【Z・特別講義12】

[ 時間軸からアンプを考える ]


第12回 寄稿

ご要望が強かった業界裏事情も済みましたので、若干肩の荷が下りました。(笑)
さて、今回はAudioの本質論に戻りましょう。 AMPの駆動力とスピーカーの関係について、今回は時間的要素を盛り込んでみたいと思います。
音楽信号(エネルギー)は、時間軸上で激しく変化します。 駆動力と言うからには、信号の急変にどの程度AMPがついて行くのか?と言う疑問が湧きます。

つまり信号の急峻な立ち上がりと立下りに、システムは何処まで忠実にAudio信号を再現できるか?
と言う課題です。  既に解説しました如く、fo付近のスピーカーを含む総合的なレスポンスは、AMPと
ケーブルを含むDFとスピーカー側のQoの相互関係で決まりますが、更に高い周波数領域を含めAMP
本体の追随性は何の要素で決まる? まずこれを如何に評価するか? から始めましょう。

まずエネルギー急変をシミュレーションできる信号を作成しない事には、絶対評価は出来ません。
そしてそれを使った評価基準が必要となります。 Audio業界として統一基準を作成してあります。

トーンバースト信号 ●
AMPの立ち上がり&下がり時間を評価する為の標準信号は、下記のトーンバースト信号を使います。

     

小振幅信号は 0.4Vppとし大振幅信号は4Vppの信号とします。 信号の1周期は0.5秒です。その内大振幅の時間は20mSecとします。

計測方法
1) AMPの出力に1KHzの連続信号で、出力波形がクリップしない最大電圧にボリュームを調整
連続出力の値を求めます。(入力電圧は4Vpp)

2) 上記トーンバースト信号を入力し、出力されたピーク・ツー・ピークの最大電圧を求めます

3) 2)で求めたピーク・ツー・ピーク電圧より、サイン波の最大出力電力を計算します。

4) 立ち上がり信号で何処まで表現可能か?
  これをダイナミックヘッドルームとしてdBで表現します。
  演算式= 10Log (1kHzのトーンバースト波の最大電力)÷(ノンクリップ連続出力電力)

例えば、これが連続定格の値に対して+3dBなら、ピーク電力は2倍と言う事になります。
つまり20mSecと言う短い時間内なら、パワーは定格出力の2倍までは表現出来る事を意味します。
(実際には2倍になる設計はあり得ませんが・・)
この設計指標の意味する処は、パワーAMPの質感に深く関与します。
非常に短い時間ですが、芯のある良質なパワーをスピーカーに送る意味で、非常に重要な設計要素となります。   特にAMPを自作される方は、ご参考になると思います。

製品を購入する方には、製品の評価眼を養う・・と言う意味でご覧下さい。
このジャンルは、AMPの品位というジャンルですから、設計する方に取ってはノウハウの塊とも言うべきものかも知れません。 品位と申しても、結局オームの法則の範疇から外れて考える事は出来ない。 短時間に、如何に沢山のエネルギー如何にしてスピーカーに送り込むか? それには何が必要か? これに特化して設計上のあらゆるアイテムが検討されます。 各ジャンル別に検討課題を紹介しましょう。


§15. 理想の給電を求めて
つまり、このダイナミックヘッドルーム拡大も、如何に大電力低損失で伝送するか尽きているのです。 半導体は、電流素子だと冒頭に申しましたが、電流のリニアリティーの内、設計上の最大電流領域での電流供給能力を扱うのが、この設計課題です。 音質的にはハイパワー且つ高音質と言うジャンルとなります。 これは、同時に電流歪が少ない事を意味します。 電気工学上は、最も繊細で材料工学・と併せ実装工学上も難しい分野となります。 設計現場が何をしているかアイテム例を列挙してみました。

15-1.商用電源とのインターフェース
このジャンルは、電源変圧器に至る経路上の、全ての設計要素が対称となります。
当然ですが、該当する部品全てが検討要素となります。 その主な重要部品と検討内容は・・
これらの内容を経費節減しながら検討しております。 何をしているかの一例をご紹介だけ致します。
   

吟味・繰り返し動作への保証吟味・実装手法の吟味(変圧器と電源SW間)
これらの設計項目に共通しているのは、如何に低抵抗で設計するか?・・にあります。
上記の如く給電系の根本部分で、かなり微細な神経を配らないと、高音質化は不可能なのです。


Fuseは何故音が悪い?

良く知られている通り、Fuseは音質劣化の元凶です。 但し重要保安部品であるので、安全上これを
外す事は不可能な事です。 既にお分かりの如く、大電流領域に於ける抵抗値の非直線性を使い、
その機能を果たす考え方で成立しており、当然の帰結とも言えます。

これをアマチュアレベルで排除するには、電磁ブレーカー方式により、Fuseを排除するしか手段が無い
と申せます。 電源SWと共用出来ますので、この手法をお薦めします。
既にご紹介しました通り、お薦めの電磁ブレーカーは下記ですが、最大10Aの容量があります。
http://www.amtrans.co.jp/jp/diy/protecter/01.shtml

ISOCLEAN POWER(アイソクリーンパワー)ブランドなる音質対策用Fuseも市販されているようですが
筆者は効果の程は確かめておりません。 (口金は金メッキ処理・中国系で信用?)
ここまで凝るなら、Fuse受け用の金具を接触抵抗の少ない形状にし対策しないと、片手落ちの様な印象を受けます。 (金又はロジウム鍍金は接触抵抗を低減する良い手法です。)
1個¥3000以上と高価ですねぇ。。 この部品を交換した場合は、法的には安全性は担保されずあくまで自己責任ですのでご注意下さい。 (設計者が意図する溶断特性と異なる筈です。)


Fuseの容量は何で決まる?
給電回路設計では、システムの電源起動時に流れる突入電流が課題となります。 
電源変圧器がトロイダル方式の場合は、巨大な突入電流が流れますので、その実態を把握する事が
重要ですが、アマチュアは対応困難でしょう。(突入電流専用の計測器を使い、値を把握) 
くれぐれも、トロイダル形式の電源変圧器を使う場合は、突入電流に気を付けて下さい。

システム設計上の定格最大電流値に対して、例えば負荷をショートした場合、Fuse両端での消費電力
の値が、定格最大電力時の9倍以上で切れる(溶断)様に設計します。
この時、溶断時間に遅れがあれば、電子機器を壊す事になり、Fuseの役割が果たせない事となります。
以上の如く、Fuseはシステム起動時突入電流と、異常状態に陥った時の溶断電流と更に、通常動作状態時最大電流容量を勘案し、溶断特性が吟味されます。

つまり突入電流の様に大電流に対する反応が、早すぎてもダメで、且つ負荷ショート時に、保護動作は回路素子にダメージを与えない時間内に、溶断する事が必須要件なのです。
変圧器の二次側にも、必要に応じてFuseが挿入されますが、不用意に外さないで下さい。


ハイパワー且つ高純度再生を支える要素
上記1)~5)の詳細を上げればキリが無いのですが、幾つか代表で記述しましょう。
ケーブル類の電気的な特徴は、既に解説しましたので割愛します。 
この周辺ジャンルで一番厄介な問題は、やはりエネルギーを如何に高忠実度で伝送するかにあります。
商用電源の一次側受電系は、高電圧領域に於ける部品の、接触抵抗低減対策です。
3端子ACソケットと、ACコード受端プラグの電極構造に課題があります。
    

結局マニアクラス対応となれば、この写真ような形でしょうか。
EMI対策では、上記受端部の3端子ソケット内部に、機能を内蔵した製品が販売されております。
http://www.tdk-lambda.co.jp/products/sps/tdk_nf/rpe/indexj.html

EMIとはElectro-Magnetic Compatibility の事で、電磁的な不干渉性を言います。
つまり、外部給電ラインからの妨害を防ぐと共に、自らの機器からも外部に影響を与えない・・との考え方に立って機器を設計する訳です。 かなり高度な素材ベース領域での専門知識を必要とします。
このジャンルの音質設計は、誠に厄介であり専門的で奥が深いのです。

マニアクラスでの対応は、上記の様な市販品を選択するしか手段が無いジャンルとなりましょう。
給電用一次側電線は、下記メーカーで趣味レベル商品が手当て出来ます。(拙宅も同じ)
https://oyaide.com/audio/audio-products/power_cord/index.html

既にご紹介しました、受電用ACコンセントは、下記メーカーで特注したものです。
http://www.negishi-tsushin.com/

既にご紹介しました通り、鋳物ケースに銅箔を貼り込み 組立て4Pテーブルタップとしました。
   

ACコンセントは、オヤイデ電気のR1 Beryllium を使っております。 これを2組で構成しております。
Hi-Fiマニア層が対応出来るのは、ここまでではないだろうかと思います。
電線と電線の接合方法は圧着方式がベストとなります。
ケーブル長は、必要にして最小限の長さでシステムを組む以外に手段がありません。
スピーカーケーブルで解説した次元と同じです。(絶縁仕様が変わるのみ) 

既に給電系GNDで解説しましたとおり、給電GNDラインを浮かすとコモン伝送に信号が化けますので、 一番確実に対策を施すなら、シャーシアースは、大地GNDにしっかり落とすべきです。
これが給電系の信頼性を担保する最良手法です。 拙宅は日動電工(株)のB6J型 丸型アース棒
φ16 ×1500mm http://www.nd-ele.co.jp/pdf/download/earth/B6J.pdf を使いました。


15-2. 商用電源の現実
近年電源供給に対する品質が大きく変化しております。
一つには太陽光発電に伴う売電システムの稼働、更には各種機器の省エネにともなうインバーター制御の普及・・電源電圧の変動幅の拡大などに伴い、給電波形の劣化が激しく、Audio装置と言う次元では益々環境が悪くなっております。
拙宅の給電波形の最悪時の例を写真に示します。 ノイズカット変圧器導入以前に、悲惨な状態です。



電源波形は、主に奇数次高調波が多く、拙宅の波形は最悪時、最悪5次歪が20%程度と思われます。 電力系統で扱われる高調波は、50Hzに対して第40次(2kHz)歪までが扱われます。
つまりこれ以上の高い周波数成分は、電力線インピーダンスに阻まれて伝送しにくいと考えられています。
この波形が歪むと、全て損失分に置き換わります。 つまり、加熱・振動・焼損・劣化・誤動作の因となります。 この汚いエネルギーは他の機器との連携動作で、給電ライン上を回生(往復)し、波形の位相をますます乱す因となり連鎖します


専門的には、給電ライン上にある機器は、その殆どが誘導性負荷(インダクタンス分)であり、電圧と電流の位相が理想から外れる次第です。 電力会社はこの歪率を5%以下で管理するのが目標(建て前)になっていますが、現実には制御不可能な状態に陥っているのが現状でしょう。(JIIS C61000-3-2規定)

ちょっと専門的ですが・・
一般的に、電力系統三相デルタ式給電が採用されており、奇数次歪の3.9.15次の高調波
このデルタ結線の中でループを形成し給電ライン上に出てくる事は少ないとされます

従って、電力線ライン上の歪はその大半が5次歪になる特徴を備えているようです。
同じ3相でもスター式給電の、3相4線式給電は、3次歪が問題になるようです。(ヨーロッパ系給電)
(4線目の中性点に歪が合流)

一方で、電源ライン上に意図して制御信号を重畳させ、各種機器をコントロールするシステムが登場しております。 例PLCシステムPower Line Communication又はPower Line Telecommunication)
電源ライン上に数百kHzの信号を重畳させ、特別な配線を施さなくても機器間通信を可能にする技術で一般家庭内でも普及しようとする動きがあります。 (工場内で工作機械間の統合制御などに使います)

以上の如く、Audioの趣味には、ますます適さない環境下で動作する事を余儀なくされる傾向です
拙宅の絶縁トランスは、こんな波形を入れられると、唸り音を上げて抗議して? おります。(笑)

Audio用給電装置は、これらの影響を避ける為には、高周波スイッチング電源で自ら電源を作り直すしか手段がありません。 その論文が各種ネット上に掲載されておりますが、九州大学とフィデリックス
オーディオ社から共同発表された文献がありますので、ご参考までに掲載します。
http://www.fidelix.jp/img/serenity.pdf  http://www.fidelix.jp/ ホームページ
尚これからの紹介記事を読むには、一定水準以上の電気工学の知識が必要です。

大電力装置をSW電源化する事は、投資コストが嵩み、且つ技術的にも実現するのは困難です。


15-3.Audio用電源装置の例
製品ベースで薦められるSW電源装置は、下記が専門誌から評価されている様です。
拙宅の如くの下手な投資なら止めて、この製品にした方が良い? かも知れません。
http://kojo-tech.jp/products/aray.html
1200VAタイプで¥66万ですか・・ 6系統では¥37.4万とか・・リタイヤ者には、高嶺の花で拙宅は無理な相談ですが・・。
 

読者様からの情報ですが、ローコストで音質性能が優れている電源装置として、下記が存在する様です。
http://www.procable.jp/products/star.html    この製品は¥99800,- とあります。
200V入力で、出力は100V・3kWの能力があります。 200V受電の準備がある方此方を検討されては如何でしょうか。 確かに製品価格が高いばかりが良い訳では無いと感じます。
導入された方の評価記事も掲載されております。 (商品取引は自己責任でお願いします)
   
電源変圧器の唸り音のご相談を多く受けます。その唸りの根本原因として、変圧器構造に問題がある他、ご紹介した如くの商用電源の波形歪の問題があります
根っ子が腐っており、これでは高音質を追及しても無理があります。
以前ご紹介しました通り、柱上変圧器に近い場所から給電を受けている場合、この影響が最も少なくて済むのです。 究極は、これもご紹介した通り、マイ柱上変圧器設置するしか改善手段はありません。

変圧器の唸り音の問題は、入力される波形がそもそも腐っている他、それ自体の構造要因と、更に
負荷電流容量と、変圧器のコアー容量のミスマッチング問題があります。 つまり、例えば3kWの出力
容量が設計仕様の場合、変圧器コアーの電力容量が、仕様に対してどの程度余裕を持っているか
ポイント
です。
定格負荷容量に対し、ギリギリまで負荷電流を引出た場合、唸り音の発生要因に成り得ます。
従って、システム全体の電力容量値を予め把握した上で、十分余裕を持った電源装置を導入する事を
お薦めします。 (例:3kWの能力なら、負荷容量は1/2以下に抑える等・・理由は15-4項参照)

●深夜になる程高音質になる ●

読者様からこのようなお便りが届いております。 まったくその通りでして、近年給電性能劣化でエネルギー源が汚れ且つ歪んでおり、Audioマニアから見れば、悲しい限りです。 拙宅でも事情まったく同じで、土・日は音質が悪く、聴く気分になれません。

近年ガスを使った発電装置が販売されているようですが、これはBatteryを仲介して、商用電力系統と
接続するシステムになっている様です。 更に、某重電メーカーから、自動車Batteryと太陽光発電と
商用電源を統合して制御する電源装置が100万円以下で発売されましたが、各々のエネルギー源で
音質にどのような差が発生するか?興味があります。 (Batteryとの組み合わせで100Vを生成)
既に実験済の方は、情報をお寄せ下さい。

筆者の実家は、山奥の一軒家ですが、ここで聴くシステムは確かに高音質の様です。
ともかく、商用電源ライン上にPWM制御を受けた、エネルギーの残渣成分が乗っており、隣近所の影響を大きく受けている事は事実です。 (特に近年エアコンの省エネ化の影響が大)
その意味から、受電端末のEMIフィルターが重要な意味を持ちます。
法律上の流入妨害対策で、エネルギー量が数値化されておりますが、これはあくまで装置が誤動作するか否かの次元で制定されており、Audio装置はもっと厳密な次元で対策する必要がありましょう。

その前に、給電源の波形歪は困った問題です。 同じ柱上トランスを共通とする、ご近所の家で腐らせると、エネルギーが給電ライン上で回生し暴れ、ますます悪化します。
これを個人的に対策するのは、至難の技です。 拙宅では、Audioに給電するラインのみ、積算電力計
の根本から分離し、更に絶縁変圧器の二次側100VとGND間に力率改善用の装置を挿入してあります。 
しかし、それにも限界が有り、根本が腐れば為す術がありません。
拙宅では、ご近所様がお勤めに出られた後、リタイヤ特権を使って楽しむ事にしております。

以上のような次第で、電源の波形歪に対しては、大容量の波形生成装置を装備するしか手段が無く、
且つその電源容量は3kW以上を必要とするのが、拙宅での実績です。異論等、ご意見あればお寄せ
下さい。

自作Fi-Fi追及マニアの入門者に関して、情報を届ける必要もあると感じますので、ここからは電源装置を作る次元で、話を展開してみたいと考えます。
ともかくハイパワー設計の分野は、技術的なハードルが高く、一般マニアの制作次元では対応困難です。
Audio再生の基本に立ち返った場合電源の持つ重要性は今後も変わる事はありません。
根が腐ったら、手の施しようもない次第です。 なるべく文系の方にも電源の基本的な理屈次元でご理解頂く事を目指し、給電性能の本質を解説してみます。


15-4. 給電性能
最終的には、スピーカーに如何に高忠実度で駆動するか・・ と言う課題に対しスポットを当てております。 何度も申します様に、負荷に電力を供給した時電圧が下る分量を許される範囲で最小にする設計しか回答が無いのです。 つまり製品設計ですから常に合理的な適正範囲が存在します。
この合理的範囲は、製品価格で大幅に変化すると考えれば良いでしょう。

この合理的な設計指標を表すにもオームの法則は有効です。 この給電電力量と電圧の関係は、電源電圧のレギュレーション特性で表す事が可能です。 その様子を図15-1に示します。

      
解説
商用電源100Vから変圧器で電圧を所望の値に変換し、これを直流変換しスピーカーを駆動する電圧
を作成します。 既に演算例で示しました如く4Ω負荷に300W得るなら約49Vが必要となります。
図15-1は、スピーカーを駆動するに必要な直流電圧を、負荷に流す電流との関係で示したものです。
図のように負荷電流(A)を流すと、供給電圧は比例して低下します。
iL1と示した負荷電流はシステムがアイドリング状態の時で、iL2と示した負荷電流は300Wの電力を
スピーカーに供給した状態
だと仮定します。

つまり供給電圧は、アイドリング時V1の値だったのが、300W電力を供給した時点ではV2の値に低下
しますが、300Wの供給能力に必要な値が49Vなら最低でもV2の値はこれをキープする設計が必須
なります。 この電圧降下の傾斜は、300W-AMPなら傾斜Aに設計しなくてはならず傾斜Bでは対応
不可となります。 この傾斜は製品の仕様が決まれば、自動的に決まる設計要件となります。
この電圧傾斜をレギュレーション特性と申します
この傾斜オームの法則そのもの! です。
オームの法則は、R=V/I ですから 傾斜が分かれば、給電系の抵抗値が演算出来ます。

   R=(V1-V2)/(iL2-iL1) …15-1式

少し例を上げましょう・・ iL1=0.1A   iL2=8.66A  V1=55V  V2=49V と仮定すれば
この時の給電源等価抵抗Rs(電源装置の内部抵抗)は? 
Rs=(55-49)/(8.66-0.1) =0.7Ω と求める事が出来ます。
つまり、電圧の傾斜Aを得るに必要な、給電装置の内部抵抗の許容値が0.7Ωだと求まります。

既に解説しました如く、低音領域になる程、長時間大電流が流れる訳です。
即ち、低音再生時この駆動電圧が下がり易い事を意味します。 音質次元ではこの電圧低下の分量少ないシステム程、スピーカーにエネルギーを送り込む能力は大きく聴感上は馬力がある低音感が得られる次第です。 
拙宅の実験では、商用電源の電力容量は、低音再生では3kW程度の能力が無いと満足感が得られ
ない
・・が、実績です

従って、上記にご紹介した200V-100Vの絶縁用変圧器を含む、電源装置の内部抵抗の値も、当然
値は小さい事が必須要件となります。 例えば、定格3kWの変圧器に対して設計上は6kW相当の変圧
器容量を投入すれば、溢れる低音感が得られる理屈です。 これは3kWの処を1.5kWに抑えて使って
同じ効果を生む次第です。  ご紹介した3kW版を2台導入し、左右ch別々に給電すれば最強と
なりましょう。

変圧器コアーの電力容量に対し、軽負荷で使えば電圧の低下のみならず、波形歪が軽減されますし
更に、損失分による温度上昇も軽減され、物理的には全て良い方向に作用します。
車のエンジンに例えれば、600ccと3000ccのトルク感に似ておりましょう。
ご紹介しました3kW絶縁変圧器の給電システムは、重量が36.5kg/台 もあります。正しく重厚長大!

メカニカルGND処理でご紹介しました様に、この装置を設置する床構造も、しっかりしたGND対策を
必要としましょう。  (この3kW商品は、唸り音対策も、記述があります。)

結論として・・
特に低音の再生品質を重要視するなら、この分野は、重厚長大的発想!でしか解決しないのです。
その意味で、パワーAMPもモノーラル構成で、ステレオ再生すれば最高性能を得ます。
拙宅のシステムはWoofer部をモノーラルAMP2台で再生し、電流消費の少ない高音の再生は、
ステレオ構成です。 
改めて、給電性能について考えてみましょう。 (真空管AMPでも同じ理屈)

   

電圧降下傾斜Aに対して、電圧傾斜Cを考えます。 電圧傾斜Cの方が当然給電源等価抵抗Rs
小さい事になります。
つまり、スピーカー負荷抵抗が半分になったら、供給電力量が2倍なるとは、この傾斜を限りなく 少なくする事に等しいのです。 分かり易く申せば、給電源等価抵抗Rsを限りなくゼロに近づける設計でないと、負荷抵抗半分の時、電力量2倍は得られないと言う事です。 これも実例で演算してみましょう。

演算例

負荷4Ωで300WのモノーラルAMPで、2Ω 600Wを設計するには ?
Im=√(2×300)/4=12.24A √2で除して8.66A rms。 2Ω負荷時の電流は 計17.32A
電源電圧の変動率を12.244%と仮定するなら    電圧変動率=【(V1-V2)/V2 】×100・・15-2式
V1・・55V  V2・・49Vの例 アイドル・・0.1A 負荷電流・・17.32A  Rs・・ 0.348Ω

電流が2倍でも電圧が変わらない・・・安定化電源以外これは設計不可能です。 給電源には必ず抵抗
が付きますので2オーム600Wを担保するなら、図15-2に示す如く、4Ω時の駆動電力量は、必ず上昇します。 その様子を図15-2に示します。
ここに示しました特性は、商用電源から変圧して整流器で直流に変換し、更にそれを平滑した結果での話です。 つまり給電系回路の全てを表した給電源等価抵抗Rsのレギュレーションカーブとなります。
通常パワーAMPに供給する電圧は、安定化されません 安定化すれば電圧は一定になりますが、瞬間的な負荷変動には制御遅れが必ず発生し、音質性能を担保出来ないからです。
   (制御遅れの殆ど無い、中電力用安定化電源装置も別途解説の予定です。)
給電性能を語る上では、変圧器と交流を直流に変換する整流回路は避けて通れません。

全てこの設計仕様で、スピーカーを駆動する能力が決定されます。(ダイナミックヘッドルームも
つまり変圧器自身のレギュレーション特性を正しく設計する事が、Audio用パワーAMP設計の全ての源となる次第です。 俗に言われる電源容量を決める設計になります。 
例えば、図15-2に示しますアイドル電流負荷時の電圧と、所望する定格出力電力時の電圧値の落差がそのまま、給電源等価抵抗に直結し、この電圧差をどの程度に設計するかが全ての要となります。
この値を少なくする程、システム価格は高騰します。 ではこの値はいったい幾ら?・・・各社マル秘事項となります。 製品のグレードによっても変化しましょう。 ・・と、ここで解説を打ち切ったらブーイングが来るでしょうから、もう少し変圧器と整流回路を掘り下げて解説を加えましょう。 

まず変圧器自身のレギュレーション特性について説明します。
変圧器は銅線を巻いて製造しますので、既に解説しました如く銅線抵抗が存在します。
この巻線抵抗成分がレギュレーション特性と直結します。(変圧器コアー容量とも密接に関連)


15-5.変圧器のレギュレーション特性
変圧器を使ったインピーダンス整合の項で既に解説しました通り、変圧器の巻き数比をnと置けば
電流は1/nの関係で、電圧はn倍になります。 これが変圧の基礎法則です。
電源トランスも信号用トランスも理屈は同じです。


●ちょっと専門的ですが・・ ●
変圧器のレギュレーション特性を表現するには、下記の簡略式を使います。
電圧変動率η=i1Rt/nE2 より 変圧器の抵抗分Rtη・n・E2/i1 ・・・ 15-3式
電圧変動率η=(無負荷電圧)-(出力電圧)÷(出力電圧) で計算します。

Rt・・ 変圧器抵抗             ・・一次巻線抵抗+n(二次側巻線抵抗)+リアクタス(損失)分
RL・・ 変圧器二次側負荷抵抗   ・・システム設計ではあらゆる負荷抵抗分をこの値に換算
n ・・ 一次二次変圧比(巻線比)
E2 ・・ 二次側出力電圧(DC換算)・・必要とする負荷抵抗と電力で決まる電圧値。
i1 ・・ 変圧器一次側入力電流   ・・何種類かある二次巻線負荷の合計電流を一次側に換算


例えば・・ 
600W 2Ω-モノーラルAMPを設計するとして(簡易計算)
100V入力してE2=49V なら 巻き数比n=0.49 (1/n=2.04) 
変圧器抵抗Rtは、電源トランス自身の電圧変動率に直結します。 
電圧変動率は1kVAの容量なら、約3%程度に仕上がります。
i1=i2/n=17.32/2.04=8.49 (2Ω負荷時の一次側流入電流)
Rt=(0.03×2.04×49)/8.49 =0.353Ω・・・変圧器抗値

変圧器容量は100V×8.49A=849VA+(変換損失分) と計算出来ます。 実際はこのクラスの容量なら変換損失が5%程度ありますので、損失分を加算し容量を計算します。 ・・891.45VA 
更に、これに巻線の耐圧安全性を考慮したコアー容量(サイズ)が必要となり、その他周辺回路の電力分10%を加算すると、概ね1kVA程度の変圧器容量が必要だと理解出来ます。 
実際のシステム設計はこんなラフな設計では対応不能ですが、概略値は知る事が出来ます。

既にお分かりの如く・・、システム設計時に、このRsの値を想定した段階で、全体品質が自動的に決まる訳です。 従って高級品か否かを分ける分水嶺は、この設計指標が全て握っております
(瞬発力は更に別の要素が加わります)

詳しい設計手法は省きますが、一次側に流れる流入電流値から変圧器容量が概略求まれば変圧器の体積と重量が求まります。 その関連特性を図15-3に示します。自作トランスを発注されるなら参考にして下さい。

    

例えば、300VAクラスの変圧器ならBm値は10500ガウス、 1kVAクラスなら11000ガウス程度の
磁束密度の成層珪素鋼板が使われます。  カットコアー用オリエント材は、300VAクラスならBm値は
15500ガウスで、1kVAでは16000ガウス程度となります。 
図15-3から分かる通り、その分小型軽量化が可能です。  更に、二次側の起電圧は、300VAなら1V
当たり巻線数は2.2T
(ターン)程度で、1KVAクラスなら1.3T程度が使われます。
此の例では、カットコアーを使っても変圧器だけで、約10kgの重量になる と求められます。
例えば、オリエント材は通常の珪素鋼板に対し、鉄損と呼ばれるコアー損失が、約半分となります。 

珪素鋼板の場合、コアーサイズは金型の都合で標準化されており、1kVAならEI-171型コアーが使われます。 巾171mm 奥行142.5mmで積み高さが247mm程度となります。
(コアー体積=6000cm3として)   

実際の設計では、絶縁に対する安全性を考慮し、10%程度余裕を見てコアーサイズが設計されます。当然コアーサイズは大きい程、図15-2に示しました レギュレーション特性は向上します。
変圧器用EI型コアー寸法の一覧は、下記を参照下さい。
http://www.jeita.or.jp/japanese/standard/book/RC-2724A/#page=5

標準的なEI型コアーサイズと変圧器の電力容量との関係は、下記を参照下さい。
http://www.jeita.or.jp/japanese/standard/book/RCR-2702/#page=17

以上より、600W-2ΩモノーラルAMPでは、電源変圧器だけで重量が10kgにもなり、これを支える
シャーシ構造は、それに見合う剛性と重量を必要とします。 その他の構成部品を加えた場合、軽く20kgを超える製品重量となりましょう。  
この重量は、人間一人が腰を痛めず持てる重量の限界付近です。 製造側の重量ハンドリングもこの
重量限界があります。(労働災害防止)

ステレオAMPで考えると、電源変圧器の
Rt成分共通インピーダンスとして働きますので、左右
チャンネルの
混変調への影響を考えた時、大電力程モノーラル設計が望ましい事になります。

変圧器の損失分は、この他コアーを磁化する為に必要な励磁電流損があります。 
ここにも種々ノウハウがありますが、上記の如くコアー容量に対し、取り出す出力電力を下げた設計は、このRtと、励磁電流分(リアクタンス成分)の損失低減に繋がります。
(励磁電流・巻線抵抗・鉄損・漏洩リアクタンス・・・n2倍で等価回路的に処理出来ます)

トロイダル式変圧器は、磁気抵抗が低い故に起動時の突入電流が大きいと言う特徴があります。
設計上は、家庭用ブレーカー電流と突入電流との関係を勘案し、変圧器設計を行うのが一般的です。
しかし、同じコンセントから沢山電力を取ると、ブレーカーが落ちる事になり、ハイパワーAMPへの給電注意が必要です。 更にEI型成層コアーに比べ、この励磁電流が少なくて済む(伝送損失小)事と、
同時に、Rs値を大きく低減出来る要素を備えます。
(電圧変動率の大幅低減・コアーの磁気飽和限界が高い・重量軽減にも大きく貢献。)

以上解説した内容を知っておれば、製品に搭載された変圧器寸法を見ただけで、設計品位が分かる
次第です。 高品位設計では変圧器サイズは大きくなり重量と音質は完全にリンクします。 
特に 図15-3のカーブは、電源設計のバロメーター(基準)としてご活用出来ます。

もう少し例を上げて解説します。
既に述べました通り、負荷抵抗が1/2になった時、出力電力が自動的に2倍になる設計は、とても高価な製品となり、世間一般的には、過剰品質と見做される事が多いのです。(高級品は別)
従って上記のRsの値を、もっと緩和した設計が導入されます。

つまり、定格最大電力値が決まったら、それに見合う必要なRs自動的に決まります
この電源トランスのレギュレーション特性の目標品質の部分はメーカーノウハウです。
負荷抵抗1/2時に流れる電流は、既に解説しました如く、ある一定の時間内に限ってAMPが破壊しないように半導体の選択と、放熱設計が成される次第です。

例えば100W・8ΩのステレオAMPなら・・
Im=√(2×100)/8=5A √2で除して3.535A rms。 (ステレオ時2倍で7.071A)
駆動電圧は?

V=√2×100×8=40Vrms となり、アイドル電流時の電圧を45V 0.1Aなら 必要なRs値は?
電圧変動分を6Vとするなら、 Rs =46-40/7.071-0.1=0.860Ω と演算出来ます。
ここで負荷抵抗が1/2になれば、電流は2倍でRsでの損失電圧は、ΔV=0.860×14.14=12.34Vと
求まります。

つまり負荷抵抗8Ω時の電圧40Vが、4Ω負荷では約27.7Vまで下がりますので、取り出せる電力Pは
P=27.82 /8=96.6W  となり 負荷半分 電力2倍の論理から、遥か遠い・・ 結果となります。
この4Ω時のパワー値を幾らにする・・・ここが製品メーカーの匙加減(音質)となる次第です。
この電圧変動分は、変圧器と整流回路の相互作用で決まりますので、深くは整流回路の項で解説します。

ここで注意が必要な事は、電流は2倍流れておりますので、電力半導体にかかるストレスは、定格負荷時に比べ遥かに大きく、しかもある一定時間内しか通電が許されない状況になります。

これをクリアーするには、既に解説しました通り、電力半導体を2個以上並列に接続し、定格負荷時の
2倍の電流に余裕で耐えられる設計とし、且つこのRsの値を定格負荷出力の値に対し、1/2以内に改善すれば、負荷抵抗半分で電力2倍のAMPが出来上がる理屈です。
その場合、繰り返しですが4Ω負荷で200W-AMPを設計すれば8Ω負荷ではRs値に応じて自動的にその出力パワー値が決まる訳です。


総括
300W 4ΩモノーラルAMPで、600W 2Ωを保証する給電用変圧器を例に取り、負荷抵抗1/2で電力が
確実に2倍を保証するモノーラル構成の設計要件を想定し、解説してみました。
設計的には、一番厳しい電力負荷条件で演算し、軽負荷条件では自動的に物理性能は担保されます。負荷 1Ω時は、Rs値が既知なら、上記手順で演算出来ます。


国産Audioの製品設計では、価格対費用の関係で、トロイダルコアーの使用が困難であります。
トロイダル式変圧器の場合は必要に応じ、専門メーカーに問い合わせ下さい。
(Battery駆動では、優れた実装設計であれば、ステレオ構成でも殆ど影響は無いでしょう。)

何れにしても、スピーカーの音圧変換能率が低い事が、全てAMP設計側にしわ寄せが来る次第です。
高効率スピーカーなら、変圧器サイズ(重量)を大幅低減出来ますので、強烈な省エネになります。
低音再生は、いくら重厚長大が必要だと叫んでもスピーカー側で僅か3dB音圧変換効率を上げる
処置をすれば世の為になる事は間違いありません。(但しWoofer再生帯域での変換効率)


● 信号用出力トランス

Audio用出力トランスと、コアー材に関しては、下記を参照下さい。 
このサイトは特に真空管式AMPに関して造詣が深い様です。
http://www.tamura-ss.co.jp/tsbar/special/special_13.html

電源変圧用コアー材には通常電磁珪素鋼板が多用されます。 その上の素材はオリエントコアー材で
更にその上はパーマロイコアー材、最高はアモルファスコアー材となります。
電源変圧用としては、オリエント材迄が一般的です。 その上のコアー材はあまりにも高価であり特殊品エリアとなります。 信号用変圧器にパーマロイ&アモルファス系が使われますが、とても高価です。

15-6.瞬発力を求めて

今回のテーマは、微細時間内に於けるAMPの駆動能力を考えるのがテーマですが、上記の説明は全
て、ベースとなる基礎的な駆動能力の良否を考える上で、変圧器の電圧変動率を解説して来ました。
ともかく、巻線の直流抵抗を下げ、変圧器のコアー容量を上げるしか、改善手段が無い事が分かり
ましたが、以下更に微細時間内に於ける電圧変動特性を考察してみましょう。
冒頭に示しましたトーンバースト波形の20mSec領域に於ける最大絞り出せるパワー何によって差配されるのか? とう点です。 当然変圧器のRt値が小さい事が大前提条件であり、他の設計項目を云々しても、無い袖は振れない訳です。 その上で他の設計項目で何が必要か? を考察します。 

短時間に大量の電気エネルギーを負荷に送り込む事を考えた場合、後残っているのは直流変換する
部分の整流器と電解コンデンサしかありません。
その他の分野は配線材と、エネルギーを受け渡す時のインターフェース用部品があるのみです。

先に結論を申せば、あとの瞬発力云々の性能、整流回路の電解コンデンサが握っている。
カラクリの結論を先に申せば、変圧器と同じく、電解コンデンサの内部抵抗Crと電流容量・静電容量
依存します。
つまり、負荷抵抗に対して如何に短い時間内に電流を充電放電出来るか否かで決まります
このジャンルで最も重要な事は、変圧器は単純にRs値の低減対策でしたが、電解コンデンサは
Audio信号帯域内に於けるインピーダンスの振る舞いが重要になると言う事です。

又容量値が大きいとは、周波数が高いエリアでインピーダンスが小さい事を意味します。
同時に、溜まったエネルギー量はこの容量値に比例します。 ですからエネルギー供給能力的には、
大電流を、可能な限り長時間流し続ける事が、音質性能向上に資するとなります。
分かり易く言えば、容量が大きいとは上記Rsによる電圧ドロップ分を時間軸上で緩和する事と等価です。更に瞬間電流供給能力は、Cr値と、コンデンサの許容最大電流量が差配します。

● コンデンサの交流抵抗 ●
最小必要限の電気理論を理解して頂く必要があります。 文系の方には筆者の文才では、果たして
ご理解頂けるか? 自信がありませんが、頑張って読んで下さい。

交流理論の基礎 
電気回路部品の中で、コンデンサの役割を考えてみましょう。
これは電荷を溜めるのが最大の役割です。 電気的には容量値F(ファラッド)で表します。
1F静電容量的には、地球1個分の入れ物の中に溜まる電荷の量となります。
電子回路に採用される電荷の容量単位は μF(10-6・マイクロファラッド)となります。
小信号で且つ高周波を扱う場合は、nF(10-9・ナノファラッド)と、pF(10-12・ピコファラッド)を扱います。
静電容量の定義は、1ファラッドとは1クーロンの電気量を充電した時、1Vの直流電圧を、2つの
導体間(電極)に生じる静電容量で表現します。
別の表現では、1クーロンとは1秒間に 1Aの電流量に相当する電荷量の移動
定義されます。
整流回路用電解コンデンサの容量は、Audio設計では100000μF程度までが、該当範囲となります。

静電容量の周波数特性
コンデンサの両端インピーダンスは、周波数の値で変化する。
原理式: コンデンサの両端に於けるインピーダンスCZ=-j 1/ωC (ω=2πf) ・・・15-5式
記号j は複素次元における、ベクトル量を表す・・・ 文系の方はすでに何の事やら?
理屈はさておき・・分かり易く演算例を示しましょう。 ここに10000μFの電界コンデンサが有ったとします。
ここで60Hzの交流で充電したと仮定しましょう。 その時のコンデンサ両端に於ける交流抵抗は? 


単純に 1/ωC より、 1/(2π×60×10000×10-6)   ・・1/(3.76991)=0.265258Ω
それでは、周波数を2倍の120Hzにすれば・・同様に      ・・1/(7.53928) =0.132629Ω
更に 周波数をその2倍の240Hzにすれば・・          ・・1/(15.0796) =0.066315Ω
つまり、周波数が2倍になれば交流抵抗インピーダンスの値が半分になる関係となります。

この逆がコイルで、インダクタンス(Hヘンリー)を持つ部品では、周波数がになればインピーダンスは容量性とは逆に、2倍になる関係を示します。 この関係を一目で分かるように表した図を、図15-4に示します。 インダクタンス成分による抵抗値は、jωLで表す事が出来ます。 ・・・ 15-6式


図の見方
下段水平軸は周波数目盛りを表し、1kHzから1G(ギガ)Hzまでの範囲を示します。
左側の縦軸(垂直方向)は、インピーダンスの値で、0.001Ωから100000Ωまでを表します。(指数表示)青の線コンデンサの理論カーブで、赤の線インダクタンスの理論カーブを表します。

各々部品定数の、容量又はインダクタンスの値に応じて、計算した結果を青又は赤のカーブで示して
おります。 縦軸左側の|Z|Ωとは、交流抵抗の絶対値を示すと言う意味です。
これは、非常に便利なグラフで、プロもこのグラフを見乍ら、簡易設計業務をしております。
通常Audio設計では、回路設計・実装設計分野では200MHz程度迄の領域を頻繁に使うので、簡易
設計では、この程度で十分対応出来ます。 (詳細設計では、正確な演算が必須です。)
更に周波数が低くなると、更に細かく検討する必要が生じるので、別のグラフを準備します。
                     

コンデンサに交流信号を与えると、電圧と電流の位相関係90度異なる事を覚えておけば良いでしょう。その様子を図15-5に示します。 (電流位相は電圧に比べ+90°進む)
とりあえずコンデンサに関する基礎知識としては、この程度知っておけば良いでしょう。       
インダクターはコンデンサと逆の関係にありますので、電流位相は電圧に比べ-90°遅れます。 

今回も紙幅が尽きました。
次回は交流を直流に直す整流回路を扱います。 同時にシステム設計の信頼性も扱う予定です。
瞬間的駆動能力の一端を整流回路に求めてHi-Fi設計の解説を行う予定です。
文系の方には少し難しい内容だったと思いますが、読んで分かった心算程度でも十分です。


                                                  筆者拝

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