【Z・特別講義11】

[ 振動対策の深ーいお話と AMP 開発の舞台裏  ]



第11回 寄稿
D級AMPの解説が終わりましたので、大電力信号分野に関しては、一端終了させて頂き、エネルギー
供給分野に進もうと考えます。 (安全装置の詳細は省略させて頂きました)
今回は息抜きで、開発現場の裏模様を交え、差し障りの無い範囲でご紹介させて頂きます。

エネルギー給電分野は、あらゆる事象の総元締めであり、機能を根っ子で支える役割を負います。
これは、母乳の如く、その元締めである血液は、ピュアーである事が要求されます。
Audio分野でもデジタル化全盛時代ですが、超微細領域である-120dB次元の信号を表現するには
純粋無垢な超高品位エネルギー無くして、実現は不可能な相談です。

分かり易く表現しますと、信号のS/Nとは=給電エネルギー源のS/N でもあります。
大電力エネルギーの供給分野から、微細電流エネルギー分野迄、順次解説を進めたいと考えており
ます。 (以下特に断らない限り、1Vを基準として-**dBの数値を扱います。1V=0dB)

今回も各種ご質問から解説致します。 電気的GND関連のご質問にお答えしましたので、今回は
機械的GND構造の考え方について、知見(独断と偏見混じり)を記述します。
機械系は専門外ですので、間違いは ご指摘下されば幸甚です。


Audio装置の機械的GND処理

機械振動と音質問題
これはかなり奥が深い問題を抱えております。 半導体であれ、真空管であれ増幅後の、電気性能としては、電極の振動による、マイクロフォニック雑音と言う厄介な問題を抱えております。
例えば、増幅度の高い回路上の、信号伝送ケーブルを叩くと、機械的ストレスに比例した異音が発生
します。  全ての電子回路部品は、この振動に伴う電極ノイズから逃れる事は出来ません。

特に増幅度が高い真空管は、その典型的な例で、スピーカーからの音圧を受けて、空間結合します。
この振動がAudio信号に混変調を与え、音質を大きく阻害します。 
製品開発次元では回路設計よりも、この機械振動対策の方が、音質対策として重要になる事が多く、
その対策に難渋したと記憶します。  故に、この分野はノウハウの宝庫でもあります。

この課題は、Audio装置自身から発生する振動を、実装ボードに如何に与えないような構造にするか?  もっと積極的には、製品自身の筐体に、如何に振動を与えない防振構造とするか?
・・と言う課題となり、掲題のAudio装置全体の、機械的GND処理を如何に考えるか・・と言う課題に
繋がります。 機械振動をまったく含まない筈の、パワーAMPでも、振動源は多く存在します

例えば、ご質問の中に電源トランスの唸り音に悩んでいる・・・と言うユーザー様が多いと感じますが、
電源トランスは唸り音を発生しなくても大なり小なり振動源となっており、しかも製品筐体シャーシと
ダイレクトに結合されており、システム全体に悪影響を及ぼす事になります。

ここで筆者の体験談をご紹介します。
ある日、製品の最後の仕上げ段階で、どうしても音の抜けが悪く、悩んでおりました。
そして宙吊りサーカス事件が発生します・・。

ある日同僚が、血相を変えて筆者の処に来て、袖を引くのです。 曰く、トランスを宙吊りの刑に処した
ので、音質を確認して欲しいと。  シャーシに加わる微振動エネルギーを、完全に遮断する実験です。 某TV局のフレーズでは無いですが・・  何という事でしょう! 
今まで聴いた事もない 透明感溢れる、実に美しいメロディーが、流れて来たではありませんか!

まるで森林浴の中で聴いているかの様な、錯覚に捕らわれる、唖然とする程の素晴らしい・・の一言に
尽きる音の桃源郷を発見する思いでした。 
回路設計で、あ~だ!こ~だ!と、考えるのがバカバカしくなる程の、鮮烈な衝撃を受けた次第です。 即ち、それ程に電源トランスから発生する微振動Audio信号に悪影響を及ぼしていた次第です。

一度、この電源トランス宙吊り事件を体験してしまうと、人間後戻り出来ないもので・・(笑)
実際の商品化に際して、これまた頭を抱え込んでしまう始末です。
事の顛末はともかく、機械振動が増幅素子に与える影響の深刻さを、骨身に沁みて体感した次第です。 ですから、電源トランスの唸り音は、振動発生の極限であり装置の音質を腐らせる最悪の存在なのです。勿論個別の電子部品で、振動の影響を激しく受ける部品と、そうでない部品が存在します。

これらの振動を受ける側の部品で、特に敏感なのは、高い増幅度を扱う電子部品 となります。
特にアナログ回路のフロントエンドを扱う電子部品は、振動に対して敏感に反応します。
信じられないでしょうが ・・ デジタル回路では、水晶振動子がその代表例です。

別途デジタル系信号処理の項で触れたいと考えておりますが、機械振動部品の代表であるこの部品は音質設計の要であり心臓部です。 実装設計上は、外界からの振動を防止する設計が必須となります。(高級品は通常この対策を講じるのが一般的)

更に、装置の中にモーターなど回転系を含む場合、これは振動の宝庫です。
近年ハードディスク装置を内蔵する、デジタルAudio機器が存在します。 設計現場では、この振動との戦いで悩んでいる筈です。 (回転軸受の工夫とUnit全体の防振構造で、振動対策するのが一般的。) 変圧器は、原理上50Hz又は60Hzで振動し、唸り音を発生しますので、高級品は特定の容器に入れてエポキシ系等の接着剤で、全体を強固に固定します。(うなり音と振動対策)

元々振動が少ないトロイダルトランスでも、振動から逃れる事は出来ません。
電源トランスは、シャーシへの固定手法で、ゴロゴロ音質が変化する厄介な存在です。
アマチュアの改善手段は、電源トランスのみ信号処理系シャーシから、分離独立させる事だと思います。
但し、エネルギー給電とリターン線路上の、電気的結合手法には、特段の配慮が必須です。
(結合用接触部品を排除、ダイレクト結合を推奨)
一部の高級Audio装置では、この設計手法を採用した例が見られます。

トランスは空中に浮かす事は、出来ませんので、トランスとシャーシ間に振動吸収材を挟み込んで
固定する手法があります。  但しシャーシとトランス筐体は、電気的に繋がっている必要があります。
拙宅の自作チャンデバは、鉛の薄い板を何層にも重ね、トランスとシャーシ間に挿入しております。 
ともかく、これら高感度部品を搭載したプリントボードに、振動を与えない事が基本となります。

振動対策と言っても、どれか一つを対策すれば、絶対音質が良くなる・・と言う処方箋は存在しません
実に細かい要因分析と、対策の積み重ねの上に、音質は創り込める次第です。
その一部を、以下ご紹介します。 何度も繰り返しになりますが、対策して効果が無ければ、それを
マスクする要因が別にある・・と思考し、次の改善手段を工夫するのが音質対策の王道です。

話は逸れますが、車載用Audio機器では、ホームAudioで追及する水準での設計は、ナンセンスであり
この分野は追及されません。 車載の場合、車体を通じてリターン電流を流しており、この影響の方が
遥かに上回り、設計の文化が異なります。 (走る事が目的で、振動は当たり前なので・・)
少しグレーゾーンですが、同じAudio装置でも、搭載する車種によって音質が異なる事は、確かです。 
つまり車体シャーシの剛性で音質は変化します。 特にドイツ車の如く、シームレス溶接を採用した車体は、高音質の傾向を示すようです。(高剛性=電気的な低インピーダンス化と同義語)


トランスの唸り音の原因

肝心の、唸り音対策で困っている事へのご回答です。
これはトランスのコアーを締め付ける強度に、問題がある事が大半です。
つまり、コアー自身が唸る場合は、コアーを形成する珪素鋼板と呼ばれる積層した部分を、強固に締めつける事が対策の基本となります。 此れでダメなら、全体をガチガチに固めてしまう事以外に、手段がありません。
真空管式AMPで多用されます、外鉄型と呼ばれるトランスでは、コアーを締め付けるナットが露出して
おり、これを再度締め上げる事で改善可能です。 しかしトランス全体が、ケースの中に埋没している
場合、残念ながらこれは部品全体を交換するしか、効果的な手段が存在しません。

更に、小型トランスでは単純にコアーを金属で囲う場合があります。  この場合、コアーを保持する
金属ケースの締め付け力が弱い事が考えられます。  

その他巻線構造と、コアー間の機械的な固定強度が不足する事が考えられます。  
何れの場合も、変圧器製造過程で、何らかの不具合が有ると推定します。 
(通常トランスは、接着剤で全体の構造物を覆い、固定するのが一般的)

どのAudio製品メーカーでも、唸り音は初期品質を維持する上で、厳しく管理されている筈です。
筆者の会社でも、電子機器の騒音レベルは、無響室で厳しく初期品質を管理しておりました。 
経年変化で唸り音が変化するのは、記憶にありません。

以上のような次第で、電源トランスの機械的な微振動が如何に音質に悪影響を与えるか!・・の視点で解説してみました。 給電トランスの設計次元の話は、次回以降に掲載予定です。(唸り音含め)


木製ラックへの搭載  ●

Audio機器を何台も上に積み上げて、聞いておられる方が存在します。  電気的・機械的な影響を
考えれば、全てこれは木製ラックの上に、各々並べて運用される事を、強く推奨します 
例えば、CDなどメカニカルな振動を内蔵する機器は、特に敏感です。  良い悪いは別として、製品の
トップケース上に、数kgの鉄アレイを簡易的に乗せてみて下さい。 (書物とか非磁性体が望ましい) 
放熱に問題が無いなら、ケース全面に板を乗せ、その上に重量物を乗せ、重量が均等に加えられる
手法が理想的です
   特にローコスト製品の方が、音質変化は顕著に表れる筈です。

つまり、重量物を乗せる事で、内部振動が抑えられQダンプされ)、振動モードが離散し、音質改善の
因となる事が多いのです。  これは、振動の重要性をご理解頂く上で重要であり、解説の一環として
取り上げてみました。 (Qとは・・・共振のピークの鋭さ程度を表します)

上記試験は、厚み3cm以上の木材の上にAudio機器を乗せて実験する事が条件です。
つまり、機器から発生する振動エネルギーは、何らかの形で吸収する必要があります。
振動吸収には、コスト的に木材が最適だと考えます。 厚さが薄い場合、効果が十分発揮出来ない
事があります。 振動エネルギーは、基本的には緩衝材の中で、熱に変換してこれを吸収します。 
よって素材内容と構造により、熱への変換効率が変わる故、音質への影響も変化します。

金属製ラックも存在しますが、必ず何処かの周波数領域に、機械的振動インピーダンスのピークを持ちます。これを因として混変調を受け、音質に影響を与える事が多いのです。
金属製ラックは、電気的にも機械的にも制御困難で、筆者はお薦め出来ません。

Audio機器の足受け構造で、後つけパーツが販売されておりますが、これも全てメカニカルGND対策
部品です。 筆者が過去に試験し、優秀と認めたAudio用ショックアブソーバーをご紹介します。
医療機器分野で開発された、商品名がソルボセイン (SORBOTHANE) を紹介します。 

この厚みが7mm程度で、直径5cmのクッション材を、上下からアルミニウムでサンドイッチした品物が
市販されておりました。(現在は?)
これをCD等Audio機器の足に敷き込むと、効果がありました。(重量制限あり・写真参照)
又同素材で、30cm×30cm程度の薄い材料なら、秋葉原で入手できる筈です。

            

某社のAudioラックの如く、材木チップ材を5cm程度に圧縮加工したラックは、内部損失が大きく、効果
的だと申せましょう。 重量が極端に重い、非磁性体の金属なら効果が期待出来ますが、この場合は
接地する床強度が高い事が重要となります。
拙宅では、家を建設する段階で、床下に布基礎を施工し、その上にフローリング材を貼り、械的な
床GNDを取る構造
を 採用しました。 
スピーカー装置を含む全てのAudio装置は、この布基礎の上に鎮座しております。




スピーカー装置と、床GNDとの関係  ●
スピーカーの、床受け面構造も音質を大きく左右します。 スピーカーは振動するのが仕事ですから、
床受け用足構造は、音質を大きく左右します。
一部海外メーカーで、細い脚による点接触受けの形式がありますが、スピーカーBox全体楽器が如く鳴らすのか可能な限り振動を抑えるのかで、選択肢が変わって来ましょう

日本のスピーカーメーカーは、面受け構造が多いようです。 一般的に、床面1点でのピンポイント受け型のメカニカルGND構造は、振動への感度(Q値)が高く、制御困難な傾向となります。
小型ブックシェルフ用・スピーカースタンドは、これもかなり奥が深い形態です。
まず足の高さを如何ほどに?・・から始まり、スタンドとフロア間の接合・及びスピーカーBoxと、スタンド間の接合手法が絡みます。

まず、足の高さはヒアリング姿勢と強くリンクします。  Woofer Unitの高さは、床面反射への影響を
考慮し、スピーカー外形の端から床までの高さは、最低30cmは必要です。
(フロア型スピーカーを設計する場合、必ずこの寸法は考慮に入れます)
特に、スタンドの足柱中に、振動を効率良く熱変換する為、 砂・又は小粒岩石を入れる例が多く、ここはここはマニアの出番でしょう。 更に足を正方形とするか?長方形とするか?複数柱にするか?
議論があります。ここは各自お確かめ下さい。
更にスタンドの台を構成する板厚は、ラックに準ずる扱いで良いでしょう。 床とスタンド面との接触構造も、スピーカー本体と同様の、GND処理手法に準じて良いと考えます。

筆者の体験では、スピーカーBoxとスタンドの塗装で、音質が大幅に変化する事を認めております。 
これは、理論上は板材の振動を塗装剤でQダンプする事に由来します。
例えば、ピアノの塗装は、特に重要なアイテムであり、塗布厚さ・塗装剤・塗回数などノウハウに基づき厳重に管理されております。  マニア次元でも、取り組む価値があるアイテムだと申せましょう。

拙宅の例では、フィンランドバーチ材にオイル系塗装を掛けましたが、これは大失敗でした
白木のままの素材が断然優れております。  フィンランドバーチ材を扱う方はご参考にして下さい。
ともかく高音域の響きがQダンプされ でした。(ジャズ系が好きな方は特に・・・)


それから、フロントバッフル版にスピーカーUnitを止める工法は、木螺子では無く貫通させ、裏から
ボルトナットで、強固に固定する事を お薦めします。
更に、木材は乾燥と共に痩せるので、半年に1回程度ボルトの増し締めを お薦めします。
この処置で特に、高域の抜け・サラウンド感等の 響きが良くなります。
(すみません!・・これ後面解放型でないと出来ない相談でした。でも増し締めは効果があります。)

更に、スピーカーUnitを固定する時、螺子頭と本体との間に挟む ワッシャーでも変わります!
ワッシャー無しで止めておられる方、ワッシャー材を種々変更されてお試し下さい。
銅・アルミ・フェルト追加・・それとワッシャー直径も吟味下さい。 (銅ワッシャーがお薦め)
拙宅は、極太頭のステンレス螺子で、ダイレクトにバッフル板と結合しております。(意匠は無視)

拙宅のスピーカーバッフル板は、床からフロ-ト させてあります。 これはバッフル面の振動を直接床に逃がす事を嫌った為の処置です。 バッフル板は両サイド板の足部に、硬質フェルトをクッション材として張り、床GNDを取っております。 
その床受け面のGND構想は可能な限り固有振動を持たない事が理想とされます。
筆者の体験では、コンクリート構造の床に勝てる手法は無いようです。(特に低音が激変)

木製ラックのメカニカルGNDは、設置方法如何では、音質が変化します。
このラックを受けるフロア構造で、例えば、畳のような柔らかい場所と、フローリングの様な木質構造
は条件が違い、音質にも影響を与えます。 畳なら別の広い面積の、厚手木板を敷くなど、対策をお勧
めします。  ともかく、グラグラと揺れる床からは高音質は望めないのが一般的です。

加えて、スピーカーのネットワーク部品には、理想は振動を与えない事です。 従ってマニアの方は当該部品を、スピーカーBoxの外部に、装備される事が一般的です。 

スピーカー内部なら、 音圧の影響を受けない様に密閉し、且つ振動の影響が最も少ない、底板の上に搭載する等の工夫をします。  スピーカー用の配線にも、振動を与えない工夫を お薦めします。
その意味で、Boxのバックパネルは最悪の場所となります。  ネットワーク用コイル信号電流で振動
します
ので、これもエポキシ系接着材等で強固に固定します。 (動くとインダクタンスが微妙に変化


楽器演奏用響板

木製なら、聞く位置に対して木目方向を自分の方向に向けて設置する事をお薦めします。
オーケストラで演奏する、バイオリンソロ奏者の下には、響板が設置される事がありますが、これも舞台上から客席側に木目が通るように設置されます。 つまり奏者の骨伝導を介して伝わる振動を、この響板の木目方向にエネルギー変換し、振動伝達効率を上げる手法です

グランドピアノの下に、響板を敷くのも、まったく同じ原理で運用されます。
舞台の床面が、音楽再生専用設計で無い場合、この響板を使って音響改善を行います。 
その材質・厚み・木組み構造等により、大きな音質差が発生しますので、これも奥深いテーマです。

床がフローリング材構造なら、板目長手方向の延長線上に、スピーカーを配置する事をお薦めします。
原理は上記と同じです。 スピーカースタンドの上下木製台も、同じ処理を推奨します。
それ程に、このメカニカルアースは奥が深く、且つ音質に多大な影響を与えます。
スピーカーBoxの板取も、木目方向を考慮に入れた、設計が成されております。


購入したAudio製品の音質改善実験  ●

絶対に高級品には手を入れない・・と言う条件で、下記の実験をお薦めします。

トップケースを開け、特に信号処理用プリント基板上のネジを、1/2回転を限度緩めてみて下さいあくまで自己責任です) 結論は、ここには記述しませんので、自らの耳で確かめて下さい。  
プリント基板を固定する場合の力は、各社トルク管理をして締め付けております。 
しかし、これが過ぎる電子回路を乗せているプリントボードに、ストレスを与え音質劣化要因となる事が 一般的です。 その意味で螺子1/2回転、緩くする効果が期待出来る筈です。 お試し下さい。

但し、シャーシと電気的GNDを取っている螺子は対象外です。(金属部品の上に螺子がある構造など)全ての螺子がこの構造なら、緩める事は出来ません。 通常4個でボードを固定しておりますが、螺子
1個毎に音質チェックしても聴感差が出ないので、機能ボード単位で実験されると良いでしょう。  
変化無しなら元に戻して試験終了です。 ついでにトップケースの有無も試験出来るでしょう・・ 

ケースを外すなら、携帯電話を1m以内接近させない事が条件です。(携帯電話での誤動作防止策)
本件は、筆者は一切責任を負えませんので、実験されるなら自己責任で行って下さい。
又重量物が乗っているボードは、緩めないで下さい。


しかし一般的には、重量物の乗ったボード上に、振動する電気部品が乗っている事が多いものです。
この場合は、シャーシとの間に防振材を経由して螺子で固定する事を推奨します。
特に、機器内にMotorが搭載されている場合防振対策必須要件となります。

以上の実験を実施しても、何の変化も無いならAudio装置の完成度が高いか、又は他の妨害要因が
介在しており、効果が発揮出来ない事を意味します。 一般的にAudio機器は、ボードをルーズに固定
する事が出来ません。 従い、プリントボードに強いストレスを与える事が多いのです。

筆者の体験では、回路&実装設計の完成度が高い程シャーシとの結合強度を下げれば音質改善
する例が多いのですが
、商品レベルでは輸送の都合上、音質対策として導入不可の経緯があり、上記提案に至った次第です。


市販品の音質改善手法例  ●

手軽に出来て効果のある、Audio製品の音質改善手法を、ご紹介します。
まず、巾1cm程度の糊付きアセテートテープを準備します。 (糊の塗布量が少ないタイプを強く推奨)

これを、電解コンデンサの頭部に張り付ける。 (防爆弁の頭は自己責任で・・) 
あまり発熱しない電力半導体のボディーに張り付ける。
例えば蛍光表示管ムカデ足の端子部に張り付ける。 
薄く面積が大きな部品の表面に張り付ける。 
内部配線配線束を銅箔テープで巻いた上から、このアセテートテープで巻く。 
などなど・・ お試し下さい。
その改造実施例の写真を掲載しておきます。

      

爪の頭で軽く叩いた時、ピチピチと刺激的な高い音がする部品は、振動に対する感度が高いと考えて
下さい
 このような部品は、表面にアセテートテープを貼れば、振動が抑えられます。
(振動のQが低下) パワーAMPの終段電力半導体素子と、放熱板の間に銅板を挟むのは、放熱効果
改善と、この振動吸収効果を兼ねております。

CD再生装置では、モーターを含む駆動Unit全体を、シャーシ本体からゴム系の足でフロートさせており
ますが、ゴム材の経年変化による劣化が懸念されます。 上記に紹介しました、ソルボセインを緩衝剤として追加されると、効果的でしょう。

拙宅は、CD-ROM駆動装置の筐体全体にソルボセインを張り付け振動を吸収しております。(写真参照)

    

    

    

ソルボセインは高価な部品ですので、特に振動が激しい部分を狙って、付加される事をお薦めします。
この写真の例は、HDDレコーダーを改造したものですが、音質的にはデジタル臭い音がマロヤカ方向に変化する筈です。  筆者の実績では、特にローコストAudio機器に対し有効でした。 

少し専門的になりますが、電源トランスから漏れる、電磁エネルギーには方向性があり対シャーシに
対して取り付ける方向で、漏れエネルギーの、シャーシに与える影響度が変化します。

自作マニアなら、真空管式であれば伏せ型トランスと呼ばれる方式が優れております。
更に高級品なら、カットコアー型トランスと呼ばれる手法が、もう一段上の性能を持っております。
漏れ磁束に関しては、その上が、トロイダル・リングコアーを使ったトランスと言う事になります。


大電力領域での振動対策例 ●

Audio信号を電力変換する部位の代表である、放熱設計分野が音質に与える影響の一端を、ご紹介
しましょう。 大電力を扱うエネルギー分野は、電源トランスの他に電力素子周辺が該当します。
その代表が放熱板です。 電力半導体にAudio電流が流れると、電力素子はその信号周波数で振動
します。 当然振動すれば、放熱フィンを振動させ、機械的には振動が増幅方向に作用します。 
放熱板の先端で、増幅された振動は、素子電流に混変調を与え、信号品位は低下します。

この振動の連鎖を止める、放熱構造が必要となる訳です。 既にご紹介したアセテートテーブの貼り付
けは、熱による接着強度低下問題がありますので、ご注意下さい。  ご存じの通り、放熱は放熱面積を拡大する程、放熱効率は上昇します。 これには、薄く長く設計し表面積を確保する必要があり、これは大電力を扱う商品程重要となります。  薄くて長い放熱フィンは、当然振動を誘発しやすい事を意味します。 放熱フィンの例を下図に示します。

      

 
解説
パワートランジスターと放熱板の間には、銅板を挿入放熱効果増大と、同時に振動防止策を取ります。
通常は上図右側の振動対策が取られますが、左側の例は積極的に意図して揺らせ自社ブランドの
音質を付加する高等テクニックです。 
海外メーカーに一部採用例がありますが、制御があまりにも難しく通常この手段は禁じ手です。 
製品の放熱フィンを金属で叩き、その残響音が、その製品の音の癖となります。

放熱フィンのエッジ部から不要輻射し易いので要注意です。 (Audio信号の高次高調波が空間に放射されます。)
電力領域の部品では、例えばスピーカー用ターミナル構造まで、影響を及ぼしますが、ローコスト設計
では其処まで手が回らないのが実態でしょう。 当然電源トランスの微振動が、放熱フィンを揺する事を想定した設計が必須です。 同様に放熱用ファンモーターを搭載するなら、その振動対策も必須です。

ともかく、ハードディスク・放熱ファンモーター・電源トランスなど、大電流を消費しながら振動を発生する部品は、全て検討の対象となります。
表示装置に蛍光表示管を使った設計が多いですが、この表示装置も多大な影響力を持ちます
特にダイナミック点灯で制御した表示装置音質に大きな影響を与えます  電極振動のみならず、
消費電流エネルギーを汚す存在なのです。  減光モードを加えて、電流を減らして音質対策する事が
多く、消灯モードを装備する機器もあります。




振動対策の総括 

今回の寄稿内容は、振動エネルギーがAudio信号に与える影響度について考察したものでした。
機械的微細振動エネルギーが、影響を及ぼす範囲は、Audio信号の質的感覚分野となります。
つまり音の透明感とかサラウンド感とか言われる分野となります。 信号レベルで言うと-60dB以下の
領域で、音の質感に関係する対策内容を扱った次第です。

特に、サラウンド感の性能は、エネルギーの時間軸上では、減衰振動領域を考えます。 その時間軸上で、機械的な微振動が要因の混変調成分を、如何に撲滅するか! と言う課題への対策となります。この領域は、設計的には非常に投資コストがかかる分野となり、製品価格を押し上げる要因となります。
即ち、高級品=質感改善ですが、この微細エネルギー分野の質感は、概ね機械振動対策で成立して
いると考えて良いでしょう。 

例えば、電源トランスの防振対策何の素材を使って、如何なる防振対策を与えるか・・と言った分野となります。 当然この対策を打ち込んで、有効な効果を得る為の、電気的な物理上のリニアリティーが既に確保されている・・と言う大前提が存在します。

既に解説しました如く、信号線路上に流れる電流リニアリティーが-60dB以下の領域で十分確保されている事を指します。 故に、この領域で上記設計水準を、クリアーしてない機器に、いくら防振対策を
施しても
効果は表れないと申せます。

このジャンルの検討は、設計の最終段階で、俗に言われる品位のブラシュアップと呼ばれる作り込み
工程
となる次第です。 商品設計現場では、販売開始タイミングとの戦いで、検討時間との真剣勝負
となります。 ローコスト商品でも検討時間と物量を投入すれば必ず改善するのが一般的です。
その不足を補う処置が、今回ご紹介しましたローコスト商品への振動対策導入例です。
高級品になれば なる程、最後のブラシュアップは、困難を極めます。 (コストUp無しで・・ 笑)
余談ですが・・
特にヨーロッパの楽団は、日本での演奏公演を嫌うと聞きます。 (特にバイオリン奏者)
故は、湿気を吸って楽器本来の性能を発揮せず、且つ楽器を痛めるので嫌うと申します。

微振動を正しく制御するジャンルの設計は、楽器に留まらずAudio機器設計の分野でも大変重要な
アイテムとなります。  特にコイル等のインダクタンスを発生させるジャンルの設計は重要です。
各社ノウハウ事項となりますが、 差し障りが少ない範囲で、ご紹介してみました。
読者様のご参考になれば幸甚です。


AMP開発の裏舞台 ●

パワーAMPを含め、Audio機器を開発する現場の評価環境に関して、その裏舞台を開陳して欲しい・・
とのご要望が沢山寄せられております。 残念ながらここは、各企業共 知られたくない秘匿事項に該当しますが、基本的な部分のみご紹介します。 

まず各企業がAMPなど音響機器開発にかける理念から、お話しましょう。 
既に述べました通り、各企業には伝統音質というものが存在します。 (ブランド音質)
自社ブランドのアイデンティティーを表現する上で、製品毎に統一した音質が無かったら、顧客は戸惑い安心感を与えられない・・と言うビジネス上の理念を、各社共通で持っております。
当然筆者の会社にも、基準音質が存在しました。
(個人的に好きとか嫌いとかの次元を越え、自社の伝統音質と申せます。)


<音質評価設備>
通常各メーカー共、スピーカー装置を自社ブランドで持っている事が大半です。 無い場合は海外
メーカーと提携し、自社音質の基準に据えている事が大半です。
この場合、企業が提供できる最高音質とは、「これこれ」ですよ・・と言う訴求が重要となります。 
故に、音響機器開発の標準スピーカーは、各社の最高グレード品となります。
音質はそのスピーカーの持つクオリティーを、最大限に引出すAMP設計が必須となります。

従って、あるメーカーはホーン型スピーカーが嫌い・・の、アイデンティティーを打ち出すなら、その
メーカーが製造する製品は、全て右に倣え・・と言う文化を形成します。
例えば・・喉元から絞り出されるようなホーンの音は、ダイレクト感が無いから嫌い・・等と表現する訳で
す。 (ホーンメーカの名誉の為申しますが、決してさような事は無く、同軸2Way型ホーンは、筆者は
究極の形だと評価しております)

ともかく、自社ブランドスピーカーの最高峰を使い、音質設計を行い、その後に組み合わせるスピーカーでどのような変化を起こすか、音質をチェックします。  製品開発は、最高グレートスピーカーで、欠点を徹底的に洗い出し、対策を講じて行く、こんな開発スタイルが一般的となります。
そのような理由から、個性が強すぎるスピーカー相手に、音質設計する事は、日本のメーカーでは、
ほぼ皆無と申せましょう。  (例: アメリカの西海岸系スピーカー等)

日本では、ヨーロッパ系スピーカーを標準とする、音響機器メーカーが多いようです。
アメリカ系・ヨーロッパ系・日本系の代表スピーカーを複数使って、音質設計するスタイルは少数派では ・・と推定します。(ビジネス上、自社ブランドの音があくまで最優先で、他社品はチェックのみ)
スピーカーケーブルも、例えばモンスターケーブルは使いません。 顧客が通常使う6N以上の良質な
ケーブルを使うのが一般的です。当然バイワイアー接続可能なスピーカーは、そのモードも評価します。


<給電源の問題・・>
開発視聴室は、特別に設計されたクリーン電源からドライブするのが一般的です。
何はさておいても、音質を決めるのは、この次元の設備がしっかりしている事が大前提です。
開発では、音質の再現性を重要視します。 即ち、同じモードで試験すれば必ず同じ音が再現可能・・

これはプロが求める最重要事項となります。 開発視聴室では、エアコン使用禁止の厳しい評価環境です。 エアコンの風量上げると騒音が問題となる事が多い。
(通常は騒音対策で空調ダクトを専用設計しますが、それすら使用禁止する事があります。)

開発の試聴室で使う照明装置も、蛍光灯は厳禁・ 旧式フィラメント電球に限るとか・・
作業用手元照明をOn/Offして試聴を繰り返すのは、ごく普通です。
同一事業所の他部門が使う電気で、試聴室の電源が汚され、仕事にならず、他部門の連中が全員帰宅した深夜、音質評価試験する・・・と言う事もありました。


<評価ソース源の選択・評価手法など>
これが一番大切で、何のソース、何処のフレーズの、何を聞いて良いか悪いかを評価するのか?
各社マル秘中のマル秘でしょうが、自社ブランドの音質を決めるに相応しい、ソース源を確保している筈です。 音工房Z様でも使っておられる、ホテル・カリフォルニアのソース源は、耳にタコが出来る程聞きました。

音の良し悪しの判断を、何で決める?
音質評価は、ある特定の演奏範囲を、長くても数十秒程度 聞いて判断します。
場合によっては数秒で判断します。・・ノウハウの一部を公開します。 それは拍手音。詳細はご勘弁。
評価ソース源は、絶対に拘ります…ジャズなら此れ・クラシックなら此れ・ポップなら・サラウンドは・・等々つまり、評価に耐える高音質音源が限られるからです。(しかも部分しか使えません)
音楽ジャンルは万遍なく、網羅されるのが一般的です。
ある超人は、1ヶ月前に聞いた音を記憶しており、現在と比較し 良し悪しを指摘します。
筆者は、超人的能力は無く苦労しましたが、傾向としてパターンで把握すればミスは少ないですね。
画像も音像も人間はパターン認識が出来ます。 よって瞬間判断が出来る理屈です。

例えば、バスドラムスのキック音のソースなら、其処だけを聞いて設計へフィードバックして行きます。
ドス・ ヅォス・ トス・ う~ん! 軽い・重い・鈍い・早い・遅い・軽快・厚み感が・・等々を数十秒間
聞いては止め、回路修正・実装修正・配線変更・素子変更・給電&GND変更・・ありとあらゆる、電気的
機械的な要素の組み合わせの中から、最適解を抽出して行きます。

当然聞いた事象を、工学ベースで分析・展開し、次の手を打ちます。 この繰り返しです。
しかも最優先は経済性を念頭に・・。  素材コストUpは趣味の世界で、当然これは許されません。
業務は、音に対する感性・工学的知見とノウハウ・製品設計力・部品など周辺情報収集・顧客との対話力・顧客嗜好の理解力・など、総合力を必要とし、何れか一つ欠けても勤まらない次第です。

その中でも、音質と電気工学上のリンク付けに対する知見・ノウハウは超重要分野です。
同じ音を聞いてもその人物が聴いた感性に基づく故に、同じ工学レベル同士でも聞き方次第で結果は、自ずと変わって来るので、真に厄介至極。 従って人材教育は徒弟制度に近く、困難を極めます。 更に、ご紹介は出来ませんが、音質設計作業は、厳然たる手順が存在し、これもノウハウ領域です。

以上より、企業のトーンポリシーを維持・継承する事如何に困難か、ご理解頂けたものと考えますが、 如何でしょうか。 これは別名文化の伝承でもあるのです。
絶対に書類などでは残せない、人物固有の感性電子工学が一体になった伝統芸術の領域なの
です。
従って人材を切る事は、文化そのものを切り捨てる事となり、事業撤退は再起不能を意味します。
ヨーロッパ伝統の音質云々・・と表現しますが、当該技術者を大切にしている証拠でもあります。


<高音質のAudio機器の見分け方>
それは、ノイズの音質大音量で聴きます。 この音質は、長く聞いて疲れないなら本物です。
例えば、CDならピンクノイズの音質でチェック。 ・・・既にノイズ源入手ウエブを紹介しております。
ホワイトノイズ再生時は要注意。(Tweeterを飛ばす危険性あり)

ノイズを聞いた時、何処かの帯域にピーキーな感じがあれば則NG
同じノイズでも、耳あたりが柔らかいノイズが存在しますが、これはGood !
販売店の軒先でお試しあれ!・・嫌がられるかも? (比較視聴するなら、絶対これがお勧め)
例えば、同じスピーカー使って、真空管AMPと半導体AMP、小パワーと大パワーの差・・と聞いて行き
このノイズの音質をイメージしながら、実際の音楽ソースとの相関・関係を聞いてみて下さい。

これでかなりAudio機器固有の音質イメージが掴めます。特にデジタル臭い音はノイズの音質が悪い。


<音質評価時には食事禁止・・>
極め付けは、空腹でしか音質評価をしてはならない!・・のルールあり。 
胃袋に血液が取られると、音質評価の再現性が得られない・・と言う理由で、通常空腹状態で、集中
試聴する事が多かったように思います。 しかも長時間続き、気が付いたら社内食堂はクローズどころか夕方になっていた・・とか。(笑)  筆者の体験では、昼の時間帯がお薦め。勿論昼飯抜きで・・(笑)夕方とか夜中は疲労蓄積で、評価感度の低下を招きます。 

通常人は、集中出来るのは20分が限界とも言われますが、プロは絶対に許されません。
特にB to B の取引先で、顧客立ち合いでの音質評価は、緊張に続く緊張の連続で、胃に穴が開く思いで、顧客の一挙手一投足を見つめ、相手の好む音質に仕上げる苦労は、筆舌に尽くせません。
(場合によっては顧客の顔色を読みます。 発言以上の感情の振れを察知)

特に海外に出かけ、客先での音作りは、相手は昼食でお茶代わりにビールを飲み、これに付き合う必要があり、これも仕事の内です。・・ それでも判断ミスは絶対に許されません。 一歩間違えれば、出入り禁止とか、ウン億円単位でビジネスが、ぶっ飛ぶ・・など  これは体験した者のみ知る世界です。

しかも、リタイヤした今でも夢の世界で、時々お化けの出現に苛まれ、 冷や汗が出ます。(笑)
開発屋飯より音響が好きな連中で、当に我々の時代は、物に熱中して技術開発が出来た、幸せな時代であった、かも知れません。  心臓が口から出る程、苦しい思いをしながら、技術開発をして
来ましたが、それなりに充実した時間が持てた世代かも・・ その達成感は、技術屋として何物にも代え難い充実と喜びの世界に浸れたものです。 正に娑婆の1日の修行は、極楽の1000日分に勝るです。 毎日が休日のリタイヤ生活では、決して味わえない世界ですね。


<技術屋の身分制度>
その昔・・我々世代が若き頃の話ですが、冗談交じりに 江戸時代は、士・農・工・商・ 現代は
(農・工・商)・技術屋 と言い合っておりました。  当然 商・工・農に序列はありません。
技術屋の身分は、最下層の扱いで、絞って叩ける最高の出涸らし的存在・・つまり縁の下の影武者で、 絞れるだけ絞ってカスを残すな・・ 使い捨て覚悟・・何されても我慢・・しかも、最終決定場面と、顧客クレーム対応場面だけ 表に曝される! 
それと儲けが少ない場面では罵倒される運命! そんな役回りでも、懸命に世の中を支えているのはこの俺!だ との矜持が、生きる値打ちロマンだと・・。

常に表に出ず、底辺で論理的且つ正確に回転し、日本の経済力を支え物作り日本の姿を示して来た次第なのです。 開発者本人、世界に向けて担いで売りに出え・・との掛け声から、筆者も35才
から世界の民族と付き合い始め、喜怒哀楽を体験し、異文化交流をさせて頂いた。 
・・と同時に、日本の素晴らしい文化力と、素晴らしい自然を、肌身で感じ自覚した者です。   
加えて日本人の平和ボケ・・も。 漢民族のエグさ・・ユダヤ資本の恐ろしさ・・騙され易い日本人・・etc.

間違いなく日本は名実共に世界一流の文化国家です。  何処かの凶暴な卑しい文化とは明らかに
違います。 そんな世代が去り、若手経営屋もどきに世代交代した途端、屋台骨が揺らぎ、日本の
経常収支が赤字体質に追い込まれている・・ これが、昨今の姿なのです。 (原発による要因を除き)

その一方2013年度末で、日本の企業には内部留保が304兆円・過去最高を記録との報道があります。
これらの資金を投資にも回さず、単に貯め込むのは如何なものでしょう。政府からも批判されております。 これは、労働分配率が歪な証拠であり、労働者側に資金が回らず、これを因とし内需が盛り上がらず、 デフレからの脱却が遅れる要因を為す・・と考えます。 

グローバルスタンダートの名の元労働分配率を意図して下げる、労働環境を悪化させ、労働コストを
更に押し下げる事に狂奔する経営屋もどきと、政府系に取り入る一部利権絡み悪徳評論家もどき
(大学教授・派遣会社顧問)が、跋扈しております。 (ジニ係数の悪化)

今こそ資金を人材に投資すべき時ではないでしょうか。 この国の資源は、貴重な人材しかありません。労働者側に安心と安定した職場環境を提供し、技術屋が安心して長期的にイノベーションを先導し続けられる労働環境を構築しないと、この国は発電の為のエネルギーすら調達出来ない ・・ 
この現実から目を逸らす事は不可能でしょう。  その人材を育てる芽を、グローバル経営の名の元に、 ことごとく摘み取った咎が、今だと想う。 

労働者の異業種間の転換が動きにくい、この社会構造に合わせた経営手法を無視し、労働環境を整備せずして、単純に先達の技術者を、ボロ雑巾のように切り捨てた咎が、ボディーブローの如く経営に、 深刻なダメージを与え続けております。 (世代間の技術移転に失敗) 

日本は、向かう処の未来ビジョンを明確に描き、リスクを取って果敢に攻め立てないと、増々じり貧に
陥るのみです。  筆者は間違ったグローバルスタンダードを廃止し、腐った経営屋もどき、と誤った一部の評論家を、一刻も早く排除しないと、もう間に合わないと観じます。

現役の一人一人が危機感を持ち組織を下から突き上げ行動に移さないと手遅れになると想う
次第です。  現役世代の方々、己から立ち上がれ!・・と エールを送ります。 
人生は1回勝負・・同じ人生なら、燃え尽きる程、何かに没頭し納得ありきの善き人生を・・。

これは、とんでもない方向に熱?暴走・・。 失礼しました。 では、ぼつぼつ本論に戻りましょう。
今回から給電関連の話題を採り上げます。
既に商用電源の極性を採り上げましたが、このジャンルも極めれば奥が深い問題が沢山存在します。


§14. 理想電源


14-1. 理想電源とは何?
皆さんは理想電源と言うと何を思い浮かべますか?    答えは、Batteryです。 
しかもAudio用の負荷電流を取り出す事に、特化したスペックを必要とします。
Audioで必要な電源は、超高純度の直流電源です。 この電源を生成するのが電源回路となりますが、 化学反応を伴う、DC電源装置が最も優れております。

自動車Batteryを想定下さい。 これを使ってアナログ回路を動作させている超マニアの方々が、沢山
いらっしゃいます。 例えばトラック用ディーゼルエンジン対応Batteryです。 これは24Vですので
これを2個シリーズに接続してパワーAMPを駆動し、一定時間聞けば、後はたっぷり時間をかけて充電
する御仁がいらっしゃいます。

この音を一度聞けば、後戻りできない程、驚かれる事でしょう。 
当に
至高の世界が其処にあります。

特に自作派マニアの方にお勧めです。
導入例1)
車載用12Vとありますが、Audioに使う軽負荷であれば、14,4Vでの駆動が可能です。
この場合、音質対応Batteryを使います。電流容量は30A以上もありますので、普段充電は殆ど気に
せず使えます。  これを±15Vで動作するAudio用OP-AMP回路に流用出来ます。
音質対策品としてのBatteryは、内部抵抗は3mオーム以下が対象でしょう。

これとBattery充電器を装備すれば、完璧な直流電源装置が出来上がります。
更に最近雑誌の付録で付いて来るD級AMP用の電源装置としても、最高にフィットします。(15V駆動)
±15VならBatteryが2個必要となりますが・・ 
48Vなら、既に解説しました通り、4Ω300Wまでなら応用可能で、上記24VBattery 2個で実現します。

  

給電源抵抗が極度に低い、これを裏読みすれば・・給電端子をショートさせる意味を正しくご理解
下さい。 例えば48V×40A=1.92kWに相当する電力をショートさせる訳ですから、ショートさせると
電源端子が簡単に溶けて蒸発します。 これは危険極まりないので、ブレーカ挿入が必須となります。
(ブレーカとBatteryの中間でショートすれば、意味が無いのですが)

又活電部は、絶対に素手で触れないで下さい。(感電の危険があります)
充電時の水素ガス発生には十分気を付けて下さい。僅かな火気にも注意が必要です。
その点では、リチウムイオン電池の方が安全です。

半導体回路への給電極性を逆にすると、瞬間的に大電流が流れシステムが破壊します。
この為に、逆接続防止用として、Batteryの+側をダイードのアノード側とし、カソード側を回路側にして、負荷電力に見合う電力容量のダイオードを挿入します。 電力量=順方向電圧×負荷電流の最大値でダイオードの電力を求めます。
ダイオード本体を放熱する必要がある時は、放熱構造にご注意下さい。 詳細は給電設計で解説する
予定です。

筆者は事故責任を負えませんので、実施されるなら、くれぐれもご注意下さい。


導入例2 )

筆者もまだ試していないのですが・・自作AMPを作られている人であれば、下記の実験がお勧めです。
電動工具用充電器付きリチウムイオンBattery+14.4V電流容量は3Aがあります。 
電動工具用Batteryですから、工具は大トルクが必要です。この意味はBatteryの内部抵抗が非常に
小さい事を意味します。 これはAudioマシンに取って理想的な電源になる筈です。

電力容量的にパワー系には使えませんが、プリAMP系の駆動なら少額投資で、高音質化が可能な
筈です。 充電器とペアーで±電源用として2個準備します。
チャンネルデバイダー用電源装置にも最適です。(±15V駆動) 


導入例 3 )
これは、レコーディングスタジオで収録されるマシンに使う電源です。 
小型Batteryに006P式乾電池(9V)を5本使ったプロ用マイクロフォン初段用増幅AMPがあります。
これはファントム電源と申し、規格は48V・14mAで運用しますが、Batteryはレコーディング毎に交換して使います。
特にヨーロッパ系マイクロフォンには、この手法の駆動方式を使う機材が多いものです。
筆者が知るマイクロフォンとしては、これが最高品位の部類です。AKG(アーカーゲー)社(オーストリア)



筆者が音質評価用に生録音機材として使っていたマイクロフォンを以下ご紹介します。
電源供給が商用電源経由になりますが、下記はAKG社の最高級品です。 真空管増幅仕様(写真右下)です。
http://proaudiosales.hibino.co.jp/akg/47.html  (定価で約90万円程度) 

この前世代のC12型マイクロフォン(写真左下)(以前はBattery駆動)を使って、音質評価用ソースを記録しており
ました。 1回記録に使ったらBatteryは使い捨て。(1960年ごろ作られた名機)

     
    

音質評価用ソース源も、このマイクロフォンで集音し、自前で準備しておりました。
その頃生まれたばかりの、PCM可搬型レコーダーと、まだ主流だったアナログOpenリール式レコーダーと、両方担いで、生録音を頻繁にこなしたものです。  その記録ソース源も一家離散の憂き目 (涙)

生の楽器音を知らずして、音質評価は不可能でした。 印象深いのはハープの低音感。これご存じ?
生の楽器の真の姿(音)を知らずしてAudioを語る べからず・・でしょう。 その一例がハープの豊かで
芳醇な低音感です。  一度【】で、且つ至近距離で聴く事をお薦めします。

蚊の鳴くような音にしか扱われない楽器(失礼)ですが、真面目に集音すれば奥が深い素晴らしい楽器です。 (楽器の共鳴箱周辺と、絃とで織成すハーモニーは心地よいですね)
オーケストラの集音では、ダイナミックレンジ制御が一番大変です。 スタジオミキサーの仕事の困難さは、体験した人しか語れない世界です。  当然音質制御はミキサーの腕次第です。 筆者もNHKの
奥の院までお邪魔し、シビアな世界を垣間見ております。 (内容はご勘弁)


14-2.Battery駆動からの音質

冒頭に最高峰の音と申しましたが、こればかりは体験して頂かないと、文章表現は不可能であります。
純粋で一切の雑味を排除した、素晴らしい世界が 其処には存在します
当然この世界を表現するには、それなりの基礎音質を備えた機材を必要とします。
残念ながら、この世界は一部のマニアにしか許されない世界でしょう。 
何を以て最高峰と判断するか? その評価眼を必要とします。 

生録音をされる現場で、楽器の音をそのままPA&記録する状況下で、耳を鍛え評価マインドを形成
する事をプロは要求されます。  これを再生する場合の電源は、Batteryが相応しいのです。

給電源と音質の結論は・・ 超低インピーダンス(100kHz程度迄)且つ、大電流が駆動出来る。
インピーダンスとは、3mΩ以下の世界でしょう。 100kHzの周波数でこんなに低いインピーダンスを
実現出来る手段は、Battery以外にあり得ません。 但し既に解説しました通り、給電線路上の設計が
キーポイントとなります。

電力容量に見合う、部品間接合技術と相まって、徹底的に銅線の直流&交流抵抗を、徹して低減する事でしか実現出来ません。
しかも、音響変換した音圧歪が僅か1%程度のスピーカーで再生しても、この対策を打ち込む毎に、音質変化はきちんと答えてくれるから不思議?なものです。

スピーカーは、既に技術的には、枯れた存在なのでしょう。
それに引き換え、スピーカー性能を完璧なレベルで引きだせないのが、駆動する電気系だと感じます。
現在入手できる半導体を駆使した、アナログ処理技術は、既に限界に到達しておりますが・・。
(入手できる素子の範囲)
その重要な要素が、この電源装置にある、と言う事を知って欲しく、このような記述となりました。
電力を扱う場合、究極の接合方法は、分子間結合である圧着工法にある事を、改めてご認識下さい。

プロが、市販商品で開発出来ないジャンルを、アマチュアが開拓する事により、技術がブレーク・スルー する事だってあり得ます。 経済的・実用的・社会的・・などの隘路を全て取り払い、純粋に改良を目指 せば、まだまだ改善の余地は沢山残っていると感じます。 つまり、上には上があると申し上げたいのです。 これがこの趣味のロマンではないでしょうか・・。 

逆にプロは手足をガンジガラメに縛られて、何も出来ないのが現実の姿なのです。 
当然縛るのは経営の都合ですが・・経済的縛りをある程度外し、徹して良い製品を作る・・・これが
近年ヨーロッパ系製造 メーカーが歩み出した方向だと観じます。
音楽性と呼ばれる芸術的表現に耐える、Audio機器はそんなに簡単には出来るものではありません。 
あらゆる工学的な知見は基より、開発する技術者が音楽を深く理解、それなりの文化的資産が体内に無いと実現は不可能です。  ここに他国との差別化を求めているのが、現代ヨーロッパの音響機器メーカーの生き方の様に想えてなりません。

アナログ不要との人材カット作戦では、さような生き方を我が国に求めても、無い袖は振れないのが
悲しいかな現実の姿なのです。  その代表例が今回ご紹介したマイクロフォン技術なのです。
真に優れた製品は、人生を豊かにしてくれます。 そして高額でも納得が行く商品少量生産で良いから、可能な限り長く続けて提供する・・そんな熟成した社会になったら良いな~・・と思考しますが、皆様如何でしょうか?

趣味の世界を扱う拘りの商品とは、そもそもこの様な役割を背負っているような気がしてなりません。
即ち、無理に規模を求め奔走するから、経済的に破綻すると感じます。(人も市場も製造者も育たない) 何方かBattery給電式のAudio装置を製品化しませんか?・・当然充電装置付きで!
リチウムイオン電池は従来式電池との比較で、充放電の回数が3000回に耐えられる時代となりました電池交換は、リサイクル交換式電池を提供すれば対応可能です。(電動工具で実現)

このような対応をすれば、真に高音質なハイレゾを楽しめる世界が登場するかも?
当然物理限界は存在します・・全ては真空管と同じ増幅能力を持ちながら、ハイスピードで動作する、
新たなる半導体増幅素子の開発が、技術ブレーク・スルーを生みましょう。
近年高電圧で駆動が可能な、炭素系素子に注目が集まっております。 まもなく市場に登壇すると
言われます。 この素子に期待したい。 電源にかこつけ、夢を語ってしまいましました。(笑)

尚アナログ技術者養成に関連して、下記をご参考にして下さい。

   

既に拙稿でもご紹介した如く、半導体の微細化による処理スピードは大幅に向上しましたが、微細化に伴い、処理可能な電圧が低下した結果、アナログ信号のダイナミックレンジが失われました。
この解決には、高電圧且つハイスピード処理が可能な次世代テクノロジーが必要となりましょう。

もう一つの視点は、アナログ技術を磨く事は、システム全体のデザイン力を磨く事に他なりません。
つまりセンサー系を含み、全システムを一人でハンドル出来る人材が必要となりましょう。
システム全体を構築する能力を持てば、システムとしての技術戦略の隘路が良く見えて来ます
此処に、日本の進むべきフロンティアがあると筆者は観じます。

次回から、商用電源の詳細を考察し、Audio装置を皆様と共に考える事にしましょう。

 

                                                   筆者拝


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