアリティー確保とは、直流電流ではなく中途半端なリップル電流である事に、ご注目を!・・これを正しく理解する事は、Audioの真髄を知る事に等しい・・と。
図15-14は、そのリニアリティー確保の一例です。
この結合点に、GND線を加えて圧着加工し、システムGNDとします。
圧着用スリーブは金メッキが最上位で、ロジウム・銀・ニッケル・錫 とだんだん質が落ちます。
資金に無関係に仕上げるなら、銅バスバー自体を金メッキして仕上げます。
リード線端末を、電線が散らばる事を防ぐ目的で予備半田する手法はお薦め出来ません。
せっかくの圧着加工する意味が無くなります。 俗に言われる純粋な漆に塵一個の理屈です。
巨大電流が流れる通路は、投資に見合う音質性能を必ず表現してくれます。
ともかく、部品間の結合点の工法で音質が変化します。
例えばシステムのGND端子の重ね合わせで図15-15のような処理があったと仮定しましょう。
例えば・・同じGND電位でもデジタル系のGNDと、パワーAMPのGNDでは性質がまったく
異なります。この積み重ね部分が共通インピーダンスになり、音質に影響を与えます。
その抵抗はμΩ単位の次元でしょう。 しかし聴感上これが聞いて分かる程に共通インピーダン
スの処理は恐ろしいのです。
即ち、シャーシGND側に近い処を何の回路のGNDとするか?
システム内容によって変化しますが、これも実際に聞いて判断します。
● Audio帯域で見た等価給電源インピーダンスの低減 ●
前回に引き続きこの課題を再検証しましょう。
Battery電源は、その出力インピーダンスが3mΩ以下をAudio用として推奨する云々と解説し
て来ました。 では、整流回路のインピーダンスを改めて検証してみましょう。
電解コンデンサのインピーダンスは? 1/jωC でした。 では33000μFと100000μFの
各周波数別のインピーダンスを計算してみましょう。
ここでは、低音再生云々ですから・・25Hz 50Hz 75Hz 100Hz 1000Hz
33000μF ・・ 0.1929Ω 0.0964Ω 0.0643Ω 0.0530Ω 0.00482Ω
100000μF ・・ 0.0636Ω 0.0318Ω 0.0212Ω 0.0159Ω 0.00159Ω
コンデンサに17A rmsの電流が流れた・・と仮定しましょう。
上記インピーダンスで低下する電圧は?
33000μF ・・ 3.27 V 1.638V 1.0931V 0.901V
100000μF ・・ 1.081V 0.540V 0.360 V 0.270V
電解コンデンサの理論インピーダンスだけでも、上記の如く再生する周波数によって電圧変動が
あり、例えば25Hzで考えれば、33000μFでは40Vが36.73Vに低下します。
給電源等価抵抗が、Low-Endで上昇したと等価となります。
容量に蓄えられた電圧だけでは、1kHzで100Wを表現出来たとしても、25Hzでは
P=36.732 /16=84.318W にパワーダウンします。 同様に300W・4Ωなら、100000μF
で25Hzでは、287Wに低下します。 この分を電源トランスから給電で補う訳です。
即ち図15-11のT1に示す、充電時間のチャージ時間が長くなる訳です。(リップル電圧増大)
以上はあくまで理論的な単純計算ですが、これに電解コンデンサの内部抵抗Cr分(損失分)が
加わり、更に低下する事となります。
(変圧器の等価抵抗Rt分は、既にこの分を見て電圧設定される故、周波数項は無視出来ます
Batteryの3mΩと比較すると・・ 25Hzでは33000μFでは64倍の給電源インピーダンスと
なります。 同様に100000μFでも、25Hzでは21.2倍の給電源インピーダンスを持ちます。
Battery次元のインピーダンスを発揮するのは、やっと1kHzから上の帯域で同等となる次第で
す。
そもそも・・25Hzの超重低音をパワフルに再生する事は、さように困難な次第です。
スピーカーケーブルでの損失を計算しましたが、更にこれにAMPの電力増幅段で発生する損失
が加わりますので、SP出力端子で既に、このようにドライブ能力が低下する次第です。
この線路上の電流リニアリティーを確保する意味の、一端がこれでお分かりになった事と思い
ます。
以上より、ダイナミックヘッドルームを確保すると申しましても、給電源インピーダンスの
上昇・電力増幅回路での損失増加・スピーカーケーブルでの損失の3要素によって、Audio再生
帯域のLow-End帯域では、物理的性能を維持する事が、如何に困難であるかが理解出来ます。
このダイナミックヘッドルームの評価用周波数は、1kHzでした。
これを25Hzで表現すると・・上記の如く、電圧低下で無い袖は振れないので、素の実力がその
まま発揮されるとしか、申し上げようが無い次第です。
従い、AMPの製造者間格差が、この25Hz再生のケースでは、如実に出て参ります。
当然柱上トランスの次元から申せば、繰り返し説明しております通り、商用電源の給電能力の
容量は3kW程度を確保しないと、真の意味での重低音は発揮できない・・と申している次第
です。 しかもその電流波形は、リップル電流そのものです。
今度は逆にハイエンドの周波数帯域を検討してみましょう。
Audio再生帯域は、当然100kHzまでを見越した設計が要求されます。
この給電源インピーダンスが、高い周波数帯域で同様に低い事が求められます。
しかし、既に解説しました如く、電解コンデンサの構造上、高い周波数ではインダクタンス成分
に化けます。 これは理論的にやむを得ない仕儀となり、その制御は、大変苦労する訳です。
100000μFともなれば、容量特性を保つのは、良くてもせいぜい20kHz程度でありましょう。
既に解説しました如く、自然界の音響エネルギーは30kHzより上では殆ど存在しません。
故に増幅回路には殆ど電流は流れませんが、この再生帯域の有無で音質が激変する事も又事実
です。 ですが、給電源からエネルギーを供給する能力も、それなりに必要とします。
第12回寄稿で解説しました、図15-4を使って改めて解説します。
電解コンデンサに並列に小さい容量を並列に追加して、インピーダンスの低減を図ると解説しま
したが、では具体的その容量はどの程度であれば良いか?
これを考察してみましょう。 図15-4を再び掲載します。
給電源等価抵抗を概ね0.1Ωに保つ事を目標に掲げたと仮定しましょう。 (上記緑色のライン)
するとインダクタンス成分は、100kHzで概ね300nH以下を目指して設計しないと達成不可能
と理解出来ます。 スピーカー用ケーブルの処で解説しました通り、電線の往復線路上の
インダクタンスは
往復線路L(m)の自己インダクタンス=L【μs4Log(D/r)】×10-7(単位H)
で演算出来ます。
25Hzで0.063Ω(青破線のライン)であっても、100kHz周辺の帯域では容量性はインダクタ
ンス性へと変化し、25Hzと同じ0.063Ωを担保する事は絶望的で、これは不可能な相談です。
Rs=0.1Ωならコンデンサのインダクタンスは概ね300nH以下を必要とします。
ならば、如何なる手法でこれを乗り切るか?
● 改善手段その1
この100000μFを2分割し、50000μFを2個並列接続する。
合計4個の電解コンデンサでプラスマイナス電源を構成する手段が有ります。
仮に100kHzで0.1Ωのインピーダンスなら0.05Ωの給電インピーダンスを確保する事が出来
ます。この値なら、25Hzと略等価な電力が100kHz帯でも供給出来る理屈となります。
電解コンデンサ2個を並列接続した場合の、実装イメージを図15-16に示します。
バスバーを廃止しプリント基板化する手法もあります。 しかし、大電流領域での半田付けは
音質劣化要因となり、半田次元でのノウハウが必要となります。
実際は、電解コンデンサで100kHz帯まで容量性を示すのは、概ね47μF程度が限界と
言われます。 高級品ともなれば、沢山の電解コンデンサを並列接続し、Audio再生帯域内の
Low-End &High-End特性を改善している次第です。
600W-AMPともなると通常4個並列の合計8個で±電源用の平滑回路を構成する事が多い
ようです。 しかし、巨大容量の電解コンデンサを沢山並列に接続しても、実装線路上の設計が
悪いと、高い周波数では所望する給電源等価抵抗の値は実現出来ません。
更に重要な点は、これら並列にしたコンデンサの電流容量の合計です。
最大負荷時のリップル電流に対して、余裕を持つ事が重要です。 この余裕分が音質向上に
寄与します。 即ち、ここでも部品の電流密度を下げる事と給電容量Upが音質対策の要となる
次第です。特に重低音の駆動能力を担保するには、この手法は必須項目となります。
同時に1個当たりの容量値を下げる事は、高周波インピーダンスの低減にも繋がります。
この見極めは、経済性と性能の関係でノウハウ領域になります。例えば、ニチコンであれば・・
LNT1K223MSEを4個並列なら80V・8.4A で計33.6A 22000μF
LNT1K333MSEを3個並列なら80V・9.9A で計29.7A 33000μF
LNT1K473MSEを2個並列なら80V・13.4Aで計26.8A 47000μF
この実効電流の増大は、ピーク電流値の余裕を生む事に着目下さい。
その余裕度の見方は、各社ノウハウになります。 この手法は、製品価格と直結し費用対効果に
優れます。 しかし、給電源インピーダンス3mΩ at 100kHzの世界は夢のまた夢の世界です。
100kHz帯域で、給電源等価抵抗が0.1Ω以下なら優秀な部類だと判断して間違いありません。
● 改善手段その2
以上の改善手段では、まだまだ音質的には高級品とは申せず、更に改善手段その2を打ち込み
ます。 周波数的にはもう一ケタ上の1MHz付近で、給電源等価抵抗が0.1Ω以下を目指す対策
を打ち込みます。 図15-4より、約2.2μF程度の容量が必要だと理解出来ます。
(0.47μF~1μFを採用する事が多い)
この帯域では、主にフィルム系のコンデンサを平滑回路に対して並列に挿入します。
素材は既にご紹介しました通り、ポリプロピレン系フィルムが使われます。
十分な絶縁耐圧を持ち、且つリップル電流容量的にも優秀な部品を、選定する必要があります。
勿論この容量の素性で音質は、大きく左右されます。 (コンデンサの素材で変化)
一部 焼結系コンデンサがありますが、電圧変化で容量変化しますので、爺は推奨出来ません。
Hi-Hi再生に相応しい電子部品の調達が、真に困難になりました。
そして高価な部品となり、製造は海外のアナログを大切にする文化風土の中で培われた、極一部
の部品メーカーでしか作れない時代となりました。
この次元の容量値は、SPネットワーク用のパッシブフィルター用、バイポーラコンデンサが此れ
に該当します。 高周波用コンデンサを平滑回路に挿入すれば、何故音質改善になるのか?
・・お分かりですか? そうです既に解説しましたリップル電流に起因します。
この充放電特性の波形を見れば、納得が行きましょう。 この電流波形は高周波成分をたっぷり
含んでおります。 僅か50Hzの世界だと!・・とんでもない思い違いです。
それに、整流器で発生するSW波形が重畳しており、給電エネルギーに雑味成分が、たっぷり
乗っております。 これを除去する必要がある次第です。
このノイズエネルギー成分は、AM放送帯で受信障害となる程です。 当然Audio増幅回路に
混入し、信号に悪影響を与えます。
故に、電源回路には、この高周波対策部品を投入し、高級品は音質を改善しております。
再度、何処まで行っても、このジャンルではモノーラルAMPに音質上は止めを刺します。
究極を考えるなら給電源は、積算電力系の根本からモノーラル化を図るべきでしょう。
例えば業務用スタジオでは、3kVA絶縁変圧器を2台独立させ、ステレオ構成にして給電する
手法を、採る例が有るようです。
注意:これ等の性能は、あくまでAMPのスピーカー出力端子での品質限界を示すものです。
アマチュアが対応出来る、改善手法を伝授します。 図15-12を再度ご覧ください。
ここで着目は変圧器二次側と、整流器間および整流出力と電解コンデンサ化間を結合する
ケーブル処理の課題です。
その故は、第13回寄稿の図15-11に示しました、充電電流の問題です。
このライン上は、激しく変化する電流エネルギーを扱います。 つまり急峻な立ち上がり&立下りの電流が流れます。 この意味は、この伝送線路上の電流リニアリティーを確保しないと、
初期の目的は達する事が出来ないと理解出来ます。
この激しいリップル電流エネルギーの変化を忠実に伝送するには・・
(1) 伝送線路上の高周波インピーダンスを低減する事。(インダクタンス成分の低減)
(2) 他の回路とのエネルギーの空間飛びつき対策が必須である事
(3) ともかく伝送路長を、可能な限り短くする事
(4) 平均電流容量に見合う電線構成を必要とする事。
(5) ピーク電流に対して余裕を持った伝送線路を構成。電流的には少なくても2倍程度。
(1)~(5)のような配慮が必要となります。
特に他の回路へのエネルギー供給用ラインと、電磁的・静電的に結合するのは、決定的にマズイ!
のです。
対策 (1と2)に関して、推奨するのは給電ラインを、センタータップへのリターンラインを
中心にして三つ編みにする事です。 二次側巻線以降のイメージを図15-17に示します。
高級品はアナログとデジタルを分離する目的で、変圧器を各々独立させます。
デジタル系は扱う周波数が高い故、編みピッチを狭くします。
(ピッチは妨害程度で変化します)
アナログ系の編みピッチは、音質を確認しながらピッチを判断します。(参考は5cm程度)
この編みピッチを短くし過ぎると、音質に悪影響が出ます。(出力パワー値と関連します)
編む理由は、インダクタンス成分の低減と、他の回路からの磁束の影響を受けても、次の編み
ピッチ上で打消し合って影響を相殺出来る故です。 この時注意すべきは、給電ライン長を必ず等しくする事です。 更にセンタータップ用リード線をダブル構成にして、位相の異なる二次巻線を撚り合わせる手法もあります。
(プラス電源側とマイナス電源側のリターン路を分け、分離独立させる手法)
編み終えたラインは、シャーシ上に沿って引き回し、整流器まで導きます。
但し音質は器機によって条件が変化しますので、空中配線が良いか否かは実験で決めて下さい。
電気的な物理上の振る舞いは、シャーシGNDに沿わせるのが基本となります。
この手法の効果の程は、各自お確かめの程。
例によって効果が無いなら別の要素を疑うべきです。
変圧器一次側入力ラインも、同様に2線の編み加工を推奨します。
EMC対策で、このラインを銅箔でシールド加工する場合があります。
一次給電線の扱いは壁コンセントから供給する電線仕様で良いでしょう。
第12回寄稿で解説しました通り、受電用3端子コネクタのGND端子は、ソケットケースと
一緒にシャーシに落とすのが原則です。
整流器の電流対順方向電圧特性の挙動に関し、解説を省略しましたが、この特性も重要な意味を
持ちます。 結論は整流器用半導体の電流リニアリティーが高い事が要求されます。
要は、最大電流に対してどの程度余裕を持った、電流定格の部品を採用するかに尽きます。
● 改善手段その4
図15-13及び図15-14を注意深く再度ご覧ください。
コンデンサをシャーシに取り付ける構造で、電解コンデンサの頭部分にはシャーシが存在しない
事に気が付きましたでしょうか? このように、電解コンデンサとシャーシの隙間には注意する
必要が有ります。 即ち当該部品からは、電界・磁界が必ず発生します。
シャーシに接近し過ぎると、信号電流の変化によって発生する電界・磁界をシャーシでショート
する事になります。 逆の給電端子側も同じく、製品トップケースとの隙間も問題になります。
故に部品はシャーシである鉄板で、必要な電界・磁界を妨げる事が無いような実装上の工夫が
必須となります。 この寸法は各社ノウハウの領域です。
更に平滑用電解コンデンサは、他の汚い(デジタル用電源回路の部品等)電子回路に供給する
電源部品との隙間も重要になります。 互いに接近すると、Audio信号用の電源が汚されて音質
劣化に直結します。
特に真空管AMPであれば、巨大な熱源である真空管から避ける事は、寿命の観点から必須項目
です。 既に解説しました如く、他の汚いエネルギーを扱う電解コンデンサのボディーに、静電
シールドをかける事を推奨します。 ともかくエネルギー密度の高い全部品が検討対象です。
この手法は、第11回寄稿の市販品の音質改善例の写真で示した通りです。
15-8.整流回路のシミュレーション例
Audio機器が目指す整流回路を設計する場合、どの設計項目に着目して設計されて来たか、縷々説明して来ましたが、本篇の最後にシミュレーション例を示します。
当然ですが、シミュレーションしたからと言って音質が分かる筈はありません。(笑)
あくまで設計の道具に過ぎません。 アナログ技術の基本を正しく理解していないと、
コンピュータを使った単なるお遊びになり下がります。 設計上の精緻な裏付けを得るには有効
なツールとなります。(何を演算しているのか?本質を正しく理解する事が重要です)
以上で商用電源から平滑コンデンサに至るまでの大電力領域の解説を終了します。
次回は小電力容量の分野を解説する予定です。
一部D級AMPへの電力給電手法で、未解説部分も扱う予定です。
本日もお付き合い賜り ありとう存じます。 爺 拝
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