【Z・特別講義 4】

[音圧とパワーの関係]

第4回寄稿
本日はお約束の音圧とパワーの関係についてお届けします。 それと音質論とその制御へのご質問が沢山寄せられておりますので、この課題を採り上げ解説しましょう。 
何を以て、高音質と言うか? 既にご説明致しましたとおり、人の好みは多種多様であり、これが高音質だと言い切れる定義は存在しないのが現実です。
一般的な表現では、柔らかい・長時間聞いて疲れない・透明感があり澄んでいる・余韻が心地よい・迫力ある低音感・人の声が自然・・等々の言葉が使われます。
これらの程度を自分がどの様に評価するか? 物量を投入し経済的にも、この努力の総量が結果に見合うか?と言う次元での自己満足度で評価される存在・・と考えますが如何でしょうか。


良い音を追及して行く趣味から申せば、一般的に良質とされる巷の製品を、ご自分の耳で確かめられ、自分の心情にフィットする質感を養われる事が大切だと感じます。
満足すべき水準と、投資規模のマインド醸造・追及するのがこの趣味であるかも知れません。
音質と経済的な物量の側面は青天井ですので、価格に見合うか?は、ご自分の評価眼で決まります。
この意味から筆者の立場は、上記トライ&エラーを可能な限り減らすべく、普遍的な物理上のルールを可能な範囲内で、ご紹介するのが拙稿の役目だと考えますが、如何でございましょう。 
拙稿がその評価眼形成の一助になる事が出来れば真に幸甚です。


プロの立場はこれとは違い、相手の好みに合わせて自由に音質を作り込む、設計上の技を心得ておりお客様の好みに合わせる事が出来る技を売る職業だと思います。 特定の顧客に特化した製品では、第2回の寄稿でご紹介の如く、100%相手の好みに合わせる事が必須要件となります。
そうです・・100%相手の好み(要求)に合わせる事が出来ないと、飯が食えない厳しい世界です。
従い、己の都合とか好み云々・・は、まったく 「埒外」であり、この様な次元で働く事を意味します。
各社のAudio機器には、ブランド毎に確立した伝統音質が存在します。
その伝統音質ご賛同いただける顧客を、製造側のポリシーで選択しているとも申せます。
従い、自分の好みに合う・合わないが製造会社間で出るのは、ある意味で的を射ていると申せます。
これは、部品製造側にも影響を与えまして、詳細はご紹介出来ませんが、筆者が担当しました半導体
提供ビジネスでも同じ事が言え、音質差は売れる顧客層(会社)を選択する事に繋がります。
同じ音質ですが、ビジネス上では死活問題なのです。
従いまして同じプロと申しましても、特定顧客の都合に、完全フィットさせる設計分野は、要求される仕事上のスキルが、まったく異なる世界であると申せます。
この分野は人材育成するにしても、音楽的感性聞き分ける能力電気的な工学知識ハードウエアへ具体的に落とせる能力ノウハウ)・顧客指示の音質への理解力・など巾広いスキルが要求されます。これは昔の職人芸にも通じ、子弟関係で多年の修行を必要とする世界です。
この難関は断崖絶壁、好きだからこそ越えて行ける・・・ある程度の高見に到達した喜びは、他の人には言葉では表現出来な程の境地が存在します。
当然この重要ノウハウの塊は、その人物の体の中にあり、正に経営とは人・物・金の総量を駆使して事業する訳ですが、我が国では甚だ残念ながら人材の使い捨て風潮が強く、行く末が案じられます。企業のコアコンピタンスの基礎となる、スキルの値打ちを知る事は、経営上の超重要項目の筈です。

古来よりシンプルイズベストと言う言葉がありますが、言い得て妙でありまして、これを実現するには、機器を構成する部品個々の電気的・機械的物理性能が優れている事が重要です。 
逆に申せばシンプルな構成にするには、部品の基礎的な物理性能が良くないとシンプルに出来ない。即ち、いくら回路をいじくり倒しても部品の持つ基礎的な物理性能が悪いと、何の意味も持ちません。

半導体式AMPは回路を駆使し素子の能力不足を、回路方式でカバーしているのが現状です。
真空管の増幅段数と半導体を比べてみれば、圧倒的に真空管が優れている事が理解出来ます。
誤解を恐れず音質は何で決まるか?と申せば、包括的にはオームの法則で決まる!・・です。
そのオームの法則に差配される物理量の中で重要アイテムは、直流抵抗分と、交流抵抗分です。
この抵抗成分が、必要な処で必要なだけ機能するのが望ましいのですが、そうそう上手くは行かないのが現実世界です。
つまり、特定の機能部分では抵抗を極小にしたい、ある処では高周波に至る帯域まで、抵抗成分が周波数と完全に比例して変化して欲しい。 その様な理想的な部品はこの世に存在しません。
この部品の実力限界を見据え、経済性に富む各構成部品の組み合わせを選択し、目的とする最良の音質(顧客の望む)を 探し求める・・これが音質設計と言う名の探り作業でありましょうか。。



ここで音質改善の重要ノウハウをご提供しましょう。
それは扱うエネルギー密度が高い処から、低い方向に向けて音質改善の検討を行う・・と言う思考方法です。 逆読みすれば、音質への影響度はこのロジックで決まる事が多いと申せます。
エネルギー密度が高いとは、流れる電流量が多く、電圧が高いと言う事です。
つまり音の出口であるスピーカーに絡む部品とか、信号エネルギーの総元締めである給電回路周辺の部品とか、回路構成であったりします。(製品開発では圧倒的に実装問題が多い
上記の手順に加え、音質に与えるインパクトの程度を考察する訳です。
経済的にも(エネルギー密度大)=(高コスト)であると申せます。 
よくご質問を頂くのが、いったい何処にコストをかえたら良い音になるか?ですが、上記ルールで資金投入する事をお勧めします。 つまり、電源とスピーカーに先にお金をかけるのが正解です。


その次はAMPと言いたい処ですが、ここはCDプレーヤーとか、LPレコードプレーヤとか、音の入り口に
投資する事をお勧めします。既に解説しました如く、トランスジューサーと呼ばれる信号を電気エネルギーに変換する機器群に投資される事をお勧めします。 
特に機械系が絡む機器は音質制御が困難で、このジャンルは経済的に物量を投入しないと、基礎的な音質が向上しません。
その次がAMPで更に下って信号ケーブル類でしょうか。但しスピーカーと同列でスピーカーケーブルにも注意が必要です。(具体的には別途解説します)


あらゆるエネルギーの源である、電源が腐っていれば高音質は夢のまた夢です。。
近年家庭に供給される電源品質が大きく低下しております。 
つまり省エネ化に伴うインバーター制御により、商用電源ラインが汚され(高周波ノイズ)Audio再生に取っては悪条件となっております。 最近は交流50Hz/60Hzの波形すら歪んでいる事が多い様です。高級システムを考えるなら、まずこの交流給電装置に投資し、電源のクリーン化を図るべきでしょう。これも実例を上げましょう・・ 自宅を建設したい・・と考えた場合、まず土地を探しますよね。
その場合、あるマニアは真先に検討するのが、柱上トランスの位置だと申します。
何故だか分かりますか? つまり柱上トランスの近傍に土地を購入すると申します。
故は給電ラインの源である柱上トランスからダイレクトに受電すれば、他の家庭からのこれらノイズの影響を最小限に食い止める事が出来るのです。 (マンションなら受電設備に近い部屋)
概ね1個の柱上トランスで10軒分の電力を賄っております。 トランスから出た給電ラインは家の軒数にもよりますが、100m単位で長く伸びており、このライン上にノイズが重畳される次第です。
更に剛の者は、自宅の敷地にマイ電柱を建て、電力会社に依頼しマイ柱上トランスを設ける人物が居ると聞きます。(東京電力管内ではこのサービスがあると聞き及んでいますが、現在は?)


近年太陽光発電が盛んになりました。これもDC(直流)で発電しインバーターで107Vに昇圧し、給電側に売電します。 Audioに取って状況は悪くなるばかり・・です。 つまり電源は高音質化の命綱です。
過疎地域でAudio再生する方が、音質が良いと聞いた事があります。  田舎暮らしがお勧め?


変圧器のご質問も受けております。いわく トロイダル方式の変圧器は音質が良い・・云々これ正解です。 この方式は専門的には磁気抵抗が低く、電力供給源のインピーダンスを非常に小さく設計可能です。 この事は、スピーカーの駆動能力を高める事に貢献しますが、一方で材料が高価であり、国内メーカーは経済的理由で使う事を許されない場合が大半です。

良い事は分かっていながら、経営的な都合から使う事を禁止されるのが現実なのです。
このトランスは効率が高く、且つ漏れ磁束が少ない等、あらゆる基礎物理性能が優れております。
この変圧器を使ったパワーAMPで、音が悪い・・と言う評価を聞いた記憶がありません。


この給電系で超重要な部品の一つに、整流回路(交流を直流に変換する回路)を構成する電解
コンデンサと言う部品があります。 半導体に電流エネルギーを供給する源が、この部品です。
従い音質に多大な影響力を持ちます。 更にこの部品が製品寿命を大きく差配しております。
即ちこの部品は温度に弱い特性を持ち、このコンデンサの容量性が抜けた段階で製品寿命を迎えます。 
アレニウスの法則温度が10℃下がれば寿命が2倍に延びると言う物理法則がありまして、 この部品は発熱部品である電源トランスの傍に配置されて運用されます。
この部品は、周囲温度が高温度下で動作する場合は、高信頼性用の部品を使います。(寿命対策)
上記トロイダルトランスは発熱も少なく、電界コンデンサと絡めて製品寿命を長くする方向に作用します


詳細は、給電回路の項で音質についてご紹介出来ると思います。
真空管AMPにもトロイダルトランスを使う例が海外メーカーにありますが、既に解説しました如く 電圧増幅素子ですから、その効果は限られます。つまり経済性が悪いと言う事ですが、ハイエンドAudio用には向くでしょう。 このトランスは半導体式AMPに対して威力を発揮します。
漏れ磁束が少ないので、真空管への悪影響が少なくS/N改善に繋がります。
この変圧器は、巻線方法が特殊で製造に手間がかかり、且つ磁気コアーと呼ばれる材料も高価です。
この磁気コアー材は日本の鉄鋼メーカーで製造する、電磁鋼板が世界規模で見ても天下一品です。何を作っても拘って作る技術屋は、日本人にはとても多い次第です。
20年以上歳月を費やし開発した技術が、韓国ポスコに技術を盗まれたとする裁判沙汰でも有名です。これも頭脳流出として現れる負の現象でしょう。


ともかく、高密度エネルギーを扱う伝送線路上の抵抗を下げる事が、高音質化への第一歩です。
・・と、申しましても電源ケーブルに万円単位で資金を投入するのは?(根が既に腐っていますが・・)
屋内配線が如何にチープかご存じ?。。ここまで手を入れるマニアも存在します。
ここまで投資するなら、AC電源装置に投資する事を推奨します。
ともかく給電線路は短くする事が最も大きい効果を発揮します。


更に専門的には、共通インピーダンスを作らない配線構造がとても重要となります。
たとえば、ここにプリメインAMPが1台と、CDプレーヤーが1台あったとします。
その各Audio装置に給電する場合、共通インピーダンスを作らない給電手法が必須となります。
下図をご覧ください。



正解は、この図中には無い・・つまりテーブルタップの何処から給電しようが全て不適切な処理となります。
特にCDプレーヤーへの給電手法は、上図の場合は最悪のケースとなります。
壁コンセントから遠い場合は、大電力系テーブルタップと、小信号機器用テーブルタップの2本準備し壁コンセントから独立して、給電ラインを引く。 この手法が唯一正しい手法となります。


つまり上図で示した1本の電力ケーブルを使い多種多様な電力を同時に扱う場合、一番電力量の大きい機器の影響を、この赤ライン上の共通インピーダンスの影響で、電力量の少ない機器側が受けてしまう事になります。 ですからパワーAMPは壁コンセントから可能な限り短くダイレクトに給電する。CD系など電力量の少ない機器は、同様に壁コンセントからダイレクトに給電しますが、可能なら別系統の壁にあるコンセントから給電するのが望ましいのです。
上図の赤ラインは、屋内配線を考慮すればまったくテーブルタップと同じ事が言えます。」



同一給電点から全て給電する場合の原理原則は下記の処置です。
給電エネルギー量が一番多い回路又はシステムは、給電源に一番近い場所から最短で給電する事。
そして大電力側から少電力側に向かって、給電源から遠い方向に給電する。
Audio信号は給電方向とは逆に、微弱信号入力側から大電力方向に信号を流す。 (別途解説)



プリメインAMP等の大電力と小電力が同居した機器は、この処置が性能の優劣を分けます。
正しくAudio機器の設計とは、全編この共通インピーダンスを如何に避けるか!の戦いなのです。
当然機器のプリント基板上の設計に至るまで、実装工学は器機の生命線なのです。
回路設計と同時に実装設計車の両輪です。 回路設計出来ても半人前とは業界言葉です。
何方が欠けても、製品としての物理性能を担保する事が出来ない次第です。







§4.音圧とスピーカーの変換効率の関係
スピーカーのカタログデータを見ると、音圧**dB と出ております。
これは一体どのようにして計るのか? この値はスピーカーを評価する上で、とても大切な物理指標です。
この数値は、スピーカーに入力された電力が、音響空間に音圧として変換される効率を表します。



4-1.測定方法
スピーカーセンター位置から1m離れた処にマイクロフォンを置いて、音圧をピックアップします。
この時スピーカーに入力する信号は、1kHz(通常メーカーの都合で周波数は決めます)を使います。入力する電力は1W(ワット)を加えます。 (ピンクノイズを使う測定方法もあります)
この時、マイクロフォンで拾った電圧を、音圧量に変換し**dBと表示します。
つまり、1Wの電力を投入した時、スピーカーから1m離れた位置の音圧量でカタログ表示値とします。


4-2.変換効率
例えば1W投入して音圧が80dBだった・・としましょう。では、2Wを投入すれば音圧は幾らになる?倍率と電力比率&電圧比の換算表4-1を御覧ください。
http://z-sound.biz/melmaga/retiregsenseipdf/4onatu-1.pdf
使用頻度が高い40倍までの電圧比と、電力比率の対数表を作成してみました。
スピーカーの両端には、電圧で+6dB入力した時に、加える電力は2倍になります。

音圧は、電力量に比例しますので、2倍ならスピーカーの音圧値(電力比)は+3dBとなります。
つまり、2W入力すれば音圧は 83 dB/m/W となります。
同様に・・10W入力(電力の倍率で10倍)すれば、90dBの音圧が得られます。
まったく同じ計算要領で、100W入力すれば音圧は+20dB上昇し100dBの音圧が、スピーカーから1m離れた位置で得られる、と計算出来ます。



4-3.音の伝搬と距離による減衰
音は15℃の空気中を約340m/Secのスピードで伝搬します。(温度と湿度で変化)
空気中で音波が伝搬するスピードは下式で与えられます。
C=約331.5+0.61 t (m/Sec)  C・・伝送スピード  tは摂氏温度

この式より、摂氏  15℃で340.65 m/Sec

             20℃で343.7 m/Sec

            25℃で346.75 m/Sec と求まります。

一方35℃の水中では1520m/Sec・・・ソナーの領域です。
波長=音速/周波数 で求められます。  C=λ×f  λ=C/f
Cの値に340を使えば・・20Hzの波長は λ=340/20   =17 m
               20kHzの波長は λ=340/20×103 =0.017 m

点音源からスタートした音波は四方八方に拡散する性格を持っております。
つまり、一つの音源から遠くなるに従って、伝搬して行く空間の体積量が増す事になります。
この伝達する自由空間は、球面体の表面を伝搬すると考えて良く、伝達距離をとすればその表面積は4πr2 で表す事が可能です。 

これを分かり易く言えば、伝搬距離の2乗に反比例して音圧は減少すると理解して良いです。
音源から1m離れた場所をL1とし、それから任意の離れた場所をL2と仮定しましょう。


L1の処の音圧をS1として、L2の処の音圧をS2と仮定すると下式で表す事が出来ます。
(L2)-(L1)=-20Log S2/S1
よって、距離が2倍になると-6dBだけ音圧は低下するになります。
更に詳しく研鑽したい方は下記にアクセスして下さい。http://www.tuat.ac.jp/~yamada/onkyo/chap5/chap5.html



4-4. n(m)離れた位置での音圧演算
以下ご説明する演算は、指数計算でないと求める事が出来ませんので、スピーカーからの聴取距離スピーカーの変換音圧欲しい聴取音圧必要なパワーAMPの電力との関係を予め演算した結果を示します。 下記演算結果に不足がある場合は、演算手法に則り各自計算して下さい。

解説
この表は、スピーカーの変換能率を元にして、3m離れた場所と4m離れた場所で聞いて、自分が欲しい音量を決めた時に、スピーカーを駆動するワット数がどの程度必要かを計算した例です。
聴取音圧の具体例では、一般家庭内でBGM的に聴くのは概ね70dB以下であろうと考えます。
又疲れない程度の音量で長時間聞くのは、75dB程度だと言われております。
地下鉄の車内程度の大音量に相当するのが81dB程度だと考えて下さい。家庭では近所への騒音が心配される音量に相当します。
既に解説しました如く、電圧量で3dB変化した時に人は音量が変化したと認知します。
表4-2の聴取音圧は音量変化で言えば一ランク上がる毎に、音量が2段階上がると考えて下さい

表4-2に示しましたAMPのワット数は、前回解説致しました記録レベルが飽和から-15dB下のエリアに於ける信号を再生した時に相当する電力量と考えて下さい。ですから、表4-2に対して+15dB分高い電圧に相当する信号が入力された時でも、AMPは歪まずに再生する必要があります。 そのAMPのパワー量を計算したのが表4-3になります。


結論は・・表4-2で、グリーンで塗った範囲が、クラシック系ソース再生に耐える条件100W-AMPが使える範囲となります。(+15dBの信号が歪まず再生出来る範囲)
ダイナミックレンジが狭いCDソースなら、赤破線から上側が同じ100W-AMPで再生可能範囲となります。(+12dBの信号が通せる範囲)
同じく+12dB迄の信号であれば、青破線から上の信号が、50W-AMPで再生可能な範囲となります。

 

解説
橙色で塗った範囲から上側は、クラシック系のソースに耐える条件で、300W-AMPが使える範囲となりピンク色の実線から上が、概ね1kW以内のAMPで駆動出来る範囲となります。

信号のピークを想定した場合、パワーAMPの駆動電力量は大きな値を必要とする事が分かります。俗に音を浴びる様な音量となるのは、90dBを超える領域となりましょうか。
その場合は、スピーカー自身の音圧は90dB以上で、パワーAMPの駆動電力量も300Wは必要であると理解出来ます。
この時のピーク音圧は、90dBのスピーカーと300W-AMPを使ったと仮定すれば、4-1式を使って平均聴取音圧が90dBなら、約105dBと演算出来ます。
長時間聴く平均75dBのモードでも、瞬間的には90dBの音圧を聞いている事になります。
家庭で聴く分にはこのレベルで十分でしょう。



表4-3の電力の時、瞬間的な音圧量
4-1式で与えられます。
スピーカーから距離(m)離れた処の音圧 dB/m/Wは・・
音圧dB(スピーカーの公称音圧値)dB(20Log n) + 10Logスピーカーへの入力電力量
・・・4-1式 で表す事が出来ます。

<<演算例>>
スピーカーの音圧が86dBのスピーカー装置がある。 スピーカーに100Wの電力を入力し、ここから
n=4m離れた位置での聴取音圧Aを計算しなさい。

音圧=86-(20Log4) + (10Log100) =86-12.041+20 =93.95dB と演算出来ます。



次に、真空管AMPを想定した音圧計算をしてみましょう。
スピーカー音圧で+10dB分とは、電力で1桁小さい値ですから、表4-4の通りになります。



300Bを使ったA級シングル 8Wでカバーできる範囲は、+15dBをピークとして緑で塗りつぶした範囲
で対応可能。 聴取距離3mで最大聴取音量90dBなら必要スピーカー音圧は最低92dBと求められます。KT-88プッシュプルタイプのAMP等出力が40Wでカバーできる範囲は、+15dBをピークとして橙で塗りつぶした範囲から上側が該当します。
赤破線で示した範囲から上はCDソースの+12dBをピークとした範囲です。(緑と橙の運用拡大範囲)
94dB以上のスピーカーであれば、CDソースから8W AMPで平均音圧が、地下鉄の車内程度の音量で楽しめます。

筆者宅のTweeter再生用AMPはA級ドライブ8Wと、Wooferドライブは40Wですが、このワット数で十分過ぎる能力となります。
半導体式AMPなら300W投入する処、真空管では40Wあれば家庭内で聴く分にはまったく問題なくシステムが構築出来ます。 以上の解説から、90dB以下の能率しか無いスピーカーはエネルギー効率から言えば時代遅れだと思いますが、皆様は如何感じられますか?。



4-5.聴取距離と音圧及びAMPの供給電力の関係
具体的な演算手法を解説します。 
指数計算が出来る関数電卓が必要です
10階乗数表ダウンロード http://z-sound.biz/melmaga/retiregsenseipdf/10kaizyou.xlsx

距離と音圧の関係を一般式化すれば下式で表す事で出来ます。


4-1式を展開して、(m)離れた場所の音圧Aを指定して、必要なスピーカー駆動電力量を求める

為の一般式を導く事が出来ます。

AMPの電力(w) =10 (n地点の音圧A20Log[ n]スピーカーの出力音圧/10乗 ・・・4-2式

<<演算例-1>>

スピーカーから4m離れた位置で85dBの音圧を得たいスピーカーの音圧は82dBとします。
この時駆動する必要なAMPの電力量を求めなさい。 4-2式を使って
AMPの電力量(w)=10((85+20Log4-82)/10)乗=10((85+12.04-82/10)) 101.504=31.91W
約32Wと出ます。


<<演算例―2>>
スピーカーから3m離れた位置80dBの音圧を得たい。スピーカーの音圧は98dB82dBとします。駆動するAMPの必要電力量を求めなさい。

スピーカーの音圧が98dBでは・・ 20Log3=9.54

AMPの電力(w)=10((80+9.54-98)/10)) =10-0.846 = 0.14

同じ条件でスピーカーの音圧が82dBでは・・

AMPの電力=10((80+9.54-82/10)) = 100.754 =? 5.67 W


ここで厄介な問題があります。 それは平均電力量とピーク電力量の関係です。
例えばCDの音源ソースを再生する場合、平均的な記録レベルの設定値があり、これは業界の約束で概ね決まっておりますが、既に解説しました如く、レコード会社毎に運用が若干異なるようです。


電圧で申しますと、既に解説した如く絶対最大ピーク電圧から概ね-12dBの電圧が、平均記録レベルであるとして運用しているレコード会社が大半です。
この意味は、電圧で+12dB分のピーク電圧がスピーカーに印加される可能性があると言う事です。特にクラシック系はピーク音量を勘案して、最大振幅値から―15dBを基準収録レベルとしてレコード会社では運用する事が多い様です。
上記演算例で、能率82dBのスピーカー装置を使って、スピーカーから3m離れた位置で、平均音圧
80dBで聞くと仮定し、少し厳しく見てこれから+15dBの信号を通すに必要なAMPの電力量を計算してみましょう。
80dBの音圧から電圧比で+15dB分までAMPは歪む事を許されません。
電圧で+15dB分とは、倍率で5.623倍となります。

つまり平均パワーが5.67Wで駆動するAMPなら、ピーク電圧を処理可能なAMP電力は?
例えば、スピーカーが8Ωなら5.67Wの時の電圧は・・

V=√2×5.67×8=9.524V

+15dBは、この電圧の5.623倍で53.553Vと出ます。 この時の電力はP=53.5532/16=179,245W
電力比率=31.613倍

これに対し、CDソースの+12dBでは 3.981倍と求まります。
同様に電力比率を計算してみると 9.524×3.981=37.915

P=37.915/16=89.84W

電力比率は 89.84/5.67=15.844倍 と求まります。



音圧が80dBと90dBのスピーカーでは、同じ条件で比較するとAMPの必要電力量は1/10で済むと計算出来ます。
つまりこれ程スピーカーの能率を上げる事の意味は、インパクトがあるのです。。
以上を総括しますと・・
長時間疲れない条件で聞く場合は、聴取音圧は75dB程度だと言われます。 この条件で聞くなら、概ね50W以上のAMPで且つスピーカー音圧が82dB以上あれば対応可能と読めます。
ある程度大きい80dB以上の聴取音圧が欲しい人は、聴取距離が3m程度で且つ100w-AMPを使う場合、86dB以上のスピーカーが必要で、4mなら88dB以上スピーカーを必要とします。


80dB以上の聴取音圧が必要なら、余裕を持って300Wクラス以上のAMPを採用する事をお勧め
します。 表4-2より、通常聞いている音量時の平均電力は小さい事に気が付く事と思います。
8W程度の真空管AMPで聞いても違和感が無いと感じるかもしれませんが、最大出力的には大変不足するのです。 歪んでも耳に付き難いので運用出来ている側面がありましょう。
スピーカー音圧が10dB高いと、AMPのパワーは1/10で済む事が表4-4から理解出来ます。
如何ですか・・ スピーカーの能率を上げる事が、正しい発展の方向だと思いませんか?。

表4-2と表4-3の関係で、平均電力と最大電力について記述しましたが、実はスピーカー装置にも定格入力電力と、最大入力電力が存在します。
必ずカタログ又は製品に表示があります。上記の所望する聴取音圧と必要再生電力量との関係で、スピーカーに表示された定格電力量を上回る運用をしていないか、各自お確かめ下さい。
特に、Tweeterは入力出来る電力量は、大きな制限がありますので、貴重なスピーカー装置を破壊しない為にも慎重に扱う必要があります。
スピーカー単体での最大入力電力と、平均電力の考え方は、又日を改めて解説しましょう。


尚筆者は、ヘッドフォーンを主体とした音楽再生には懐疑的な立場です。
(場所的に再生不可能な場合を除きます) 老いて難聴にならないか心配です。
音響空間を埋めるホールトーンと呼ばれる素晴らしい世界を、自宅で楽しんで頂きたいと願う者です。
文系の方には、音圧解説は少し荷が重かったかも知れませんが、表4-2~4-4 をご活用下さい。尚電卓の持ち合わせが無い方の為に、対数と指数換算表を添付しました。




寄稿の最後に一言を掲載する処にも沢山の反響が寄せられております。このコーナーも更に充実せよ!との強いご要望がありまして、何処まで応えられるか甚だ疑問ですが、機会を見つけ折々に先哲の智慧を、掲載させて頂く事にしました。 では、早速・・・


京セラ会長の稲盛和夫氏曰く。。。
「 頭が腐れば、尻尾まで腐る・・・真の経営者とは従業員の生活万般に全責任が負える人物であり、従業員の幸福が第一であると言う経営理念を持てない人物は、経営者になる資格が無い!!

との名言があります。 オーナー会長の言葉には説得力があり胸に響きます。
この名言は社会万般への警告だと受け取っております。
実例を上げて恐縮ですが、JR北海道の事故多発と線路補修に関する報道を、皆様はどのような感慨で受け取られました?  私は、頭が腐れば尻尾まで腐る論で、一刀両断にする事が可能と見えます。人命を預かる責任欠如体質が、頭から末端まで希薄の組織体質であり、当然の帰結でありましょう。


即ち、世の東西を問わず、社会的責任を負うリーダーの一念(心に定めた思い・理念)が腐れば組織構造・社会構造万般が腐り、五濁悪世と呼ばれる荒んだ社会を招き寄せます
一度腐れば、又次世代を担う人物の腐りを呼び込む・・ これは企業体質とか官僚体質と揶揄される言葉が相応しいでしょう。 国家であれ、企業であれ、政治であれ 皆同じです。
つまり、須らく人が生きる上で人間道としての普遍的道理を誤るが故の、社会現象でありましょう。官僚組織に関しては稿を改めます。

殺生与奪の権力を持った組織の長たる頭が腐る事を因として、関連する中間組織の長から、下々の尻尾まで腐った結果、その場所に暮らす全ての依法(国土・会社・家庭)環境は悪化するばかりと見えます。結句最終的には、庶民が塗炭の苦しみ(場合によっては命すら危うい)を味わう事になりましょう。  
腐った上司の下で働くサラリーマンは如何にして、生き抜くか?・・・ご参考までに。。
人生は因果応報とか申します。
流行語になった倍返し的発想は、一時の鬱憤晴らしには気持ちが良くても、これは次の因となり、怨念が次の怨念を呼び込む 愚かな連鎖を生みましょう。


人間道から程遠い、さような生き方を止め、どのような悪条件下でも 此れは己を鍛えるチャンスと・前向きに捕え直し・足下を極め(固め)・日々出来る処から・地道に・懸命に・クレバーに・人間道に沿って頑張って欲しい、そして悔い無き善き人生を。。。 これを現役世代の方々への、エールとさせて頂きます。
全てに因があり、結果があり、それに基づく報いがあると、生きる道理を先哲は教えております。


貴重な紙幅を拝借し感謝いたします。
本日も最後までお付き合いを賜り、感謝申し上げます。                   筆者拝


爺の喫茶室へのアクセス
↓↓↓
http://ziinokissa.jugem.jp/


リタイヤ爺様へのご質問、ご感想、応援メッセージは

↓↓↓
   

http://tinyurl.com/mhbry7v


お名前(苗字のみ必須)

メールアドレス(必須)




● yahoo,hotmail,gmailなどのフリーメールアドレス
には届かないケースが報告されています。
プロバイダのアドレスでご登録くださいませ。 
●筆者が発行するメールマガジンに同時登録させていた
だきますが、一度目の配信以降は自由に解除できます。 




お名前(苗字のみ必須)

メールアドレス(必須)




● yahoo,hotmail,gmailなどのフリーメールアドレス
には届かないケースが報告されています。
プロバイダのアドレスでご登録くださいませ。 
●筆者が発行するメールマガジンに同時登録させていた
だきますが、一度目の配信以降は自由に解除できます。 





お名前(苗字のみ必須)

メールアドレス(必須)




● yahoo,hotmail,gmailなどのフリーメールアドレス
には届かないケースが報告されています。
プロバイダのアドレスでご登録くださいませ。 
●筆者が発行するメールマガジンに同時登録させていた
だきますが、一度目の配信以降は自由に解除できます。